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舞台男子

第10回 矢田悠祐の旋律 前編

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舞台男子 矢田悠祐

 

歌うことが好きだった。
人前に立つことが好きだった。
好き、という気持は、いつしか伝える、という想いに。
やがて、伝えることは喜びに。
歌うことは、表現に。
演じることが、歩む道に。
まるで歌うように朗らかに、これまでと今とこれからを楽しそうに軽やかに、
ことばにして。

 

 

矢田悠祐 やた・ゆうすけ

1990年11月16日、大阪生まれのB型。現在、24歳。
高校生のころより、ファッション雑誌『CHOKi CHOKi』のモデル「おしゃれキング」として誌面を飾り、イベント出演などを経て、2012年4月に舞台『合唱ブラボー!』で俳優デビューを果たす。以後、6月に舞台『天使達−ANGELS−俺たちは天使か!?』に出演、10月から2014年11月までミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン 7代目青学の不二周助役を演じる。その後も、12月に超歌劇『幕末Rock』に桂小五郎役で出演。
今年2015年、2月『ママと僕たち よちよちフェスティバル〜もっかい!いち!に!〜』、3月『遠ざかるネバーランド』、4月に『ドン・ドラキュラ』、5月『恋するブロードウェイ♪ vol.4』と立て続けに舞台に立ち、7月にはシアトリカルコンサート 『We are ウォンテッド!〜俺たちを捕まえろ!〜』、8月には超★超歌劇『幕末Rock』、9月には『幕末太陽傳』、11月~12月にはにはミュージカル『黒執事』−地に燃えるリコリス2015−の出演が控えている。

 

・リンク

矢田悠祐公式プロフィール
矢田悠祐公式ブログ
ミュージカル『テニスの王子様』公式
ネルケプランニング
『幕末太陽傳』公式
ミュージカル『黒執事』−地に燃えるリコリス2015

 

超★超歌劇『幕末Rock』公式

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©2014 Marvelous Inc./幕末Rock製作委員会
©2014 Marvelous Inc./超歌劇『幕末Rock』製作委員会

 

・矢田悠祐さんサイン入り写真の応募はこちらへ。
 締め切りは2015年8月31日(月)23時59分です。皆さんの感想、お待ちしています

 

 

舞台男子 矢田悠祐

舞台男子 矢田悠祐

 

歌うことが好きでした

 

――中学生当時に美容師を志し、高校生でファッションに目覚め読者モデルを経てこの世界に入りました。事務所に所属するときに歌を披露したということです。
矢田:もともと目立つことは好きだったので、読者モデル時代に今の事務所に声をかけていただき俳優を目指そうと決めました。
 そのときに得意なことを聞かれて「歌が好きです」と答えました。カラオケが好きで、高校生のときにめちゃくちゃ通っていて週に三回か四回は行っていましたが、当時は単に趣味でした。それがまさか舞台で歌うことになるとは思ってもみませんでした。
――2012年4月、熱血青春合唱コメディと掲げられた『合唱ブラボー』という高校の合唱部を巡る物語でデビュー。演じたのは学園の人気者にして究極のナルシストな美木健一こと愛称、ビッキーという役でした。
矢田:ものすごく濃い役でしたね……。
――己の美意識に強いこだわりを持ち、かなり突き抜けていました。
矢田:最初に付けてもらった演出もありましたが、色々と自分で足しちゃっていましたね。今、振り返ると初舞台ならではというか、怖いもの知らずというか(笑)。初舞台だったり経験が少ない同年代の俳優が一緒だったので楽しくやらせてもらいました。
 このとき一緒だった、内藤大希くんとはこの前、久々に『恋するブロードウェイ♪Vol.4』で同じ舞台に立ちましたが、すごく楽しかった。共演したみんながそれぞれの方向に進んでいて、改めて思うとおもしろいメンバーがそろっていましたね。
――続けて、6月に『天使達-ANGELS- 俺たちは天使か!?』へ出演します。
矢田:歌とダンスで構成された舞台でしたが、まったく踊れませんでした! ダンスなんてやったことがなかったからとにかく練習するしかなくて、本当に心が折れそうでした……。でも、歌があったから最後までやり通すことができました。きっと今、やったらもっとできるし、楽しめると思います。
 ただ、不思議なもので最初はあんなに苦手できらいだったダンスが、踊るうちに好きになっていって、むしろ今はダンスがあると「やった!」と思うようになりました。だから、どんなことも苦手と思わず、やってみるって大事なんだと学びました。

 

 

舞台男子 矢田悠祐

舞台男子 矢田悠祐

舞台男子 矢田悠祐

 

思いを馳せ、次々と思い出が。

 

 

不二周助の変化が
ぼくにとっての成長でした

 

――その後、ミュージカル『テニスの王子様』に青学(せいがく)7代目の不二周助役で出演。10月には青学6代目最後の公演となった、ミュージカル『テニスの王子様』SEIGAKU Farewell Partyに初めて、不二周助として舞台に立ちます。
矢田:今観ると顔が緊張してますね。一曲だけの出演でしたが踊りも硬くて、役もまだ入っていなくて、なんとか出ている感じ。歌は歌えましたが、同時に踊ることが難しくて。さらに初めて持ったラケットがすごく重くて、それが印象的でした。
 稽古に入ってからもとにかく踊れなくて、当時、いちばん早くに来て、終わったあとも残って練習もしていたので、誰よりも長く稽古場にいた自信があります!
――常に落ち着いているように見えるので、緊張とは意外です。
矢田:あまり緊張はしないんですが、このときばかりは緊張しました。ただ、緊張してもいいことはひとつもないので普段からしないように、自分に言い聞かせています。
――6代目卒業後、小越勇輝さんがひとり残り青学7代目として越前リョーマを演じます。
矢田:勇輝には最初からかなり支えてもらいました。Farewell Partyでも6代目と7代目の楽屋が別で、出番も多いのに顔を出して話しかけてくれて。たぶん人見知りなほうなんだけどみんなを気遣って、改めてすごい座長だったと思います。
 青学7代目はすごく仲がよくて、意見を言い合う機会はあったけどぶつかり合いもなくてケンカもしなかったですね。勇輝はぼくらに的確なアドバイスをしてくれたし、手塚国光役の(多和田)秀弥は部長としてみんなを引っ張っていってくれたし、それぞれに役割があってまるで兄弟みたいでした。
――ご自身はどんな役割でしたか?
矢田:音が取れるので、開演前に歌い出しの音程を確認する役でした。とくに、乾 貞治役の(稲垣)成弥!(笑)
 ぼく自身は不二周助の歌のなかで『ヘビーレイン』が歌えたことがうれしかったです。映像を観たときから、歌いあげる感じが良くてすごくいい曲だなあと思っていたので楽しみにしていました。2013年のミュージカル『テニスの王子様』全国大会 青学vs氷帝で歌いましたが、このときは試合場面のない公演だったので、見せ場だと思ってものすごく気合が入りました。
――この公演の、まさにこの曲で、ご自身の歌のうまさが広く知られたと感じています。最後の公演となった、ミュージカル『テニスの王子様』コンサートDream Live 2014ではソロパートを二度努めます。
矢田:まさかひとりで歌えるとは思わなかったので感動しました。不二周助として、横浜アリーナに武道館と、大きな舞台に立たせてもらえたことは、すごくうれしかったです。
――ちなみに、先日行われたミュージカル『テニスの王子様』全国大会 青学vs立海DVDの発売イベントで、大石秀一郎役の山本一慶さんから「矢田ちゃんが大阪のホテルで、ふなっしーのパーカーを着て、踊り狂っていた」とリークがありました。
矢田:あー、それはですね! 大阪公演でみんなでゲーセンに行って、ぼくが取ったんです。フードをかぶるとふなっしーみたいになるパーカーで、当時、けっこうハマっていたんだけどなかなか取れず、ムキになってかなりお金も使ってしまい(笑)、でも取れたからうれしくていい気分になっていたんです。
 それで、一慶の部屋の前に行ってノックしてドアが開くと踊ってみせる……閉められて、またノックして開いたら踊るという、ちょっと怖いことをやっていました。せっかく取ったから見せびらかしたくて、使わないとな! と思って……でも、なんで一慶はそんな話をしちゃったのかなあ!(笑)
――みなさん、仲良しですね。思い出深い公演はありますか?
矢田:最初の出演だった、ミュージカル『テニスの王子様』青学vs比嘉です。このときはタカさん(河村 隆)役の章平とのダブルスでしたが、改めて振り返ると最初がダブルスでよかったと思います。
 同じコートに誰かがいることは大きくて、しんどいときには励ましてくれるし、会話を交わすことはなくても目が合えば元気をもらえますから。その後の公演では最後までシングルスだったので、叶うなら、もう一回、章平とダブルスをやりたいですね。

 

舞台男子 矢田悠祐

舞台男子 矢田悠祐

舞台男子 矢田悠祐

 

――初めて原作のある「役」を演じました。不二周助とご自身が似ているところはありましたか?
矢田:近いところはありました。これはあくまでぼくの解釈ですが、不二は一見クールでどこかマイペースなところがあって、みんなとはちょっとちがう場所にいるというか。……実はぼくがそういうタイプで、決してクールではないけれど、わりと自分のペースがあって、常に「自分は自分」と思っていました。
 でも試合を通して、天才と呼ばれていた不二周助が勝つことにこだわり、熱い自分を出し、仲間と勝利を目指すようになった……その変化が、ぼく自身の思いと同じで、舞台というものは自分ひとりががんばることではなくて、みんなを応援して、応援されて、一緒に創りあげることだと知りました。それは同時にぼくにとっての成長でした。
――2014年9月28日のミュージカル『テニスの王子様』全国大会 青学vs立海、大千秋楽では泣いていました。
矢田:すごく低い声が出ていましたね(笑)。それまで舞台で泣くようなことはなかったし、このときも絶対に泣かないと思っていたんですが……気持があふれちゃったみたいです。

 

舞台男子 矢田悠祐

舞台男子 矢田悠祐

 

演じる、ということに
改めて触れました

 

――今年(2015年)3月に出演した『遠ざかるネバーランド』は初のストレートプレイで、主演のピーター・パン役、松田凌さんとウエンディ役の横田美紀さんと自身が演じる少年役が軸となる舞台でした。最初、少年の目的がわからないまま物語が進んでいき、想いが明かされた瞬間にそれまで見えていた景色が一変する、難しい役でした。
矢田:とても苦しくて、自分を掘り下げる舞台でした。演じた役は自分と似ているところもあったけど、ちがうところもあって、気持ちがわからない部分を作ることができなくてすごく悩みました。
 ぼくのなかに、なぜ彼がその行動を取るのか理由が見えなくて。ただ、最終的には自分なりに納得できる気持ができたので演じることができました。
――共演された役者さんはいかがでしたか?
矢田:松田凌、という役者はすごい存在だなあと思いました。観ていて本当にお芝居が好きなんだと感じたし、年も近いのですごく刺激を受けました。
 ぼくが演じる少年がピーター・パンに負けちゃうとそこで話が終わっちゃうので、絶対にそうはならないように演じようと心に決めて。特にぼくは演出のほさかようさんから厳しい指導も受けたので、そこにも応えたかったし。そういった思いががんばる原動力になっていました。
――どんな内容か気になります。
矢田:いちばん言われたのは「ちゃんと人と会話して」ということでした。
――どういうことでしょう。
矢田:会話の場面で、相手の話を聞いていないと言われました。自分の台詞を言って、そこに感情を込めることはできている。でも、それだけだとひとりよがりだと指摘されて。「相手のことばを聞いて、その気持を受けてから自分の気持を返して。そこを大切にしないと会話が嘘になっちゃうから」とも言われました。自分がやりたいことだけをやるのはダメ、と繰り返し注意されて。
 自分では返しているつもりだったのに「そう見えない」、「もっと話を聞いてから反応して」と繰り返し言われて、なるほどなあ、と納得したし、すごく勉強になりました。そういう心のやり取りを演じられるようになったら、この先もっと楽しくなるんだろうなあと思いました。
――演じることへの意識は変わりましたか?
矢田:すごく変わりました。その前に出演していたミュージカル『テニスの王子様』や超歌劇『幕末Rock』は原作という答えに自分を寄せていく作業でしたが、ゼロから立ち上げて、自分のなかを覗いて感情や表現を取り出して組み立てることはいい経験でした。
 お芝居のレッスンをきちんと受けてきたわけではなかったので「演じる」ということは、こういうことなのかと感じられたし、新たなおもしろさに触れました。ほさかさんは厳しいことも言いますが、すごくわかりやすく説明してくれる方だったので、また、ほさかさんの作品に出たいし、演出してほしいと思う出会いでした。

 

舞台男子 矢田悠祐

舞台男子 矢田悠祐

 舞台男子 矢田悠祐

 

 

悪い役、に心惹かれて

 

――4月には舞台『ドン・ドラキュラ』に出演します。
矢田:主演がEXILEの橘ケンチさんで、ケンチさんが仕事してみたいという方が集まっていたということで、いろんな方がいて、これまでとはちがった舞台で楽しかったですね。そして、ケンチさんはものすごくダンスがうまくてかっこよかったです!
――劇場から客席の通路に棺桶や枯れ葉が演出されたり、照明の演出や舞台美術も独特でした。そのなかで矢田さんは橘さん演じるドン・ドラキュラの愛娘、チョコラが憧れる同級生のノブヒコ役を演じ、怨霊にとらわれて壊れた演技を披露しますが、これまでに観たことのない姿でした。
矢田:あー、楽しかったです……ずっとあっちでいたかったくらい(笑)。そういうのが好きです。
――実はちょっとダークな一面がありますか?
矢田:普段から好青年でいるのはもの足りないな、と思っているんです。マンガがを読んでいても、そういう登場人物に憧れちゃうタイプで、悪役を好きになっちゃいます。
――どんなマンガを読んでいるのでしょう。
矢田:いろいろ読みますが、かっこいい主人公よりもオジサンが活躍する話が好きで、最近は『三億円事件奇譚 モンタージュ SINCE 1968.12.10』(渡辺潤・講談社)や『アイアムアヒーロー』(花沢健吾・小学館)を読んでいます。あとは『東京喰種トーキョーグール』(石田スイ・集英社)も読んでいて、鈴屋什造(すずや・じゅうぞう)に惹かれます。すごく好きなんですよね。
――グールを追う人間で喰種捜査官ですが、愛らしい外見でありながらそうとうぶっ壊れた役です。同じく今年3月出演の『ママと僕たち よちよちフェスティバル〜もっかい!いち!に!〜』でも、0歳児のリク役として日替わりの質問に答える場面で「バレンタインにほしいものはなに?」に「土地! 土地〜!!!」、「ブロポーズの言葉は?」に「毎日ビンタしていいですか?」といった、そこはかとなく黒い発言が飛び出し、会場がざわついていました(笑)。
矢田:あー……思いついちゃうんですよね。あとは、うさちゃんのぬいぐるみをずっとこねていました。ぎゅうっとしたら丸くなるのがおもしろくて、妖精役の子に向けて肉団子みたいに丸めて見せて、それが楽しくなっちゃって笑いそうになってました(笑)。
――それ、ちょっと怖いです!
矢田:演じるときにちょいちょいそういう要素を入れてます(笑)。昨年末に出演した超歌劇『幕末Rock』の桂(小五郎)さんにもそういったことを織り込んでいて、役のなかで自由な部分を見つけるといろいろやりたくなっちゃうんです。
 ……話していて思ったんですが、もしかしたら初舞台での役の影響かもしれません。かなり濃くて自由だったから、あれで、ぼくの芝居観がちょっとおかしな方向に育っちゃったのかも……(笑)。
――それは「おかしな方向」ではなく「独自の視点」が育まれた、と言わせてください。むしろ自分なりの要素を入れる方向とバランスがやがて個性となる核で、大切だと感じます。
矢田:そうですね。やりすぎてもダメだろうし、やるにしてもつまらないことはしたくないし。コメディだと特に素が出てしまって演技ではなくなるので、ちょっと気を付けています。といっても、まだまだできてはいないんですが。
――今後、ご自身がやってみたい作品はありますか?
矢田:以前、別の取材でも話しましたが、音楽が題材の映画になった『BECK』というマンガがあって、ああいう作品に出てみたいと思っています。映像作品に出たことがないので、演じて歌える作品に憧れます。
 やっぱり歌が好きなので、俳優、という仕事があって、そこで歌うことができたらいいなと思っています。

 

舞台男子 矢田悠祐

舞台男子 矢田悠祐

 

 

奏でるように、ことばを紡ぎ。

 

 

舞台男子 矢田悠祐

 

後編の更新は7月半ばまでお待ちください。

 

 

 

2015年6月、都内にて収録。

撮影/為広麻里
ヘアメイク/BELLEZZ
編集・文/おーちようこ

 


・写真や記事の無断転載はおやめください。

 

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