対レイシスト行動集団
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略称 | C.R.A.C. |
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前身 | レイシストをしばき隊 |
設立年 | 2013年10月1日 |
種類 | 市民団体 |
目的 | レイシズムに対抗する |
本部 | |
位置 | 反人種差別 |
公用語 | 日本語 |
設立者 | 野間易通 |
関連組織 | 「友だち守る団」「差別反対東京アクション」「男組」「憂国我道会」など |
ウェブサイト | Counter-Racist Action Collective |
対レイシスト行動集団(たいレイシストこうどうしゅうだん、Counter-Racist Action Collective、略称C.R.A.C.)は、日本の市民団体。
関連団体については日本のヘイトスピーチ#反ヘイトスピーチを掲げた活動も参照されたい。
目次
沿革
2013年1月12日「在特狩り行きたいな。」という野間易通のツイートに呼応者が現れたことがきっかけとなり[1][2]、「レイシストをしばき隊(レイシストをしばきたい。略称しばき隊[3])」が結成され、2月9日、初めてのカウンターデモが行われた[4]。名前の由来は「レイシスト(人種差別主義者)」+「しばきたい」と「隊」からの造語で、「しばきたい」の原型「しばく」とは「鞭や棒で強く打つ」「叩く」という意味の動詞である[5]。しかし、公式サイトでは「しばき隊という名前ですが、しばきたいだけです。実際にはあくまで非暴力でお願いします」と、発足当初は暴力的な行為には否定的な立場を取っていた[6]。
同年9月30日付で解散し翌10月1日、しばき隊の後継団体となる「C.R.A.C.」を結成した[7][8]。C.R.A.C.はしばき隊、プラカ隊、署名隊など反韓デモの「カウンター」として様々な一派がこれまで存在していたものが渾然一体となったプラットフォームであるとしている[9]。
野間らは2010年頃から在日特権を許さない市民の会(在特会)などの排外主義団体によるヘイトスピーチへのカウンターデモに参加していた[10]が、大規模化したのは2013年の東京・新大久保と[11]、大阪・鶴橋からである[要出典]。
活動目的
しばき隊は、「街なかで一般市民や近隣店舗に嫌がらせしたり暴言を吐いたり暴行を働いたりするネット右翼を説教」し、「必要なあらゆる手段を使ってレイシズムを食い止め」ることを目的として野間易通が立ち上げた。後継団体であるC.R.A.C.も「街頭行動、言論、写真、アート、音楽、署名、ロビイング、イベント、学習会その他、必要なあらゆる方法でレイシズムに対抗」することを理念としている[12]。
野間曰く「沿道で罵声を浴びせる人の大多数はしばき隊のメンバーではなく、デモに怒りを感じ自発的に集まった人たち」との主張もしている[10]。また、プラカードを掲げていたのは木野寿紀が主催する「反韓デモに対する意思表示(別名:プラカード隊、プラカ隊)」というグループだったという(このグループはのちにC.R.A.C.の下でしばき隊と統一している)[13]。
活動目的は主に在日韓国・朝鮮人の特権(在日特権)があると主張する在特会やその他の団体が「デモ前後に近隣の店(特に外国人経営店舗)や通行人に暴言を吐いたり、嫌がらせをしたり、暴行を働くなどした場合にいち早く止めに入ること」を目的としていた[14]。
活動内容
反ヘイト団体の主張
具体的な活動内容としては、在特会など排外主義を掲げる市民団体が行うデモや街頭宣伝に対して、沿道から中指を突き立てたり、プラカードを掲げたり、拡声器で「(レイシストに対して)帰れ!」「帰れや!クズ!ボケ!カス!」「ゴキブリレイシストども!」「日本人として恥ずかしいわ!アホ!」[15]などのシュプレヒコールを行うなどのカウンターデモを行っている[16]。この罵声は排外主義デモ参加者からの街の人々へのヘイトスピーチをかき消し、その憎悪を被差別者でなく差別的抗議者へ向かわせることを目的に置いている。
C.R.A.C.はtwitterで「ヘイトスピーチは日→韓の一方通行。むこうははっきり言って日本のことは眼中にない。『嫌日』本が韓国の本屋にないのは、韓国の出版業界のモラルもあるだろうが、大衆の興味の対象ではないから、という理由のほうが大きいのかも」とツイートし、韓国での反日運動は日本での嫌韓運動ほど活発化していないという認識を示した[17]。
反ヘイト団体への支持
- ヘイトスピーチに対して、法規制の実現を目指す参議院議員の有田芳生は、既存の運動体・政党を「合法主義(法規に反しない手段で社会変革を成す立場)のあまり、闘わない」「きれい事と口先だけの人権派」と批判し、「ぎりぎりまでやってくれる」としばき隊および男組などの関連団体のこれらの行動を称賛している[18]。
- 作家の中沢けいは、「しばき隊」や「プラカ隊」といったカウンター活動への参加者に対して、「規制がない現状で多大な犠牲を払っていただいた」と敬意を表している[19]。
- ミュージシャンの中川敬は、音楽サイトのインタビューの中で「『レイシストをしばき隊』や『プラカード隊』が火を付けたカウンター行動は素晴らしい」、「彼らは大きな仕事をやってる」と、しばき隊とその関連団体の行動を称賛する発言を行っている[20]。2014年には、自身の所属するソウル・フラワー・ユニオンと、ECDたちラッパーが参加した、C.R.A.C.とのコラボレーション作品を発表している[21]。
反ヘイト団体への批判
これに対して、前述の有田の発言をニューズウィーク日本版の深田政彦は「法をないがしろにしかねない発言だ」と批判している[18]。また、しばき隊などの反ヘイト団体は、「『反差別』という絶対的な大義を盾に、相手の言動に少しでも差別的な響きがあれば相手の身分や過去を洗い出し、社会的に抹殺しようとする」「差別的な言論を、暴力をもって押さえ込む。こうしたカウンターの手法は憎悪の連鎖を生むだけではないか。日本は独り善がりの『正義』と腕っ節ばかりが支配する息苦しい国になるのか」などと批判した[18]。
また、朝日新聞からは、在特会もしばき隊も「どっちもどっちだな」という印象を受けるとされ、デモに抗議するにしても他にやりようはないのかと、汚い罵倒の応酬ではなく他の手段を取るべきとの指摘を受けている[22]。
反ヘイト団体による「反ヘイト団体への批判」への反論
朝日新聞の批判に対して野間は「上品な左派リベラル」の抗議行動は「たとえ正論でも人の心に響かない」とし、「自分たちのほうに正義がある」「ヘイトスピーチ対カウンターというのは“正義と正義のぶつかり合い”ではない。」「この問題をそういうふうに捉える時点であなたたち(朝日新聞)は間違ってますよ。」と、差別的表現に対しては上品で冷静な議論ではなく怒りを持って叫ぶのが正常であるとしてこのような運動の正当性を主張した[15]。また、ニューズウィークの批判に対しては「彼(ニューズウィーク記者)は行動保守や在特会への批判はほとんどせず、それに対抗する側のあら探しをして、それもまた差別だと言っているわけですが、普通に考えて。先にきちっと断罪すべき“悪”があるでしょ?カウンターの批判は大いにやるべきだけど、ああいうバランスを欠いたものを見ると、彼の目的が反レイシズムでも反ヘイトでもないのは明らかでしょう。記者と『ニューズウィーク』はヘイトに加担したにすぎない」と主張している[15]。
不祥事
しばき隊及びその関連団体は活動の中で暴力事件を含む複数回の不祥事を起こし、逮捕者を出している。
以下、しばき隊による不祥事のみ記載する。それ以外の関連団体の不祥事については在日特権を許さない市民の会#対立する団体を参照されたい。
- 2013年6月16日 - 東日本旅客鉄道(JR東日本)新宿駅東口で行われた在特会主催の嫌韓デモで在特会としばき隊による乱闘が発生、久保憲司らしばき隊メンバー3名を含むカウンターデモ勢力4名と在特会の桜井誠会長を含めた在特会メンバー4名が暴行容疑で現行犯逮捕された[23][24]。このうち、桜井を含む在特会側2名としばき隊側3名の計5名は勾留延長されず、48時間以内に釈放され[25][26]、残る在特会側2名としばき隊側1名の計3名は罰金10万円の略式命令となった[27]。
- 2014年1月18日 - 午後3時10分ごろ、東京都港区六本木の路上で、在特会主催のデモに反発し、デモ隊に自転車で突っ込み、在特会会員の21歳の男性に体当たりするなどの暴行を加えたとして、東京大学に在籍するしばき隊隊員とみられる22歳の大学生の男が現行犯逮捕された。男はデモ隊の反対側の歩道から自転車で車道を横断して突入し、警戒中の同署員に取り押さえられた。この日のデモには在特会会員ら約200人が参加し、しばき隊などの反対派も約60人が抗議活動をしていた[28]。
言及
- 有田芳生は自著の中で、在特会のデモが通り過ぎた後に通行人に『お口直ししてください』と言って包み紙に「国籍・文化の違いを超えて仲良く」とのメッセージが添えられたサクラとムクゲの形をした一対の『仲良くしようぜクッキー』を手渡したカウンターのエピソードを記した[29]。
- 「「しばき隊」の最初期のメンバー」であり[30]、C.R.A.C.や[31]男組の弁護人[32]を務める自由法曹団常任幹事の神原元は[33][34]、自著の中で、レイシストのデモ本体ではなく、その後の非合法な「お散歩」を阻止するために結成された「しばき隊」は[35]、2013年2月9日のカウンターデモが「最初で最後のミッションだった」とし、後の「プラカ隊」や「ダンマク隊」「署名隊」「知らせ隊」らが加わった、2013年3月31日のカウンター行動を「もっともすばらしかった」と評価[11]、有田芳生の著した上記エピソードを援用した[36]。当事者適格の概念から法律家として常に想定する「被害者」の味方、すなわち「在日の人々を守る」のではなく、野間易通曰く、自らしばきたいからしばき[37]、「差別に反対し、日本社会の公正さを守る」ことを任務としたカウンターは「『在日』対『在特会』というという構図を避」け、共生社会としての「日本社会」対「レイシスト」の構図をつくり上げたとして「この意味は大きい」とした[38]。「属性を理由とする差別的表現」ではない単なる「罵倒」や「罵声」はヘイトスピーチではないと言及[39]、逸脱行為に対しては素直に認めて改め、黙秘しない方針を表明し[40]、自己の方針は「カウンターの中では概ね支持と理解を得てきた」とした[40]。
- 野間易通は、神原元のインタビューに答え、2013年のカウンターについて、一番貢献したのは「プラカ隊」であり[41]、「「しばき隊」の「しばく」などはもっとも弱い力の行使なんじゃないでしょうか(笑)」と述べた[42]。なお、野間易通と神原元は「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」の出版した著書にもコメントを寄せている[43]。
- 池内沙織は2014年9月23日、カウンター参加者をねぎらい、自らも行動したことをツイッター上で発言した[44]。
- 井出実は『ヘイトスピーチに抗する人びと』[45]に対する書評において、野間易通のスタンスを「被害者に寄り添い支援する運動を否定するのではなく、『ヘイト・スピーチは社会的な公正さを破壊するものだから、NGなんだ』ということだ」と要約し、「それは怒りを率直に伝えるうえで、とてもシンプルで当たり前のものだ」と評した[46]。
- 対立団体である在特会の元会長である桜井誠はこうしたしばき隊らの活動こそが「日本人差別」であると主張している[47]。また、しばき隊・男組の構成員は「不逞鮮人」[48]であり、反天連と同一の「反日極左」であるとも主張してもおり、[49]また、自身のTwitter及びブログ上でしばき隊・男組を「準暴力団」「広域犯罪組織」などと批判している[50][51]。
脚注
- ^ @kdxn 2013年1月12日15時22分、野間易通のツイート 野間易通 on Twitter 2013年1月12日
- ^ @kdxn 2014年4月24日15時48分、野間易通のツイート 野間易通 on Twitter 2014年4月24日
- ^ 片仮名で「シバキ隊」と表記されることもあるが、正式名称は平仮名で「しばき隊」である。
- ^ 神原 2014, p. 12.
- ^ 大辞林 第三版
- ^ レイシストをしばき隊 隊員募集 - Forces of Oppression
- ^ 「CRAC」と表記されることもあるが、正式な表記は「C.R.A.C.」である。
- ^ 反レイシズムの「しばき隊」が解散しC.R.A.Cが始動(アメーバニュース 2013年10月1日10時45分配信)
- ^ “C.R.A.C.”. 2015年3月5日閲覧。
- ^ a b (インタビュー)ヘイトスピーチをたたく 「レイシストをしばき隊」野間易通さん - 朝日新聞デジタル[リンク切れ] 2013年8月10日配信
- ^ a b 神原 2014, pp. 26-31.
- ^ ABOUT Counter-Racist Action Collective
- ^ “人と今 「仲良くしようぜ」をかかげて”. 2014年1月15日閲覧。
- ^ “レイシストをしばき隊 隊員募集”. 2014年1月15日閲覧。
- ^ a b c 反ヘイト集団“しばき隊”は正義なのか? 首謀者・野間易通に直撃! p.3|LITERA/リテラ 2014年9月4日
- ^ 朝日新聞 2013年4月28日朝刊、35面「敵がいる」
- ^ C.R.A.C.のツイート(2014年11月12日)
- ^ a b c ニューズウィーク日本版 (Newsweek Japan) 2014年6月24日号 p.32-35「反差別」という差別が暴走する 深田政彦
- ^ 中沢けいのツイート 2013年6月22日付
- ^ INTERVIEW : 中川敬 OTOTOY 2013年6月29日付
- ^ ソウルフラワー激動の時代に放つ4年ぶり新作 ナタリー 2014年9月2日付
- ^ 2013年8月10日 朝日新聞朝刊
- ^ “在特会会長らを逮捕 対立団体と互いに暴行の疑い”. 朝日新聞. (2013年6月17日). オリジナルの2013年6月22日時点によるアーカイブ。)
- ^ 2013年6月17日14時25分、野間易通のツイート 野間易通 on Twitter 2013年6月17日
- ^ “乱闘で逮捕の5人釈放 地検、新宿のデモ巡り”. 日本経済新聞. (2013年6月19日) 2015年3月5日閲覧。
- ^ 【在特会】桜井誠会長釈放の様子【6月18日】 - YouTube
- ^ “反韓デモ:暴行の3人に略式命令…罰金10万円 東京簡裁”. 毎日新聞. (2013年6月28日). オリジナルの2013年10月2日時点によるアーカイブ。
- ^ “在特会デモに突入、東大生を逮捕 暴行容疑で警視庁”. 産経新聞. (2014年1月18日). オリジナルの2014年10月26日時点によるアーカイブ。
- ^ 有田 2013, p. 45.
- ^ 神原 2014, p. 42.
- ^ 豊田有恒・祥伝社・朝日新聞「こと韓国相手では、同じ地球人ではなくどこか遠い星の宇宙人だと考えたほうが、対応を誤らないだろう」-C.R.A.C.公式ページ 文中に「C.R.A.C.の弁護士・神原元」とある
- ^ 神原 2014, p. 148.
- ^ 神原 2014, p. 奥付ページ.
- ^ 神原元のツイッター
- ^ 神原 2014, p. 16.
- ^ 神原 2014, p. 31.
- ^ 神原 2014, p. 172.
- ^ 神原 2014, pp. 38-39.
- ^ 神原 2014, pp. 50-52.
- ^ a b 神原 2014, p. 41.
- ^ 神原 2014, p. 176.
- ^ 神原 2014, p. 177.
- ^ ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会 2014, pp. 97-98, 109-119.
- ^ “池内さおり Twitter” (2014年9月23日). 2014年12月閲覧。
- ^ 神原 2014.
- ^ 井出実「当事者として民主主義に向き合う」しんぶん赤旗2015年2月8日。
- ^ 9・22 有田ヨシフ差別デモに抗議される皆様にお願い 2013年09月19日(木)桜井誠公式ブログ
- ^ 埼玉移民反対デモへの襲撃事件について 2014年05月29日(木)桜井誠公式ブログ
- ^ 在特会 夏の陣! 共闘協力の輪を広げよう!! 2014年08月01日(金)桜井誠公式サイト
- ^ 桜井のTwitter(2014年1月8日)
- ^ 桜井のTwitter(2014年7月29日)
参考文献
- 有田芳生 『ヘイトスピーチとたたかう!――日本版排外主義批判』 岩波書店、2013年9月27日。ISBN 9784000247160。
- 野間易通 『「在日特権」の虚構 : ネット空間が生み出したヘイト・スピーチ』 河出書房新社、2013年11月21日。ISBN 4309246389。
- 山口祐二郎 『奴らを通すな!』 ころから、2013年11月1日。ISBN 4907239041。
- 神原元 『ヘイト・スピーチに抗する人びと』 新日本出版社、2014年12月10日。ISBN 978-4406058612。
- 加藤直樹、神原元、明戸隆浩 『NOヘイト! 出版の製造者責任を考える』 ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会、木瀬貴吉, ころから。ISBN 978-4-907239-10-7。
関連項目
外部リンク
- C.R.A.C(Counter-Racist Action Collective)
- C.R.A.C (@cracjp) - Twitter
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