2008-04-25 Web魚拓の適法性

なんてのが話に上がっていた。
著作権がなんだかんだと騒ぐつもりはないが、許可しておいても利点が見当たらないうえに、最悪なにかの祭りがあった時に巻き込まれる可能性があるので、Webサイトオーナーの方は拒否しておくのが良いだろう。ウェブ魚拓のアクセスを禁止するのだ。
清廉潔白な行動を旨としていれば、Webでどの時点でどのように広報したかという情報を履歴として残されてもなんら問題にならないはず。
むしろ、こうした透明性を拒否する時点で自信のなさの表れともとれるがどうだろうか。
メディアコントロールしたがる人情もわからなくはないが、インターネットの世界は反メディアコントロールの思想が強い。
ネットを利用する限りこうしたメディアコントロールを行おうという工夫は無力化されていくと思っておいた方がよい。
さて、著作権の話。
Web魚拓は公表されたWebのキャッシュを取ることができる。
著作権法的に適法なのは「引用」だが、引用と認められるには条件があって
一般に、適切な「引用」と認められるためには、
1. 文章の中で著作物を引用する必然性があること
2. 質的にも量的にも、引用先が「主」、引用部分が「従」の関係にあること。引用を独立してそれだけの作品として使用することはできない。
3. 本文と引用部分が明らかに区別できること。例『段落を変える』『かぎかっこを使用する』
4. 引用元が公表された著作物であること
5. 出所を明示すること(著作権法第48条)
が必要とされる。
となっている。このWikipediaからの「引用」は適切に引用できていることであろう。
さて、Web魚拓は全体をキャッシュしある時点でこのような内容だった、ということを残すわけだが、これは「引用」と言えるかどうか?
まず、Web魚拓ではページ全体のキャッシュ以外にも、引用したい範囲以外にぼかしを入れる機能がある。
◆Web魚拓◆?さらにデキるようになったな?:SniABlog
その際のWeb魚拓が保管する画像は以下のようなイメージになる。
ページ上部に
ウェブ魚拓で2007年10月5日 17:54(日本時間)に取得された http://www.yahoo.co.jp/の魚拓です。
◆Web魚拓◆〜さらにデキるようになったな〜:SniABlogからの引用として表示しています。
引用範囲は破線の内側です。
との注記もあり、引用の要件を満たすかどうかはWeb魚拓による引用を行った側のサイトに委ねられるように配慮されている。
上記のようなケースはよいとして、全文だとどうだろうか?
仮に全文だとしても引用の要件を満たせば「転載」ではなく「引用」とされる。
この点でも、Web魚拓は引用を行おうとした利用者が正しく引用となるように使用していれば引用の要件を満たすのではないだろうか。
利用者が正しく引用を行わなかった場合に、Web魚拓側が責を負うのかはよくわからない。このあたり判例などご存知の方がいたら教えてほしい。
また、引用を行おうとしたユーザがたとえばそのblogのエントリを削除したらどうなるのだろうか?
Web魚拓に残されたデータは引用の「主たる文」を失ってしまう。
そのような場合、Web魚拓のサービス側がどのような責を負うのだろうか?
ところで、日本では法的にフェアユースが認められていない。
Googleなどのキャッシュについても日本の法律に基づくとたぶん黒になるだろう。
米国では裁判があり、キャッシュはフェアユースという判例が出ている。
Googleキャッシュについて、優れた「フェアユース」判決:Lessig Blog (JP) - CNET Japan
Wikipediaでも日本語版はフェアユースという利用方法ができないことに配慮して、人物の肖像や書籍・番組・コミックなどの画像は貼られていない。
一方、英語版では画像が貼られており、百科事典としてより見やすくなっている。
以下は「ハリー・ポッター」の日本語版、および英語版。
Harry Potter and the Philosopher’s Stone - Wikipedia, the free encyclopedia
Web魚拓はその意図からすればフェアユースとされるものであると私は思う。
実際のところフェアユースと認められるかどうかは実際にどのような法が作られどのような判例となるかに依るだろうから、「フェアユースになるのではないか」というのは私見にすぎない。
日本でのフェアユースをめぐる動きはこちらの記事も参考にされたし。
yukichi99
2008/04/26 07:32
魚拓は、サイトが落ちたときでもなんでもなくて、「ちょっとでもなんかあったら逃げられないようにしてやる」という目的で使う奴が気持ち悪いんですよ。なんでこうウェブを(頭の悪い)カウンターカルチャーでしか使えない人がいるんでしょうね。