前年より遅らせた今年の就職活動スケジュールが、また見直されそうだ。

 来年度に卒業する学生の就職活動について、面接など採用選考の開始を8月から2カ月ほど前倒しし、6月にしたいと経団連が表明した。もともとは4月だったのを8月にしたばかりだが、大学側や文部科学省など政府と調整し、新たな指針に盛り込むという。

 今年のスケジュールは、学業に専念できる期間の確保が狙いだった。しかし、学生と企業の双方から「真夏の活動は大変」「かえって就活期間が長くなり、学業に響いた」といった声が続出。民間会社による学生アンケート、経団連の会員企業調査でも、悪影響を指摘し、見直しを求める声が圧倒的に多い。

 就活スケジュールにかかわる当事者は混乱を招いた責任を自覚するべきだ。ところが、まるでひとごとであるかのような発言が相次ぐ。どうしたことか。

 まずは、就活の後ろ倒しを要請した安倍政権である。

 政権の狙いの一つが、海外に留学しても日本企業に入社しやすい環境を整えて「グローバル人材」を増やすことだった。面接解禁が8月になったことで効果はあったようだが、代償も大きかった。「(今回の見直しで)政府は何もしていない」(菅官房長官)とは、無責任というほかない。

 「学業に専念できる期間を」と訴えた大学側も、なぜ目算がはずれたのか、まずは学生の話に耳を傾けるべきだろう。

 そして、経団連である。

 今回の混乱の最大の問題点は就活の長期化だ。起点のはずの会社説明会の解禁は、以前の大学3年の12月から翌年3月へ3カ月繰り下げられた。が、インターンシップなどを使って3年夏ごろから事実上の採用活動を始めた企業が少なくなかった。それが長期化の実情のようだ。

 経団連の榊原定征会長は、後ろ倒しは政権の要請に従っただけという立場を強調した上で、「会員企業は指針を守ったと信じる」と語った。本当にそうか、詳しく調べるべきだ。

 実情に正面から向き合う真摯(しんし)な姿勢がなければ、混乱を繰り返すことになりかねない。

 6月解禁という経団連の新方針に対して、授業やこの時期に行われる教育実習への影響を心配する声もある。「学業と就職」は決め手が見つからない難問だが、新卒一括採用の慣行が続く現状を踏まえれば、経済界と大学、政府の3者が学生本位で協議を重ね、よりよい仕組みを一から探るしかない。