先月行われた東京・三軒茶屋の秋祭り。
みこしの担ぎ手は地元住民かと思いきや。
中には静岡からやってきた人も。
実は全国で、地元住民だけでの祭りの維持が難しくなっています。
祭りを支えてきた町内会。
今、曲がり角に立っています。
おはようございます。
祭りだけでなくごみの管理や防犯など地域でさまざまな役割を担ってきた町内会。
しかし、加入率が下がり続け今や各地で存続が危ぶまれています。
町内会の組織が揺らぐ中住民の間で思わぬトラブルも。
この女性は、町内会からの脱退を申し出たところごみ集積所の使用を禁じられてしまいました。
暮らしが多様化する中地域のつながりをどう守っていけばいいのか今夜は考えます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
町内会あるいは自治会町会など呼び方はさまざまですが地域に密着し、全国津々浦々30万もあるといわれる町内会組織は日本独特のものです。
この町内会とは、一定の区域で居住者が任意で加入し地域の問題に自主的に取り組む組織です。
加入は任意とされながら一方で原則は、全世帯加入という性格を持っています。
地域の課題を住民全員で自主的に解決するという日本ならではの制度は国際的にも評価され始めているのですが、おひざ元では町内会の加入率の低下運営する担い手の不足などが各地で深刻化していて組織の形骸化が進んでいると見られています。
ご覧のように地域の親睦を深めるお祭り、回覧板の作成地域の清掃、防犯や防災活動地域によっては慰安旅行の手配や雪かき、さらにはカラスイノシシ、スズメバチの駆除と仕事は多岐に渡っています。
行政の手が回らないきめ細かな住民サービスを担う町内会。
仕事は増える傾向にあると見られています。
特に東日本大震災以降住民の命と生活を守る組織として改めて評価し直す動きもあります。
しかし、その一方で町内会の加入率はご覧のように例えば、東京都市部の世田谷区大阪市でも大きく落ち込んでいます。
災害時の対応や高齢者の見守りなど町内会に期待される役割が大きくなる一方で進む組織の弱体化。
町内会が直面する実態からご覧ください。
福岡・北九州市。
ここでも町内会への加入率は年々下がり続けています。
おはようございます。
4000人が住む西戸畑地区の町内会長野口勝義さん、71歳です。
会長を引き受けたのは6年前。
以来、自由な時間がほとんどなくなりました。
朝は3時間かけて市から頼まれた広報紙を配布するための作業です。
その後、妻と2人で一軒ずつ配っていきます。
1人暮らしのお年寄りに異変がないか確認するのも大事な役目です。
ごみ集積所の管理も町内会の仕事。
ごみの散乱を防止するため町内会費でネットを購入しごみの出し方を指導しています。
ところが、町内会に加入しない住民が増えルールが守られないケースが目立っています。
結局、散乱したごみの清掃を行うのは、野口さんたちです。
なんとか町内会に加入してもらおうと新たな住民の家を頻繁に訪れますが。
失礼します。
行政から期待される役割も年々増える一方です。
70歳を超えてもなお地域のために働かざるをえません。
かつては、回覧板の配布などが主な仕事でした。
しかし、住民のニーズが多様化する中、防犯や防災清掃など幅広い業務を受け持つようになりました。
夜になっても町内会の仕事は続きます。
防犯のための巡回パトロールです。
管理する街灯もチェック。
野口さんにとって大きな負担ですが会長のなり手がいないため続けざるをえません。
行政から大きな役割を期待される町内会。
それは戦時中の隣組にさかのぼります。
国家総動員体制の下国の末端組織として機能しました。
戦後はGHQによっていったん解散させられましたがその後、復活。
町内会は、地域の仕事を自主的に担う組織として根づいていきました。
災害時には、いち早く住民の安否確認や炊き出しなどを行いその存在感を高めました。
そして、地域の高齢化が進む今新たに起こるさまざまな問題解決の最前線で町内会には一層多くの役割が期待されています。
しかし、膨らみ続ける町内会の業務に一部の住民からは悲鳴が上がっています。
宇都宮市郊外の住宅地です。
ここで去年、町内会から一度に8世帯が脱退するという事態が起きました。
こんにちは。
どうぞよろしくお願いします。
そのうちの一人山田康子さんです。
実は山田さんを含め脱退した世帯のほとんどが70歳以上の高齢者。
町内会の役員になるとさまざまな会合や花見など年間60件に上る行事への参加が義務づけられます。
認知症の家族を抱えていたり夜間の仕事で昼夜逆転の生活を余儀なくされていたりしてとても役員を引き受けることはできないといいます。
山田さんたちは町内会費は払うので役員の仕事は免除してほしいと申し出ました。
しかし、町内会側は難色を示しました。
山田さんたちはやむなく町内会を脱退すると伝えました。
すると…。
すべての防犯灯が取り外されてしまったのです。
撤去したのは町内会。
電気代を支払うなど、町内会が防犯灯の管理をしていました。
さらに町内会は8世帯に対してごみ集積所の使用も禁止すると伝えました。
なぜこうした対応を取ったのか。
町内会長に取材を申し込みましたが回答を得ることはできませんでした。
町内会と共に住民サービスの充実を図ってきた自治体。
宇都宮市は、住民側が町内会に戻ることが望ましいとの姿勢を取っています。
組織が先細る中町内会は何をどこまで担うのか。
今、大きな岐路に立たされています。
今夜のゲストは、町内会が抱える問題を各地で調査されています、首都大学東京教授の玉野和志さんです。
町内会との関わりの在り方を巡って、住民どうしのトラブルに発生した今の事例。
どうご覧になりましたか?
ちょっと極端だと思うんですけれども、やっぱり、住民どうしが争うというよりは、やっぱりそういう人が抜けては、まあ、いろいろある事情のある人を飛ばすぐらい、できないぐらい、町内会全体の仕事が増えてるってことが、むしろ問題でしょうね。
それはむしろ、そちらを軽減してやっぱり事情のある人は、輪番を少し抜けてもやっておけるぐらいの仕事にとどめておいたほうが、本来はやっぱり行政がやるべきことなわけですから、そこまで負担をして、住民どうしが争う必要はないんじゃないかなというふうに思いますけどね。
本来は行政の仕事を町内会が代わりにやっているという位置づけということなんですけども、どうして多くの人たちは、これは行政がやってた仕事ではないかと思える。
例えば防犯灯の管理ですとか、あるいはごみ集積所の管理など、たぶん町内会がやっているというふうに思っていない人も、多いのではないかと思うんですけども。
防犯灯なんかは、戦後のかなり復興期のころに、真っ暗に、夜になるので、それで行政側はそんな余裕がない時期でしたから、地元でもう作ってしまったという歴史があって、それがそのまま行政が引き取ればよかったのかもしれませんが、日本の場合は、補助金を出すとか、いろんな形で、共同的に解決するような形でずっとやってきたっていう歴史があるんですね。
そういうところで、今は当然、行政がやっているんだろうと思っているところで、かなり行政から補助は受けますけど、地元が管理してやってるということが、かなり多いっていうことがあるんですね。
ごみの集積場所の管理ですけれども、これはやっぱり住民どうしで話し合って解決したほうが、都合がいい問題なんですか?
行政がここが都合がいいから、ここに置きますとかっていっても、やっぱりその目の前の家の方は、あまり納得できないわけですね。
ところが、地域全体で一応、どこがいいだろうかと相談すれば、まあ、お互いさまだからしょうがないねということで解決していくわけで、やっぱりそういう地元で決めたほうがいいこととか、地元で、ある程度自分でやったほうがいいような、公的なサービスというのはやっぱりありますから、それを主体的に担うような町内会の組織というのは、あるに越したことはないというようなところで、機能してきたということですね。
きめ細かく相談できるという利点はあるんでしょうか。
それにしても先ほどの町会長さんの野口さんが、朝行くと、こんな広報紙が積まれている。
こういったことはよくあることなんですか?毎朝。
かなり、今でもいろんな地域で残ってるやり方だろうと思うんですが。
行政としては、それが一番楽ってところがあるもんですから、ついつい町会長さんに配ってくださいってことで、流してしまうわけですけど、かなり負担は大きいですよね。
ですから、あまり安易に引き受けたり、任したりはしないほうがいいと思いますけどね。
それにしても、この加入率が、ずっと低下傾向にある、その理由はどう見てらっしゃいますか?
これはやっぱり、基本的に公的な、全戸加入という前提の団体ですので、公的なみんなが納得することしかできないわけで、そういうことってのは、みんなやっぱり誰かがやってくれれば、自分、やりたくないというようなところがあるわけですね。
そうすると、どうしても、誰かがやってくれるなら、誰も関心を持たないようになっていくというところがあって、そういうふうなところで、かつては目に見える形で、町内会が必要だっていうような事情がいろいろあったわけですけど、今は行政サービスもそれなりに整ってきましたから、そういうこともなくなってくると。
そうするとやっぱり一般の人にとっては、全部任せておいたほうがいいし、わざわざそういう町会に入る必要はないんじゃないのということになりがちだということですね。
そういうところから、どんどん減ってくってことが1つあるのと、あとはやっぱりマンションとかが出来ていくと、なかなかそこに勧誘に行くといいますかね、理解してもらって、説明してもらって、協力してもらうってことをするだけの力がちょっと、町内会のほうにも、高齢化によって、なくなってきたという事情もあるんだと思います。
仕事が増える一方で、担い手の不足、そして加入率の低下、そうした中で、町内会は何をどこまでやればいいのか。
模索する動きが始まっています。
従来の町内会の役割を根本的に見直そうという動きが始まっています。
福岡市の団地に住む神谷貴行さん。
260世帯が住む団地で町内会が担っていた業務を洗い出しました。
書き出してもらうと行政との会議や委員会への出席など30近い仕事がありました。
神谷さんは住民たちと話し合いそのほとんどの業務をやめることにしたのです。
1世帯当たり年間4000円だった町内会費もゼロに。
必要に応じて住民から寄付を募ることにしたのです。
こうして業務をスリム化する一方これまで先送りしていた問題に取り組みました。
それは…。
団地内で放置されていた100台以上の自転車です。
誰もが気になっていたものの2年近く、手付かずのままでした。
早速行われた撤去作業。
参加は強制ではなく住民の自主性に委ねました。
すると、小学生から85歳の女性まで12人が集まりました。
住民の間には自主性に任せるだけでさまざまな問題に対処し切れるのか不安の声もあります。
しかし、神谷さんは本当に必要なことには人が集まると考えています。
一方で、従来の町内会の枠にとどまらない新たな仕組み作りが動き出しています。
人口増加率が全国トップクラスの川崎市武蔵小杉地区です。
タワーマンションの建設ラッシュが続く中古くから住む人たちは新たな住民との連携に危機感を抱いていました。
どうすれば地域のつながりを強化できるか。
そこで考え出されたのが従来の町内会もマンションの住民も加わる新たな組織NPO法人の設立でした。
その仕組みです。
地元町内会や商店街、そして新築マンションの管理組合からそれぞれ役員を選び出して法人の運営メンバーに入ってもらいます。
任意団体の町内会ではなく法人となったことで信用力がアップ。
地元企業などからの補助金が得やすくなりました。
ことし7月には武蔵小杉の駅前エリアで実に20年ぶりに盆踊りが復活。
NPO法人の呼びかけに応じ地元の商店や企業がサポートしました。
古くからの住民とタワーマンションの住民が同じ地域の一員として交流を深める貴重な機会となりました。
さらにNPO法人では煩雑な事務作業を行う専門のスタッフを雇用。
こうすることで忙しい現役世代が地域のイベントの企画や運営に専念できるようになりました。
いろいろな取り組みありましたけれども、町内会の仕事を見直して、思い切って減らしたケース。
これはどう?
ある意味では、本来の姿ですよね。
基本的に行政じゃないわけですから、やっぱり自発的にできることをやるっていうのが、民間の組織としての当然のことですので、やっぱり先ほど言ったように、住民どうしでトラブルになるぐらいだったら、みんなで相談して、減らしていくということが大事だと思いますね。
ただ、行政からすると、やってほしい仕事もやっぱりあるわけですよね。
ですから、そのへん、担い手不足というのは、町会の中にはあるんですが、それ以外の形で、テーマ別の団体とかで、いろいろ協力したいっていう人も出てきてますから、そういう人にも活躍していただくということも、行政としては考えるようになっていて、最近では行政の専門の常駐職員といいますかね、それ用の地域担当職員みたいのを置いて、そういうコーディネートをしてという場合出てきてますね。
町内会が弱体化、形骸化する中で、コミュニティーとして何をその地域でやるべきか、やらないか、そういったことを決めていくのは、一体誰がすべきなのか、町内会はむしろ、義務化したほうがいいんではないかという声も聞かれたりもするんですけど、どう見たらいいんですか?
町内会そのものを義務化するというのは、むしろ今まで、納得してみんなでやろうとしたものを台なしにしてしまいますから、全部、行政の組織にするならいいですけど、そうじゃないんだったら、やっぱりちょっとそれは難しいなっていうのが一つあって、問題はどこで決めるかなんですけれども、かつては町内会にそれなりに浸透してましたから、そこで決めるなり、あるいは町内会を中心とした住民組織で決めるということができたんですが、だんだんやっぱり町内会が難しくなってくると、これはある意味では行政が責任を持ってそういう場を作って、で、市民が全員参加して、そこでどういうふうにするかということを決めていくってことも必要になってくるし、最後のNPOの例は、そういう意味では、一つの試みとして、興味深いと思いますね。
NPO法人を作ったほうが、行政と向き合うときに、有利ではないかと見られているんですか?
行政が直接作ると、やっぱり行政主導になってしまうところありますから、むしろ民間として、NPO団体でみんなを結集して、それで行政ときちっと対等に話し合うってことができると、そのほうがいいでしょうね。
町内会があることがいわば当たり前になっていたこの日本で、国際的に見ると、日本の独特のシステムで、今、評価が高まりつつある。
改めてなぜ必要なのか、どうしてその機能が大事なのかっていうのを、どう捉えたらいいんでしょうか?
欧米なんかは、全部税金で、行政がやるってことが当然と考えられてたわけですけど、これがだんだん難しいと、いろんな地元でやったほうがいいような仕事が多いということになって、それがだんだん分かってきたわけですね。
ですから欧米でもそういう所でネイバーフッド・アソシエーションという形で、全戸加入ではないですけど、対応するという動きも出てきてますし、そういう形で、行政と住民が共に問題を解決していくと。
それを協議して決めていくという、そういう仕組みが、わりと今、どこの国でも求められるようになってきているということですね。
特に大災害が起きたとき、いざというときは。
いざというときに、やっぱりそういう受け皿があるってことは非常に重要ですから、それを維持することは意味があると思います。
(土橋)あれ?
(西室)あれ?あれ?2015/11/05(木) 01:00〜01:26
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「町内会が消える?〜どうする 地域のつながり〜」[字][再]
全国で加入率が低下している町内会。担い手不足が深刻化する一方で期待される役割は増え、住民同士の係争も起きている。各地の現状と課題を通じ、町内会のあり方を考える。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】首都大学東京教授…玉野和志,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】首都大学東京教授…玉野和志,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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