岩渕⇒ヘリコプターからの素早い降下。
荒れ狂う海での海難救助。
創設から、ちょうど40年。
記念の式典には歴代の隊員たちも顔をそろえました。
自分が潜っていって抱えてあげたら大の男が男泣きして助かったって言ってくれるねそういうときが感動しますね。
きょうは海難救助のスペシャリスト映画「海猿」にも登場した海上保安庁・特殊救難隊についてお伝えします。
生字幕放送でお伝えしますこんにちは、10時5分「くらしきらり解説」です。
きょうの担当は津屋尚解説委員です。
特殊救難隊というのはどんな人たちなんでしょうか。
津屋⇒特殊救難隊は全国に1万3000人いる海上保安官のうち僅か36人の精鋭なんです。
全員が東京の羽田を拠点にしていましてそこから飛行機で全国に緊急展開して活動するわけです。
そして40年間で救助した人の数は2500人に上っています。
われわれができないというふうに判断した場合われわれ以外に対応できる部隊がいない。
最後の砦
(とりで)として要救助者が1%でも生きている助かる可能性があるのであればわれわれは、ただただ全力で対応することを考えています。
ことしの9月に茨城県常総市で鬼怒川が氾濫した際にも派遣されて孤立した住民の救出にあたりました。
夜間も活動を続けてヘリコプターを使って107人を救出したんです。
この特殊救難隊だからこそできることってどんなことですか。
例えばヘリコプターや崖の上などから1本のロープを使って高速で降下することがあります。
こちらの訓練は18mの高さから途中にある障害物を避けながら一気に降下するというものです。
着地まで僅か2秒です。
陸上の災害と違って洋上というのは、転覆船など降り立つ目標物は常に動いていますし足場もぬれていて不安定です。
ということで確実に降りるには一瞬で降りなければなりません。
少しでもタイミングを間違えれば地面に激突してしまう危険もあるんです。
難しいことなんですね。
そして特殊救難隊はみんな潜水士の出身です。
水深40mもの水中でも活動ができます。
水深40mというのは、ほとんど光が届かない闇の世界でその潜水能力は沈没した船の船内捜索などで生かされます。
また火災を起こした船の中で消火や救助作業も行うことができます。
特に大変な現場で活動するわけですね。
いろんな能力を兼ね備えているんですね。
あらゆる特殊な難しい災害に対応できるということです。
特殊救難隊の訓練は非常に厳しいことで知られています。
こちらは訓練用のプールです。
高い波やヘリコプターから吹き降ろす強い風など嵐の現場を再現できるんです。
この訓練もずいぶん本格的に見えますけれども実はこれは基本動作の確認にすぎないんです。
このほかにも真冬の冷たい氷の海に潜るという訓練をしていたりあるいは滝が流れ落ちる崖をよじ登ったりする訓練もします。
厳しい大自然の中での訓練も行っているというわけです。
かなり高い身体能力がないと務まりませんね。
それに加えて隊員たちに共通して言えるのは人命救助に対する強い使命感といいますか最後まで諦めないという精神だと思うんです。
それが発揮された救助の実例があります。
平成16年10月航海訓練所の練習船・海王丸が台風23号の強風に押し流されて富山港の防波堤に座礁したんです。
巨大な波が次々に打ちつけまして船内には実習生と乗組員合わせて167人が取り残されてしまったんです。
特殊救難隊はヘリコプターで現場上空に到着しましたが風速25mを超える暴風が吹き荒れてヘリコプターで上空にとどまることすら難しい状況でした。
荒波、ものすごくエネルギーのある力の波が甲板上デッキのほうまで押し寄せている状況でした。
この中で救助作業というのはほぼ不可能に近いような状況ではないかなと。
いったん現場を離れようとしたとき甲板上に乗組員3人の姿を発見しました。
いつ波にさらわれてもおかしくない状況でしたので隊員たちは一刻を争う事態だと判断して危険を承知で即座にロープで降下することを決断しました。
非常に大きな困難が待ち受けていました。
マストからいくつものロープやケーブルが出ています。
ここを強い風が吹きつける中でマストのロープをよけながら針の穴を通すような精密さで降下しなければならなかったんです。
絡まってしまったら降りられませんね。
1人目の隊員が降下を開始しました。
マストの中ほどにあった僅かなスペースになんとか足をつけて衰弱しきっていた乗組員のところにようやくたどり着きました。
赤い丸のところが乗組員のところですね。
そうですね、隊員です。
そのあと一段と大きな波が船を飲み込んでしまったんです。
こうした大波と格闘しながらも、乗組員を危険な甲板上からヘリコプターで救出しました。
そして強風が少し弱まって陸側からの救助体制も徐々に整ってきますと防波堤から今度は船に渡したロープを使って別の隊員が船に移りました。
160人以上が残されていた船室内も浸水がひどくで危険な状態だったんです。
時間とのたたかいでしたが特殊救難隊員は冷静にロープを使って実習生たちを1人ずつ脱出させていきました。
救助開始から、およそ7時間後167人、全員の救出に成功したんです。
すぐ諦めたらたぶんだめだと思います。
今できることは本当にないのかと考えて考えて考え抜いてなんとか本当にどんな状況でも頑張っていけば少しずつ突破口は見えてくると。
救難隊自身も相当に危険な状況ですからかなり強い使命感がないとできないことですね。
特殊救難隊は世界のレスキュー関係者も注目するある記録を持っています。
何だか分かりますか。
何でしょうか。
40年間、殉職者がゼロです。
日頃から危険と隣り合わせの任務にあたりながらゼロというのは驚くべきことです。
どうしてこういうことができるんですか。
多くの経験者に話を聞いて多かった答えは自分の限界を知っているというものです。
日頃の訓練は気絶する隊員が出るくらい非常に厳しいわけなんですが、そうした訓練を通じて自分たちの限界が体にしみついているということです。
助けたいという熱意だけで突っ込んでいってしまうということはしないで常に冷静に状況を判断する。
そして限界を知っていることで逆に持てる能力を最大限発揮して、救助にあたることができるんです。
ただ、ぎりぎりの救助の現場では特殊救難隊であっても救うことができない命も実際には多いという現実もあります。
ただ多くのこうした悲惨な現場を目の当たりにしているからこそ逆に1%でも可能性があるなら絶対に救いたいんだという強い思いにつながっているのではないかと思います。
今週の月曜日、訓練を積んできた5人の新人たちが正式に特殊救難隊員に任命されました。
若い隊員たちには海難現場で絶望のふちにいる人たちの希望の光になってほしいそのように海上保安庁の幹部は話していました。
これからも頑張ってほしいですね。
料理家の栗原はるみさん。
2015/11/06(金) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「海難救助“最後の砦(とりで)”〜40年の軌跡〜」[字]
NHK解説委員…津屋尚,【司会】岩渕梢
詳細情報
出演者
【出演】NHK解説委員…津屋尚,【司会】岩渕梢
ジャンル :
ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:31193(0x79D9)