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すべて甘いものでできています。
スイーツバーガーが流行っているらしい。
要はフルーツやクリームをパンやスポンジケーキなどで挟み、ハンバーガー型に仕立てたお菓子だ。 いろいろなお店で商品化されているが、どれを見ても可愛らしく仕上がっている。 でも、「ハンバーガー」からは離れていっている気がするのだ。 バーガーというと、頭に浮かぶのはバンズにミートパティ、そして野菜を挟んだものではないだろうか。 見た目はあくまでハンバーガーなのに、実は甘いという「スイーツバーガー」を作ってみたいと思う。 > 個人サイト yukatta-yokatta フルーツバーガーを食べに行く写真は平日の昼間に撮影したが、休日に行ったら行列ができていた。
八天堂といえば、駅構内でいろんな味のクリームパンを販売しているのを見かけるが、このカフェは駅ではなく東京ドームシティのラクーア内にある。
店頭のパネルを撮影したもの。「まるで、ケーキを食 べているような感覚。」税込450円。
メニューも多い。左2つはしょっぱいバーガー。
定番のクリームパンも売られているが、あくまでメインはスイーツバーガーのようだ。
「ハンバーグ&スクランブルエッグ」や「ツナ&エッグ」といったスイーツじゃないバーガーもある。 生クリームとフルーツをサンドした、「フルーツバーガー」を注文した。 アイスコーヒーとセットで770円。
ここまで冷静なふりをして書いてきたが、もうだめだ。
これはテンションあがるわ…! 八天堂独特のしっとりした甘いパンに、色とりどりのフルーツ。そして生クリームがたっぷり。 シンプルな構成ながらデコレーションケーキの構図を想起させて、否応なく心踊らされる。 甘いものをバーガーにすることの意義って、手軽に食べられるようにすることかなと思っていたのだが、それは言い換えれば「まるかじりできる」という魅力なのではないかと気付いた。 子どもの頃、多くの人がホールケーキを丸かじりしたいという願望を持ったのではないだろうか。 スイーツバーガーは、構成要素はケーキと変わらないのに、ケーキと違って手で持ってまるかじりすることが容認、むしろ全面肯定されているのだ。 一応プラスチックのスプーンが付いているのだが、私もかじりついた。 甘酸っぱいフルーツと、甘いクリームのバランスが素晴らしい。 そして、本来「少しずつ食べる」はずのスイーツを、バーガーとして「雑」に食べる軽い後ろめたさ。 これはいい、これはおいしいし、楽しいぞ。 バンズを焼くスイーツバーガーを作るにあたり、まずはバンズを焼かなければならない。
ここは普通のバーガーと変わらずパンを焼くだけだ。少し砂糖多めの配合にした。 発酵前の生地をセルクルの中に配置する。
ところで、この銀のわっかはセルクルという。お菓子やパンを作るときに使う型で、枠のみで底がない。
喫茶店などでたまにある分厚いホットケーキや、レストランでハンバーグなどに添えられているまん丸の目玉焼きは、これを使って焼いたものが多い。 セルクルを使うことで、バンズの形をきれいな円形に整え、高さを出すことができる。 セルクルは調理器具売り場で買えるが、これは牛乳パックとホイルで作った。 簡単に紹介させてほしい。 まずは牛乳パックを洗って乾かし、3センチ幅くらいに輪切りにする。はさみでざくっと 適当に切って大丈夫。
切った紙パックを指で伸ばし、円形にする。
わっかにホイルを巻いていく。
完成。ホイルを替えれば再利用も可。
牛乳パックとホイルで作るこの方法は割と有名なのだが、今回紹介したかったのは、
「牛乳パックを縦に細長く切らなくても、輪切りにすればそのまま使える!」 ということなのだ。 牛乳パックを縦に細長く切って、円形にしてホチキスで留めるという作業が必要なく、輪切りにした牛乳パックを丸く成形するだけで直径9センチのセルクルが作れる。 今回唯一役に立つ(かもしれない)情報でした。 発酵させた生地に卵液を塗ってごまを乗せる。
型の内側には油を塗っておくと外しやすい。
バンズが焼けた。
ところで、しれっと「セルクルって重要!」みたいな文章を書いてきたが、焼きあがりの写真を見て何か違和感を覚えませんでしたか。 …焼けたバンズが、セルクルより小さい。 本来、焼いて膨らんだバンズをセルクルが矯正するはずが、パン生地が小さかったのでセルクルと無関係に焼きあがっている。 それでも別に高さもあるし、ちゃんと丸く焼けている…。 というわけで、セルクルの作り方まで揚揚と説明しておいて何だが、バンズを焼くには別にセルクルはなくてもいいのだなーということを知ったので、それも報告しておく。 パティを焼く今度はパティである。
パティはジューシーで肉厚なものが望ましいが、何で作るか。 甘くて茶色くて、円形に成形できるもの。 すぐ決まった。チョコレートたっぷりの、しっとり分厚いチョコレートブラウニーを焼こう。 型に生地を流して…
焼きあがったら丸く型を抜く。
テクスチャーが乾いた感じなので、ミートパティのジューシーさは表現できていないが、食べ物としていまのところおいしい要素しかない。
よし、おいしく作って楽しく食べるぞ。 材料をそろえる次はトマトである。
苺ジャムを溶かしてゼラチンを加えて…
固まったら型で丸くくりぬく。
甘くて赤くて丸くくりぬけるものということで、苺ジャムで固めのゼリーを作った。
これも簡単に決まった。 悩んだのがレタスだ。 甘くて緑でひらひらしたものってなんだ。 緑の着色料を加えたゼリーを作ることも考えたが、できればそのままの色で作りたい。 考えながらスーパーをうろうろしているうち、緑で甘いものといえば、ちょうど今旬を迎えているものがあるじゃないかと気づいた。 まな板が傷だらけで見苦しくごめんなさい。
シャインマスカットである。
種なし、しかも皮ごと食べられる。 以前は数千円のものが多くて、「美味しいだろうけど…無理!高い!」と検討の余地もなかった。 しかし最近は、ひと房1000円ちょっと、セールだと800円を切る金額で売られるものもみられるようになって、「高い!…けれど買えない金額じゃない!…食べたい!」というくらいになってきた。 ケーキを買ったと思えば買える。 スイーツバーガーのレタスにするために、ケーキを買ったと思ってシャインマスカットを買うという状況となった。 バーガーを仕上げる左上の苺ジャムはケチャップとして最後に乗せる予定。左下はヨーグルトで、マヨネーズの代わりにバンズに塗る。
お皿の上は左から時計回りに、ミートパティ(チョコレートブラウニー)、オニオン(輪切りのりんご)、レタス(シャインマスカット)、トマト(苺ジャムゼリー)、バンズ(マヨネーズに見立てたヨーグルトを塗った)である
お皿の上は左から時計回りに、ミートパティ(チョコレートブラウニー)、オニオン(輪切りのりんご)、レタス(シャインマスカット)、トマト(苺ジャムゼリー)、バンズ(マヨネーズに見立てたヨーグルトを塗った)である。
レタスのつもりで張り切ってシャインマスカットを乗せたが、これ、もっと似ているものがある。
ピクルスじゃないか…? レタスのつもりで張り切ってシャインマスカットを乗せたが、これ、もっと似ているものがある。 ピクルスじゃないか…?
シャインマスカットは完全にピクルスであった。
バーガーらしいかと旗をさした。星条旗であることに意味はない。
完成した。見た目は肉厚ミートパティの立派なハンバーガーになったのではないだろうか。
しかも味は完全に甘い。その上おいしい要素しかない! 自分をもてなすさっそく食べてみる。
いいお天気の日が続くので、公園に来てみた。 このサイズなら完全に普通のハンバーガーに見えると思う。
この近さでもばれないのではないか。
ここまで近づくとそろそろ気づかれるかもしれない。りんごがたまねぎに化けていない。ゼリーも正体を現しかけている。
自分で作ったとはいえ、秋晴れの気持ちのいい週末の公園で大好きな甘いものを食べる。
贅沢だなぁと思うが、たまには自分を自分でもてなしたい。 最近、左手首は腱鞘炎だし、焼き魚を食べていたら硬いものが当たったので魚の骨かと思って捨てたら実は歯に詰めたセラミックで歯医者通いだ。 日曜日の夢を見ていて油断していたら実は水曜日で寝坊するし、なんならずっと風邪気味だ。 ここはひとつ好き放題やって気分を一新しよう。 さて、どこからかじろうか…。
うん、うまいぞ!!
これだけ気持ちが盛り上がっているのに意外においしくなかったらどうしようかと思ったが、大丈夫だった、すごくおいしい!!!
甘くほろ苦いチョコレートブラウニーに、甘酸っぱい苺ジャムのゼリーはとても合う。 これら2つは味が濃く主張が強いが、それをバンズがちょうどよく和らげる。 シャインマスカットはぷちっと弾け、ぷるんとした食感で爽やかさを加え、りんごは瑞々しくしゃきっとした食感で面白い。 さらにマヨネーズ代わりに塗ったヨーグルトがさっぱりさせてくれる。 …完璧な組み合わせではないだろうか。 すぐ隣で、見知らぬご夫婦が池の魚に餌をやっているのでちょっと気まずい。
遅めの朝食の後で、すぐ昼食の予定があったのだが、どんどん食べ進められる。
食べかけで恐縮ですが断面。これも普通のハンバーガーに見えると思う。
重くお腹に残る感じもなく、5分もせずに食べ終わった。
おかげさまで気分も晴れやかで元気が出た。 しかもこの原稿を書いている現在、腱鞘炎はちょっと楽になって、風邪も治った。 天気のいい週末に、大好きな食べ物を公園で食べると、ちょっとした不調は回復するということでまとめたいと思う。
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