もう一つの戦争 番外15
15.ボチさんへの通信11 ――直系の終末――
ボチさん。
今年は大変な年です。色んな事がありますが、中でも叔父ミミさんと母美代子さんが、其方に逝った事は記念すべき大きな出来事でした。
二人に共通する事は、二人共大往生だったという事です。逝く数日前から、ニコニコニコニコ笑って軽口を叩き、旨そうに酒を舐め、間際には眠る様に穏やかに息を引きとった事も、まるで申し合わせた様でした。何とステキな死に様でしょうか。人は、その死に様が生き様を物語る。
終り良ければ全て良し
さよならだけが人生さ
人は素晴らしい終り方をする為に素晴らしく生きる ステキな「さよなら」を云う為に……
文麿祖父も文隆父も
ステキには死ねなかった
さぞ 無念だったでしょう
戦争を阻止しようと懸命に働いた二人がその戦争に殺された
父子による必死の工作が あの親書が
敵の大将に届けられていれば あの時
陸軍の追手に捕われていなければ……
戦争は避けられた
歴史は 今とは大きく違っていた!
何故 貴方がたが
国の犠牲にならなければならないのか
何故 死なねばならないのか!
俺らの掛替えのない父と祖父
そして その子と息子
私を以て その時代と血に別れを告げる
やがて 貴方がたの後を追い
世の中から忘却される事だろう
ボチさんと綿々と続いた近衞家の血に
万感の愛をこめて さよならを云おう……
さようなら
(写真は上から曽祖父 篤麿、祖父 文麿、父 文隆、
俺ら 隆明、息子 隆道)
ボチさんへの通信 おわり
隆明の“つれづれに”に続く
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