本日の「歴史秘話ヒストリア」舞台は…出雲といえば出雲大社です。
この厳かな雰囲気。
島根に行ったら是非押さえておきたい場所ですね。
2年前出雲大社では平成の大遷宮として神様のオオクニヌシノミコトが改修された本殿にお戻りになりました。
60年に1度の事です。
この出雲大社がすごいのは縁結びの力。
今日は神々による縁結びの地出雲の不思議な世界へご案内します。
神話の里島根県が誇る出雲大社。
日本の国づくりをした神を祀る聖なる場所です。
出雲には他にも不思議な場所がいっぱい。
恋のお告げをしてくれる池に安産に御利益があるという狭〜い岩くぐりまで。
パワースポット誕生の背景には日本神話のヒーローたちの意外なドラマがありました。
美しく輝く勾玉。
出雲土産として人気の勾玉にもミステリアスな歴史があります。
近年の考古学から明らかになってきた古代出雲の姿。
巨大な神殿を築くほどの力の陰には貴重な石の存在が…?光さす神々しい風景も出雲の魅力。
明治時代この風景を日本人以上に愛した外国人がいました。
ハーンが出雲で出会った風景人そして怪談。
人々が近代化へ急ぐ中ハーンが出雲で発見した日本の真の魅力とは?いにしえより神々と人が共に暮らしてきた出雲。
今宵は神話の里の縁結びを巡る物語です。
皆さん出雲への旅はどうやっていらっしゃいますか?オススメは空から。
なぜかといえば…こちらをご覧下さい。
空港の愛称が「出雲縁結び空港」。
空港内にはあちこちにハートマークが描かれており見つけると縁起がいいとか。
島根県の観光キャラクター「しまねっこ」もハートマーク仕様。
ロビーには絵馬のスペースも設けられこんな所でも縁結び祈願ができるようになっています。
縁結びのパワーあふれる町出雲。
そのルーツをたどるとっておきの旅に出発しましょう!出雲とは松江市や出雲市を中心とした島根県東部の地域。
まず初めにご紹介するのは松江市の中心部から車で10分ほどの所にある…縁結びの御利益が有名で出会いを求める女性たちが多く訪れます。
彼女たちのお目当ては本殿の奥にある…ここで行われるのが…社務所にある占いの紙におさい銭を載せて浮かべると…良縁のある方角やアドバイスが浮かび上がってきます。
(一同)いっせ〜ので!全然沈まん。
ここからが大事。
15分以内に沈めばもうすぐ縁が結ばれますが30分以上だとちょっと遅くなるかも。
なぜこの神社に縁結びの御利益があるのかというとスサノオノミコトとクシナダヒメという神様がこの地で結ばれ結婚したと言われているからです。
良縁を求める女性たちが殺到し今では年間30万人以上が訪れるほど。
あ〜沈んだ。
無事相手が見つかったら次は一緒に暮らす「愛の巣」探し。
新居を探す縁起のいいスポットなら雲南市にある須我神社がオススメです。
「日本初之宮」と書いてありますが何が日本初かというと…。
神社の上の山頂は日本海まで一望できる絶景スポット。
オーシャンビューの新居を気に入ったスサノオが喜びのあまり歌ったとされるラブソングが残っています。
湧き立つ雲が八重の垣根をめぐらしてくれる。
愛しい妻を住まわせるすばらしい家が出来たなぁと歌ったのです。
この神社のパワーをもらうと思わずこんなラブソングを歌ってしまうくらいすてきな愛の巣が見つかるかもしれませんね。
さあ無事に新居も見つかったら次にお願いしたいのは「子宝」。
先ほどの須我神社の奥に子宝のお願いをできる場所があります。
それがこの…子宝・夫婦円満の神様として地元の人からあつく信仰されています。
石に触らなくても石のパワーというのがこう来るんですよね。
願いが通じて子供を授かったらあとは無事に産まれてくるよう安産のパワーが欲しい。
そんなあなたにはこちらがオススメ。
地元でも知らない人が多いほど山奥にある…険しい石段を30分以上かけて登っていくと…。
道を塞ぐ大きな岩。
そこに人が一人やっと通れるほどの隙間が開いています。
無事通り抜けられると子供も健康に産まれると言われています。
すごいねこれ。
通り抜けた所に建っているのは小さな祠。
ここに祀られているのもスサノオノミコトです。
祠には参拝客が書いていくノートがあります。
ノートには実際にこの岩くぐりをした人からご加護に感謝するメッセージが数多く寄せられています。
さてこれまで皆様をご案内してまいりましたパワースポット。
その全てに登場しているのがスサノオノミコトという神様です。
このスサノオノミコト出雲では大変人気のある神様で地元のプロバスケットボールチームの名前も「スサノオマジック」というんです。
では一体どんな神様なのでしょうか?「古事記」や「日本書紀」に書かれた日本神話に登場する神様です。
強く荒々しい武勇の神様であの織田信長も憧れたと言われます。
時代はまだ…出雲の地に降り立ったスサノオは美しい女神と出会います。
女神の名は…その美しさにスサノオは一目で恋に落ちました。
しかしクシナダヒメは間もなく化け物の生贄にされようとしているところでした。
その化け物は…ほおずきのように赤い目8つの頭を持つ巨大で凶暴な大蛇です。
スサノオは女神を助けようとヤマタノオロチ退治を決心。
そして知恵を働かせ…そして酔っぱらって寝込んだところを…。
見事退治する事ができたスサノオは勇者としてたたえられめでたくクシナダヒメと結婚。
2人は仲むつまじく幸せに暮らし…出雲市の須佐神社にはオロチの骨と言われる化石のようなものが宝として収められています。
さてオロチを退治したあとスサノオにはスセリヒメというかわいい娘が生まれました。
しかしある悩みが。
娘にプロポーズする男が現れたのです。
オオクニヌシノミコトという神様です。
しかし気になる事も…。
それは女性にモテすぎる事。
このプロポーズに来た時には実は既に婚約した女神がいたのです。
スサノオの反応は…。
こんな男に娘はやれん!そしてオオクニヌシに厳しい試練を与えます。
わ〜!ヘビやムカデハチだらけの洞窟に閉じ込めたのです。
しかしオオクニヌシはスセリヒメから魔物を追い払う布をこっそりと渡されます。
それを巧みに使いながら試練をクリアーしていきました。
スサノオも試練を乗り越えたその実力に感服し結婚を認めました。
出雲を拠点に土地の開墾や農業医療の普及など今の日本の暮らしにつながる土台を築いていったのです。
「古事記」には国づくりとともにこんな意外な話も書かれています。
オオクニヌシの人気は収まらず全国各地の女神と関係をもちます。
つくった子どもの数は180以上にも上りました。
神話のこうした記述は…このオオクニヌシノミコトが祀られているのが出雲大社。
出雲最大のパワースポットです。
出雲大社ではオオクニヌシが日本の原点である国づくりを始めたという事から恋愛の縁はもとより家族の縁友人の縁などあらゆる縁を結ぶ事に御利益があると信じられています。
さまざまな試練を克服して愛をつかんでいったスサノオノミコトとオオクニヌシノミコト。
出雲ではご縁だけではなく愛をつかむための強さと勇気も授かる事ができるのかもしれませんね。
全国に名を知られた出雲の名湯…美肌とよろずの病に効く神の湯とたたえられてきました。
ここには温泉の他にもう一つ人気のあるものがあります。
それが…お土産屋さんでも人気ナンバー1のストラップは…やっぱり勾玉。
出雲は古墳時代から平安時代にかけて勾玉などの玉作りが盛んな地でした。
「たまつくり」という地名はその名残なのです。
この玉作りの技術こそ出雲が神々の地として日本中に知られていく要因の一つとなっていました。
美しい勾玉を巡るミステリアスな物語です。
しかしかつての姿は今とは大きく異なるものだったようです。
2000年境内の工事をしている時古代出雲の様子をうかがわせる驚くべき発見がありました。
発見されたのは…柱は3本の丸太を組んで1本にしてあり直径は3mにもなります。
宮司の家に残る平安時代の設計図には…当時の本殿とは一体どんなものなのか研究者の協力を得て再現した映像です。
東大寺の大仏殿よりも数メートル高い超高層神殿でした。
この神殿は「古事記」にも登場し「オオクニヌシが天までそびえ立つ神殿を神々に建てさせた」と書かれています。
研究者の間では…飛鳥時代から奈良時代にかけて大和にあった…このころ朝廷が重視していた場所の1つが出雲でした。
一説では…その理由を探る手がかりの一つが勾玉をはじめとする出雲の玉作りの技術です。
出雲には玉作りの材料に適した石が採れる花仙山という山があります。
中でもここで産出した緑色の輝きを持つ…その美しさから出雲で作られた玉は霊力が強いと考えられていました。
奈良時代から平安時代にかけて行われた…その質も高いものでした。
出雲で玉作りが始まったのは弥生時代までも遡り優れた技がありました。
とりわけ多く生み出されたのが勾玉という独特なデザイン。
勾玉の形は魂の形とも言われ身につける事で体に魂を結び付け魔除けになると考えられています。
玉の材料となる石が豊富にあり更に巧みな加工技術を持っていた出雲。
中央集権化が進む中でも出雲が特別な地位を保った要因の一つとも考えられています。
今なお詳しい様子がよく分かっていない古代出雲。
その実像は勾玉の輝き同様ミステリアスなベールに包まれています。
私が今来ておりますのは松江市の中心部から車で15分ほどの所にあります…そしてその温泉街の一角にあるのがあちらの…ここにも最近注目のパワースポットがあるんです。
それがこの本殿の脇にあります。
あちらです。
この丸い石「願い石」といいます。
この石には古くから神様が宿っていると伝えられてきました。
ある時山の中から突如真ん丸の石が見つかりその不思議さに人々は「神様が現れた」と喜んだとか。
この地では…最近では新しいお参りの方法もあります。
こちら社務所で授けて頂いた石「叶い石」といいます。
この叶い石をこの願い石に触れさせましてお願い事をします。
そうすると願いは叶うのだとか。
玉作りの地出雲に今も残る不思議な場所です。
出雲を訪れたらとにかく見て頂きたいのがこの景色。
雲間からさす光。
まるで神が宿っているような美しい風景です。
こうした日本の原風景ともいえる景色が今も出雲には変わらず残されているのです。
明治時代この出雲の風景にほれ込んだ外国人がいました。
小泉八雲ことラフカディオ・ハーン。
ハーンがその名を知らしめたのは「雪女」や「耳なし芳一」などが収められた「KWAIDAN」という本。
この名作誕生の背景には出雲での女性との出会いそして古き良き日本の伝統との出会いがあったのです。
ハーンの人生は幼い頃から苦難の連続でした。
(少年)危ない!学校で遊んでいる時事故で左目を失明。
そんなハーンの心を癒やしてくれたのがギリシャ神話やおとぎ話の空想の世界でした。
大人になるとハーンは…そんな中1冊の本との出会いがハーンの運命を大きく変えました。
当時英訳されたばかりだった日本の「古事記」です。
ハーンは母国ギリシャの神話にも似た日本の神々の物語に興味を抱きます。
(ハーン)日本へ行きたい。
日本の神様に会いたい。
1890年明治23年ハーンは40歳のころついに日本を訪れます。
長期間滞在しながら日本の文化を研究するため…すると見つかったのは松江の中学校の英語教師の仕事。
偶然にも憧れ続けてきた「古事記」の舞台出雲へ赴任する事となったのです。
ハーンは松江で生活しながらさまざまな場所へ足を運びました。
その一つが「古事記」にも出てきた出雲大社です。
これが神の宮か!ずっとここに来たかった。
そして何よりもハーンの心を捉えたのは人々の素朴な暮らし。
(かしわ手)日々海や山に祈りを捧げる人々の姿を見てハーンは神々が自然の中に息づいていると感じます。
ハーンは松江を「神々の国の首都」と表現し松江での暮らしを心から愛しました。
松江に来て数か月。
運命の出会いが待っていました。
ハーンの所に身の回りの世話をする住み込みの女中がやって来たのです。
女性の名前は小泉セツ22歳。
没落した武家の娘で貧しい家を一人で支えるため若い頃から働きに出ていました。
家族のため献身的に働くセツにハーンは日本女性ならではの美しさを見いだし引かれていきます。
そして出会って半年後2人は出雲の地で結ばれたのです。
2人の結婚生活はちょっと変わっていました。
出雲の人々の間に口伝えで残ってきた伝承や民話を教えてほしいとねだり…その中でハーンが最も興味を引かれたのが怪談話です。
セツはこのころのハーンの様子をこう記しています。
ハーンがセツから聞いた出雲の怪談の一つにこんなものがありました。
(セツ)江戸時代の松江藩主松平家の菩提寺です。
この寺の境内に亀が好きだった藩主のために建てられた大きな亀の石像があります。
(セツ)夜になるとその亀がゆっくりゆっくり動きだすというのです…。
大亀は夜な夜な城下町を徘徊し人々を食い殺しました。
生前に深い悔いを残して亡くなった藩主。
その魂を鎮めようと住職は…。
セツから聞いた怪談をハーンは自分の言葉で文章にしていきました。
それをまとめた本が「怪談」。
その中には「雪女」や「のっぺらぼう」など今なお読み継がれる怪談が数多く収められています。
これらの怪談のほとんどはハーンが書いた事で初めて広く知られるようになったものでした。
改名後は小泉八雲と名乗りました。
八雲という名前はあのスサノオの歌から取り雲が湧き上がる出雲の風景を生涯その胸にとどめたのです。
日本への永住を決めたハーンには一つ気がかりな事がありました。
(汽笛)当時の日本は急速に近代化を進めていた時代。
古くからあった日本の文化が打ち捨てられ西洋の文化に染まろうとしていました。
ハーンは自分が出雲で感じ取ったような神々と人とが共に暮らす文化を決してなくしてはならないと訴えています。
ハーンは亡くなるその時まで日本人が受け継いできた魂の美しさを書き残し次の世代へ伝えていったのです。
ハーンは出雲のさまざまな場所を訪れていますが中でも「ここだけは必ず行かねばならない」と書いている所があります。
港から船で5分ほど行った所にその洞窟はあります。
「加賀の潜戸」と呼ばれるこの洞窟は…特徴的なのはこの突き抜けた洞窟の形。
向こうまでまっすぐ見通す事ができます。
古くから…ハーンはこの洞窟を「神様の岩屋」と呼び作品にも記しています。
松江ではハーンゆかりの催しもあります。
はいゆっくり下げてゆっくり下げて。
提灯の明かりだけで照らし出される古き良き日本の夜。
100年以上たった今でもハーンが愛した光景が地元の人々によって守り続けられています。
それでは最後にもう一つ。
そんな秘話をどうぞ。
1日の始まりに一番新鮮な水を竹筒に汲みます。
汲んだ潮水で暮らしを守ってくれる氏神様の社を清めます。
浜の近くに住む蚊屋フミ子さんは40年前からこの潮汲みを続けています。
出雲の神々への感謝の気持ちをもち続ける事で夫の死や病などさまざまな苦労を乗り越えてきました。
今月出雲でとても大切にされている儀式神迎神事が行われます。
これは国づくりの神オオクニヌシのもとに全国の神社から八百万の神が集まってくるというもの。
集まった神々は神官の先導で町の中を厳かに進み出雲大社に1週間滞在します。
一堂に会した神々が行うのは人々の…人々の平安を願う神々とその加護に感謝する人々。
「古事記」の時代から1,300年余り。
神話の里出雲では神々と人々の縁が今も息づいています。
2015/11/04(水) 22:00〜22:45
NHK総合1・神戸
歴史秘話ヒストリア「名作選 出雲 縁結びの旅へ!〜いにしえの神話の里物語〜」[解][字]
11月、全国から神さまが集まると言われる出雲。神話の舞台であるこの地には、縁結びのパワースポットがいっぱい。謎のまが玉に、出雲と縁が深い小泉八雲も登場。
詳細情報
番組内容
日本神話の舞台・出雲には、パワースポットがいっぱい。恋のお告げの池に、安産の岩くぐり…縁結びパワーの源には、神話のヒーローたちの知られざる恋愛ドラマがあった。また近年の考古学によって、古代出雲の意外な力が明らかに。その陰にはまが玉作りが…?さらに明治時代にはラフカディオ・ハーンが出雲を訪れ、怪談の原点、そして日本の源流と出会う。神話からハーンまで、出雲秘話を名作選でお送りする。
出演者
【キャスター】渡邊あゆみ
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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