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以前、顧問をしていたA社に、中途社員として、小山さん、鈴木さんの2名が入社してきました。2人とも営業力で有名なR社出身で、フットワークには自信がありそうでした。この2名は、A社を担当していた営業マンでしたが、新規事業部門を設立するにあたり、社長の目に留まり入社にいたったものです。

A社の新規事業とは、自社技術の転用可能な新規マーケットの開拓でした。技術転用に関しては様々な規制の影響を受けるので慎重に進めなくてはいけません。A社の社長も当初はクオリティを重視し慎重に進めることを想定していました。2人には3ヵ月後を目処に報告書をまとめるように指示がなされます。

●クオリティ?それともスピード

すぐに報告をあげてきたのは、小山さんでした。それも指示がなされてから1週間しか経っていません。報告の内容は不十分と見なされたため、社長の判断はNGでした。しかし、その3日後にも報告をあげてきました。「社長!対象の地域であれば、当社の技術が転用可能な施設が多く存在します」「地元の有力企業X社であればパイプがありますので何時でも交渉可能です」。社長の判断はNGでしたが、早いアクションに対して好印象を持ちました。

一方の鈴木さんは3ヶ月の猶予があることや、社長のクオリティを重視する方針を遵守して慎重に進めていました。鈴木さんは、前職時代のコネクションをフルに活用しました。官庁、大使館、シンクタンク、現地の調査会社にも依頼をして、あがってきた情報を丹念に分析しながら精査をしていました。しかし、情報を吟味することに時間が掛かったため、指示がなされてから1ヶ月を経過してもひとつの報告もあがりませんでした。

●結果的にはスピードが重要?

ある日、鈴木さんは、社長に呼ばれました。「お前はいったい何をやっているんだ。小山君はもう10件も報告をあげてきているぞ」。鈴木さんは次のように返答します。「社長、この事業は将来を担う重要な位置づけのものと理解しております。私はリスク分析をしています。リスクが無くなった状態まで落とし込めれば間違いなくこの事業は成功します。しばらくお待ちください」。

最終的には、2人とも社長が満足できる報告をあげることはできませんでした。しかし、小山君は仕事が速い有能な人材として評価をされ、鈴木さんは仕事が遅く報告もしない無能な人材としての烙印を押されてしまいました。小山君の挙げた報告には不満足であっても、素早いアクションで次から次へと行動する姿勢は高く評価されました。仕事はクオリティや結果も大切ですが、その姿勢次第で印象が変わるという話です。

●孫子もスピードを重視していた?

新規事業の経験があれば、このエピソードは分かりやすいと思います。孫子の言葉に「巧遅は拙速に如かず」というものがあります。「巧遅」は、出来はよいが仕上がりまでが遅いという意味で、「拙速」は、出来はよくないが早いという意味です。時間が掛かりすぎるなら、上手でなくとも、迅速に物事を進めるべきという意味で使用します。

ビジネスにおけるスピードの重要性は増しています。仕事には期限がありますから、早いにこしたことはありません。特に、役職が上がってくると速やかな仕事や意思決定が必要とされる局面がかならずあるものです。上司であれば心情として、ミスが多くても時間があれば修正できると思うものです。いま思い返しても、スピードが早く仕事ができない人にはお目にかかったことがありません。むしろ、「リスクのたな卸し」「クオリティ」の話を持ち出す人ほど、仕事が遅く成果も乏しかった記憶が残っています。

尾藤克之
経営コンサルタント

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