日本国内のロングセラーメーカーのトップたちが集まって、それぞれのヒット哲学を披露したら面白いんじゃないか。日経ビジネス11月2日号の特集「ロングセラー経営者が集結 俺の100年ヒット論」は、こんな思いつきから誕生した。
「ヒット商品が生まれない」――。
記者は2010年までおよそ9年間、「日経トレンディ」に所属していた。同誌の人気企画の1つが、毎年12月号で掲載する「ヒット商品ランキング」だ。その年に流行った商品やサービスを紹介している(日経トレンディの最新号「ヒット商品ベスト30」も発表された)。
日経トレンディでヒット商品などの取材をしていると、いつからか、現場の担当者から「ヒット商品が生まれない」という話を頻繁に聞くようになった。2011年、日経ビジネスに異動してからは同じような話を経営者から耳にするようになった。
「消費者の嗜好が多様化し、メガヒットは生まれづらくなっている」「節約志向は今なお強くて、消費者は簡単に財布の紐を緩めてくれない」「一過性のブームは作れても、長く売れ続ける商品を生み出すのは難しい」……。
確かに、こうした分析に間違いはないのだろう。ネットの普及によって情報はますます早く伝わるようになり、消費者はかつてと比べて格段に賢くなっている。テレビCMを大量に投じ、メディア露出を増やし、店頭に大量陳列すれば確実にヒットが作れる。そんな甘い時代はとうの昔に終わった。商品を短期間で入れ替えるコンビニエンスストアの浸透で、新商品が売り場に並んでから消え去るまでの時間も確実に短くなり、じっくりと商品を売ることも難しくなっている。メーカーを取り巻く環境はさま変わりし、ヒット商品を生み出すことが以前より難しくなっていることも理解できる。
「100年ヒット育成委員会」を組織
だが「ヒット商品が出ない」と言われる環境の中でも、確実に長く消費者から愛され続けているロングセラーが存在しているのも事実だ。日清食品の「カップヌードル」や江崎グリコの「ポッキー」、カルビーの「かっぱえびせん」、花王の「ヘルシア」など、ロングセラーと聞いて思い浮かべる商品はたくさんある。
ヒット商品が生まれづらい時代に、ロングセラーを持つ企業のトップは、どのような戦略で商品を売り続けてきたのか。それぞれのトップの哲学を聞き、何かヒントを得ることはできないか。そんな思いで「俺の100年ヒット論」の取材を進めた。
特集内では、「100年ヒット育成委員会」を組織。一橋大学大学院国際企業戦略研究科の楠木健教授に委員長を務めてもらい、ネスレ日本の高岡浩三社長や日清食品ホールディングスの安藤宏基社長、カルビーの伊藤秀二社長、ユニ・チャームの高原豪久社長など、誰もが知るロングセラー商品を展開する企業の経営者13人に話を聞いた。