生活をともにする同性カップルを、夫婦と同じような関係として認める。全国に先駆けて、東京の渋谷区と世田谷区で生まれた条例の制度が動き始めた。

 だれもが自分らしくあることを行政が支える意義は大きい。認定第1号となった渋谷の女性2人は、区の発行したパートナーシップ証明書を手に、はじけるような笑顔を見せた。

 同性カップルが自分たちの関係を他人に説明し、受け入れてもらうには、今でもさまざまな差別や偏見の壁がある。

 親戚と偽らないと、同じ部屋を借りて住めない。手術などの同意に、もっとも身近な存在であるパートナーとして関与できない。渋谷区の証明書や世田谷区の受領証は、こうした場面での活用を想定されている。

 社会に「見えない存在」になりがちだった同性カップルが、書類を通じて「身近な存在」に変わる。今回の取り組みが意識の入れ替えを求める相手は、カップル自身ではなく、むしろその周りの人びとだろう。

 法律のような強制力はない。だからこそ周りの理解がかぎとなる。いかなる差別もあってはならず、多様性を認め合おうという条例の理念を地域で育て、根づかせていきたい。それが、全国に波を広げることにもつながるだろう。

 性的少数者にとっては、今回は問題解決策の小さなひとつに過ぎない現実も留意したい。

 カミングアウト出来ず、役所の窓口で申請するというハードルを越えられない人もいる。特定のパートナーがいない人も大勢いる。

 目指すべきは、今回のような紙の発行があってもなくても、だれもが個々の人間の多様性を認め合う社会をつくることだ。

 最近は保険会社が、同性カップルのパートナーを生命保険の受取人として認めるようになってきた。「結婚」休暇を認める企業もあるなど、働く場で平等に扱う動きが少しずつ広がってきた。

 地縁・血縁に頼りにくい性的少数者は、自分の将来や老後について不安が強いと言われる。安定した暮らしを築くうえで不利がないよう、官民問わず、各方面の取り組みを進めたい。

 国連では08年、性的指向などによる人権侵害をなくすよう求める声明を約60カ国が総会に出した。日本も賛同している。

 その一方で日本は、国連人権理事会などから、性的指向にもとづく差別が存在しているとして是正を勧告されている。国レベルの取り組みについても議論を深めるきっかけにしたい。