NASとは?
1台のHDDをみんなで共有
NASというのは、ネットワーク(LAN)上に設置するハードディスク(HDD)で、ブロードバンドルーターやネットワークハブに、LANケーブルを接続して利用します。外観は一般的なUSB接続の外付けHDDと似ていますが、ネットワークに対応することで、データの活用の幅が大きく広がる製品です。
NASの利点のひとつが、1台のHDDを共有できること。ネットワーク上にある端末であれば、WindowsやMacなどOSを問わずに利用できます。各端末にそれぞれ外付けHDDを接続することなく、データのバックアップが行えるので、コストも抑えられます。また、データを気軽に共有できるのもメリットです。
たとえば、家族の旅行の写真をNASに保存しておけば、誰でも見たいときにすぐに閲覧できます。職場であれば、業務に必要なデータを共有することもできるでしょう。
いっぽうで、見られたくないファイルを保存したフォルダには、ユーザー名とパスワードによるアクセス制限をかけることができ、しっかりとプライバシーを守ることもできるので安心です。
NAS内の動画や音楽をスマホ・タブレットで視聴できる
マルチメディアを、より楽しめるようになるのもNASのメリット。たとえば、NASに動画や音楽、画像などのファイルを保存しておけば、DLNA対応のテレビやスマートフォン、タブレットなどで再生可能です。また、DTCP-IPに対応していれば、NASにダビングしたテレビ番組をネットワーク上のテレビなどで視聴できるのです。
たくさんの画像や動画など、大容量のファイルを扱う人は、読み書きの速度も気になるでしょう。2015年現在、NASのほとんどが1000BASE-Tに対応。パソコンなど、NASにアクセスする端末も1000BASE-Tに対応していれば、USB2.0対応の外付けHDDと読み書きの速度は遜色ありません。100Mbps以上の高速読み書きをうたっているNASなら、USB2.0の外付けHDDよりも高速でデータのコピーが可能です。「使っているパソコンのストレージが足りなくなってしまった」、「大事なデータをバックアップしたい」など、HDDの買い増しを検討しているのなら、NASに目を向けてみてはどうでしょうか。
NASのトレンド
2000年代前半に登場した家庭用のNASは、ほとんどのモデルの価格が5万円以上と高かったうえ、家庭内でLANを組むことがあまりなかったので、家庭でのニーズは多くありませんでした。しかし、ADSLや光ファイバーなどブロードバンドが急速に拡大し、家庭内LANが普及したこと、NAS自体の価格も下がってきたことで、NASは徐々に一般化してきました。
近年、NASは、家庭内で利用できるさまざまな便利機能を搭載するようになりました。たとえば、DTCP-IPに対応していれば、ブルーレイ・DVDレコーダーで録画した番組をNASにムーブし、DTCP-IP対応機器でその番組をネットワーク再生できます。
そのほか、デジカメの写真や動画を取り込めるUSB端子の搭載、外出先からNASのデータにアクセスできるリモート機能など、役に立つ機能が増えているのです。
基本スペックで選ぶ
HDDの有無
SSDは、HDDよりも転送速度が高速です。NASの保存ディスクとしてSSDを利用することで、HDDよりも高速な読み書きが可能となります。デメリットは、同じ記憶容量で比較した場合、SSDはHDDよりもはるかに高価なこと。たとえば、2015年2月現在、1TBのSSDがおよそ5万円以上と、HDDの5倍以上高くなります。
SSDに対応しているNASを選ぶには、製品の絞り込み機能で「SSD対応」を選択しましょう。SSDの標準的なサイズである2.5インチ対応のベイを搭載するNASが表示されます。なお、2015年2月時点では、完成品(標準)のNASでSSDを搭載するモデルはなく、すべてNASキット(オプション)です。
ネットワーク対応で選ぶ
DLNA、DTCP-IP、DTCP+の対応
NASに保存したファイルを、ネットワーク経由でテレビやスマートフォンなどで楽しみたい人は、DLNA、DTCP-IP、DTCP+への対応状況をチェックしましょう。
「DLNA」とは、パソコンやテレビ、スマートフォン、タブレットなどが、メーカーや機種を関係なく、ファイルをやり取りできるように定めたガイドラインのことです。NASがDLNAに対応していれば、そこに保存した動画や音楽、画像をネットワーク経由で再生することができます。
テレビ番組など著作権保護されたコンテンツをネットワークで再生するための規格。ブルーレイレコーダーなどで録画したテレビ番組をDTCP-IPに対応のNASにダビングすることで、同じくDTCP-IPに対応したテレビや、スマートフォン、タブレットなどで再生することができます。
機能で選ぶ
NASの機能を生かすうえでカギとなるのが「ドライブベイ数」です。これは、NASが搭載できるHDDの数です。ドライブベイ数が多くなるとHDDの数が増えるので、最大HDD容量が大きくなります。また、HDDを複数搭載するNASは、RAID(レイド)を利用できるというメリットがあります。
RAID(レイド)とは、複数のHDDを組み合わせて、データの読み書き速度を高速化したり、安全性を高めたりする機能のこと。RAIDにはいくつかの種類(レベル)があります。ここでは、一般的なユーザーも活用できるRAIDレベルを紹介していきます。
RAID
複数のHDDに分散してデータを書き込む技術です。読み書き速度は高速化しますが、いずれか1台のHDDでも故障すると、データの読み出しができなくなるというデメリットがあります。RAID 0はストライピングとも呼ばれます。
2台のHDDに同じデータを書き込む技術です。1台のHDDが故障しても、もう1台のほうからデータを復旧可能です。なくなっては困る大切なデータを扱うときに活躍します。RAID 1は、ミラーリングとも呼ばれます。
3台以上のHDDで構成し、1台にデータを修復するための符号を記録する方式。1台のHDDが故障しても、データを復旧することができます。読み書きの速度はRAID5のほうが速く、RAID 3が用いられることは少なくなっています。
複数のHDDにデータを分散書き込みしながら、同時に誤りを訂正する信号も記録する技術。読み書き速度が速いうえに、HDD1台が故障したとしても、もう1台でデータを復旧できる、RAID 0とRAID 1のよさを合わせ持っています。
4台以上のHDDで構成され、データを修復するための符号を二重に書き込むことで、2台のHDDが同時に故障しても、保存データを復旧できる方式。訂正符号の記録に必要な領域が増えるため、保存可能な最大容量は少なくなってしまいます。
その他
NASは、メーカーや機種ごとにさまざまな機能を搭載しています。たとえば、インターネット経由でNASにアクセスして、外出先から必要なデータにアクセスできるリモート機能や、指定した時間で電源をオン/オフできる省エネ機能などがあります。NASを使ってどんなことをしたいのかを念頭において、購入する製品を選びましょう。
主なシリーズ
個人ユーザー向けのシリーズです。DTCP-IPやDTCP+に対応し、テレビ番組を家族で共有できるモデルから、データを安全に保存することに特化したモデルまでラインアップが豊富です。
Wi-Fi接続に対応した個人向けのNASです。家庭内のデータ共有に利用できるほか、バッテリーを内蔵し、持ち歩いて利用可能。スマートフォンで撮影した画像をMiniStationに直接転送できます。
企業やSOHOなど、法人をターゲットとしたシリーズです。信頼性の高いNAS専用のHDDを搭載したり、保証期間を伸ばしたりと、企業のユーザーが安心して利用できるサービスを提供しています。
FAQ(よくある質問と回答集)
NASの設定は難しくありませんか?
ネットワークと聞くと難解なイメージを持ってしまうかもしれませんが、それほど難しいことではありません。各メーカーとも、設定を手助けしてくれるソフトを同梱しています。説明書を見ながら、そのソフトの画面の指示に従って作業を行えば、問題なく設定できるでしょう。
NASキットで利用するHDDはどんなものでもよいのですか?
NASを利用する場合には、いずれも同じ容量で、同一型番のHDDが望ましいとされています。RAIDを利用しないようでしたら、好みのHDDを選んで問題ありません。
スマートフォンからNASにアクセスできますか?
NASに対応したアプリをインストールすることで、ファイルを読み書きすることができます。動画や写真など、サイズの大きなファイルをNASに保存することで、スマートフォンのストレージを節約することができます。
用語集
1000BASE-T
最大で1Gbpsで通信できる通信規格の1つです。
ダビング
一般的に、HDDレコーダーやDVD/ブルーレイレコーダーで録画したテレビ番組を、別のHDDやDVD/ブルーレイメディアにコピーすること。ダビングした番組を、別の機器に再びダビング(孫コピー)することはできません。