韓国の輸入が大幅に減少した理由は、内需の不振だ。MERS(マーズ=中東呼吸症候群)問題などの影響で、韓国の内需は消費を中心に縮小が継続している。結果的に、外国からの輸入が減り、経常収支黒字が上半期としては史上最大になったわけである。
加えて、世界的な需要縮小を受け、製造業の設備投資も鈍っている。特に、最大の貿易相手国である中国の輸入縮小は、韓国経済を直撃する。15年1月−5月の中国の輸入額は、前年同期比で21%も減少した。株式バブルが崩壊した以上、中国の輸入が回復する見込みは、現時点では全くない。
韓国の14年の輸出依存度は43・87%と、相変わらず4割を上回っている(ちなみに、日本は15・26%)。
結局のところ、韓国は内需が主導する「先進国型」の経済モデルを構築することに失敗したのだ。今後の韓国経済は、外需縮小と内需不振という二重の枷(かせ)をはめられ、国民所得が伸び悩む、いわゆる「中進国の罠」から抜け出せない状況が続くことになる。
■三橋貴明(みつはし・たかあき) 1969年、熊本県生まれ。経済評論家、中小企業診断士。大学卒業後、外資系IT業界数社に勤務。現在は「経世論研究所」所長。著書に『中国との貿易をやめても、まったく日本は困らない!−中国経済の真実』(ワック)、『繁栄の絶対法則』(PHP研究所)、『超・技術革命で世界最強となる日本』(徳間書店)など多数。