各省庁の政策に無駄遣いがないか点検する公開検証が、今年も11日から3日間、実施される。政府の行政改革推進会議が行う。

 今回の焦点は、高速増殖炉「もんじゅ」の扱いだ。もんじゅを巡っては、運営主体の日本原子力研究開発機構が原子力規制委員会から運営を退くよう言い渡されたばかりだ。公開検証では、もんじゅ関連予算の一部である交付金などが対象となっている。しかし、せっかくの機会である。交付金にとどまらずに全体像に切り込んで、行革の面から政策の不合理と廃炉の妥当性を示してほしい。

 もんじゅは、財政面から見ても行き詰まりが明らかになっている。70年代の計画初期段階で350億円と見積もられていた建設費は、すでに1兆円規模に達した。事故や不祥事で20年以上運転できずにいる今も年間約200億円、1日あたり約5千万円が維持費に消えている。

 もんじゅの維持費は、今年度当初予算で見れば、地産地消型の再生可能エネルギー活用への取り組み支援(238億円)に匹敵し、風力発電用の送電網整備に向けた実証事業(105億円)や地熱発電の開発調査支援(80億円)を大きく上回る。

 福島での原発事故を経て日本のエネルギー政策は、再エネなど新しい電源の普及・育成にも手を広げはじめた。もんじゅの継続に巨費を投じるより、新しいエネルギー社会の構築に費やしてはどうか。

 高齢化と巨額の財政赤字を抱えた日本の財政事情は厳しく、社会保障費や教育費などを切り詰めつつ増税することが避けられない。運転の見通しが立たない事業に資金を投入し続ける余裕はないはずだ。

 もんじゅがこれまで存続してきたのは、運転できなくて困る直接の当事者がいないからだ。

 電力会社が保有する原発は、事故や不祥事で発電できなければ、たちまちコストがかさみ経営を圧迫する。だが、研究炉扱いのもんじゅは、国家事業としてほぼ自動的に予算がつく。

 原子力政策を担当する経済産業省や文部科学省にとっては、続ける姿勢をとり続けたほうがメリットがある。やめるとなれば、核燃サイクル政策全体の見直しを迫られ、使用済み燃料から取り出したプルトニウムの処理にも直面する。

 今回の公開検証は、行革に熱心な河野太郎氏が担当相だ。もんじゅ廃炉という行革の実を挙げてほしい。200億円を先送りのコストとして認める理由はないはずである。