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訃報:シュミット元西ドイツ首相が死去 96歳

毎日新聞 2015年11月10日 23時45分(最終更新 11月11日 00時58分)

ヘルムート・シュミット元西ドイツ首相=斎藤義彦撮影
ヘルムート・シュミット元西ドイツ首相=斎藤義彦撮影

 【ゲブゲリア(マケドニア南部)中西啓介】元西ドイツ首相のヘルムート・シュミット氏が10日、独北部ハンブルクで死去した。96歳だった。主治医がDPA通信に明らかにした。9月に足の血栓を除去する手術を受け、2日後には退院していたが、独メディアが今月9日、「感染症で容体が急激に悪化した」と伝えていた。

 1918年12月、独北部ハンブルク生まれ。第二次大戦中はソ連との戦闘に従軍。戦後、ハンブルク大学で経済を学び、53年に連邦議会議員初当選。社会民主党主導のブラント内閣で国防相や財務相を歴任し、秘書のスパイ事件で引責辞任したブラント氏の後任として74年から82年まで首相を務めた。

 赤軍派らによる要人誘拐など「ドイツの秋」と呼ばれるテロが頻発する中、77年のルフトハンザ機ハイジャック事件では特殊部隊を突入させ鎮圧。乗員乗客の解放に成功し、果断なリーダーとしての名声を高めた。

 冷戦の緊張下、ソ連に中距離核ミサイルの撤去を求める一方、北大西洋条約機構(NATO)による西独でのミサイル配備を認める「二重決定」が論議を呼んだ。退陣後、有力週刊紙「ツァイト」の共同発行人を務めた。

 大衆にこびない毅然(きぜん)とした態度などから、ドイツの世論調査では度々、「最も愛された首相」に選ばれている。学生時代、戦後日本の通貨改革を研究。75年に初めて開かれた先進国首脳会議(サミット)をフランスのジスカールデスタン大統領と提唱した際、日本をメンバーに加えるよう主張した。

 ピアノ演奏を得意とし、ヘビースモーカーとしても有名。テレビ出演中も喫煙する姿が時に物議を醸した。

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