上方落語の会 ▽「阿弥陀池」笑福亭生寿▽笑福亭松之助インタビュー 2015.11.06


今日はこのあと落語も演じて頂きます明石家のんきさんに来て頂いてます。
どうぞよろしくお願いします。
明石家のんきでございます。
実はね前回に引き続きまして上方落語界のレジェンド笑福亭松之助師匠のインタビューをお届けするんですけどもその聞き手というのがこちらののんきさんです。
いかがでした?いや「いかがでした」…。
大変でしたわもう!父親いうてもね芸人の先輩ですやん。
後輩に負けじと親子であろうが何であろうが…。
もう僕いじめられた形ですほんま。
大変でした。
お楽しみに。
まずその前に笑福亭生寿さんとこちらの明石家のんき師匠の落語2席続けてお聴き下さい。
ではどうぞ。

(拍手)え〜ありがとうございます。
ただいまより開演っていう事でございましてまずは出てまいりました笑福亭生寿からどうぞよろしくお願い致しますが。
あちらに名前が出てございますが生きるに寿と書いて生寿なんですね。
この字ですとよく「生寿さんですか」って呼んで頂くんですが間違いでございまして。
生寿さんよくあるんですね。
この間ある人に「すいません生寿さ〜ん」って呼ばれましたり前に変わった方が「すいません生寿さ〜ん」と呼ばはりましてそう読む方が難しいやろと思うたんですが。
生寿です。
どうぞ顔と名前と覚えて頂きまして私のところもしばらくの間おつきあいを願う訳ですけども。
え〜私がですね今で落語家になりまして8年半を過ぎたところ9年目というキャリアでございましてまだまだ若手で頑張っていかなあかんなと思てるんですけども今ですね大阪の落語家がざっくり250人ほどおりましてで私が大体上から順番に数えていって200番目ぐらいなんでございます。
(笑い)随分上にまだずらっといらっしゃるんですがそれでも後輩が50人いてるんでございますよ。
9年目にもかかわらず。
で250人いてて私が200番目ですからつまり2割はもう後輩になる訳ですね。
そないいらんのですけどね後輩。
まあ私も上の師匠にそう思われてるかもしれませんが。
でなぜ私のキャリア以降…私2007年入門なんですけどもそれ以降噺家が随分増えてるかといいますと私2007年の2月に入門致しましてその前の年の2006年の9月に天満天神繁昌亭という寄席がオープン致しましてで随分上方落語注目されるようになりまして。
でまた時を同じくしてですね「ちりとてちん」というすばらしいドラマが放送されましてね。
まことにすばらしいという。
別にそこまで露骨にゴマすらんでええんですけども。
そんな影響もありまして随分と落語家が増えたというふうな事です。
でまあ若手も随分増えてますからね仕事をこう奪い合いなんかをしてる訳でございます。
そん中で一生懸命やらないかんなあっていうのでいろんなネタを皆それぞれに覚えてやる訳でございますが今日私は「阿弥陀池」というネタをさせて頂きますがこの「阿弥陀池」という噺はですね私は…噺家入門して最初3年間内弟子修業という期間があるんですがその修業中に私の師匠生喬にいろんな噺をつけて頂きましてその3年間の最後につけて頂いたネタなんでございますね。
でうちの師匠から丸3年たつその日に「この『阿弥陀池』をネタ下ろししなさい。
もし失敗するような事があったら1年延長」というふうに脅されましてですね。
でまあ試験を受けたんですけど無事合格致しまして延長する事なく3年で修業が終わったというちょっと思い出深いネタなんですけども。
今日もまあ失敗をしないように最後までしっかりやりたいなと思うております。
私の方でお楽しみに聴いて頂く訳ですけども。
「え〜こんにちは」。
「はい」。
「さいなら」。
「ちょっと待ちなはれ。
『こんにちは』ちゅうて入ってきて急に『さいなら』なんてそんな気の悪い事すんのやないがな」。
「『気の悪い事すな』ちゅうたらあんたこそしなはんな」。
「おう?わしが何をしたんや」。
「そうでんがな。
わたい今入ってきたらあんたなんぞ食べてなはったんや。
でわたいに見つかってこらいかんと思てその横手の新聞の下ゴソゴソ〜ッと隠しなはったやろ」。
「誰がそんな事すんねんな。
わしは今新聞を読んでたんや」。
「えっあんた新聞読んでましたん?」。
「そうやがな」。
「だいぶと変わってますな」。
「何が?」。
「『何が?』て新聞ちゅうたらげたや弁当包むもん」。
「お前が変わってんねやがな。
新聞読んでたら世の中の事が何でも分かるっちゅうねん」。
「おっそれやったらねわたい新聞読んでぇしまへんけどこの世の中の事やったら何でも分かりますえ」。
「ふ〜んそうかいな。
ほなお前にちょっと尋ねるがお前さん確かこの大阪の人間やったな」。
「ええ。
生まれも育ちも大阪でっせ」。
「ほななこの大阪に和光寺という寺があるのを知ってるか?」。
「和光寺!知らん」。
「いきなり知らんねやがな」。
「確かお前といっぺん一緒に行た事あるで。
植木市冷やかした帰りにすまんだで一杯飲んだ事があったやろ」。
「あれやったら確か阿弥陀池」。
「そうそうそう。
ふだんは阿弥陀池というがほんまの名前は和光寺ちゅうねん」。
「阿弥陀池は芸名ですか?」。
「芸名ちゅうやつがあるかいな。
あの寺は庵寺や」。
「えっあん寺?甘い?」。
「甘いねやない。
女の坊さん尼というねん」。
「男の坊さん西宮」。
「そなアホな事言うかいな。
そこへなこの間盗人が入ったんや」。
「えっ盗人入りましたん?」。
「そうやがな。
尼はんに金を出せちゅうてピストルを突きつけてな」。
「尼はんびっくりしましたやろな」。
「いやいや和光寺ぐらいの尼はんになると胆が据わってる。
せきも慌てもせんな。
盗人の前でぐっと着物を広げると乳を出した」。
「ワハハ!盗人大喜び」。
「お前とは違うわいな。
『私の夫山本大尉は過ぎし日露の戦いでこの乳の下を一発のもとに撃ち抜かれ名誉の戦死を遂げました。
私も死ぬのであれば夫と同じ所を撃たれて死にたい』。
さあ過たずここを撃てと。
これ聞くなり盗人持ってたピストル下へ落として3尺下がって土下座しよった。
『私はあの戦争の折山本大尉には一方ならぬご恩を受けました。
その奥方に銃口を向けるとはなんたる不始末』。
そのピストルで自分の喉元を撃とうとするさかいそれを尼はんがすっとお止めになられて『心の底から改心したのであれば善人も悪人もない。
あなたも根から悪い人やないのやさかい死ぬ事はならん。
誰ぞに唆されて来なはったんやろ。
誰が行けと言うたんや?』ちゅうたら『へえ。
阿弥陀が行けと言いました』。
よう出来てるやろ?」。
「何ですか。
にわかでっか?いやわたいほんまの話やと思て聞いてまんがな」。
「せやさかい新聞を読めちゅうにやな。
新聞を読んでたらやで『いやいやそんな事は書いてまへんでしたで』とこう言えんのやないかいな。
お前さんなこの世の中の事はおろか町内の事も何も分かってない」。
「ちょっと待っておくんなはれ。
わたいこの町内の事やったらどこの猫が何匹子を産んだちゅうのまで分かってますで」。
「ふ〜んそうかいな。
ほなちょっと尋ねるがゆんべその西の辻の米屋盗人入ったの知ってるか?」。
「えっ西の辻の米屋あそこ盗人入りましたの?」。
「ほれ見てみぃな。
今度はなピストルやないで。
長い抜き身をぶら下げて金を出せちゅうておやっさんに突きつけてな」。
「おやっさんびっくりしましたやろな」。
「なかなか。
おやっさんびっくりすると思いの外腕に覚えがある。
何でも若い時分に柔道の修行をしてやわらの心得がある。
これがいかんがな。
昔からよう言うやろ。
『生兵法は大怪我のもと』ちゅうやっちゃ。
盗人がさっと斬り込んできたところをおやっさんこうぱっと体をかわした。
盗人がトントント〜ンと泳いださかいおやっさん腕をつかんで肩へ担いで土間へど〜んと投げつけた。
盗人があおむけにひっくり返ってるところをおやっさん上からぐっと四つばいに押さえ込んで刀が横手にチャリンと飛んでるのを見て安心して手で縄を探ってるとこの盗人抜かりがないがな。
懐からかねて用意のあいくち出すと下からおやっさんの心臓をブツッ!『あっ』ちゅうたらこの世の別れ。
おやっさん死んでもた」。
「えっおやっさん死にました?」。
「そうやがな。
またこの盗人むごたらしいやっちゃ。
死んでるおやっさんの首をかき落としてそばにあった糠の桶へ放り込んで逃げていまだに捕まらん。
お前この話聞いたか?」。
「聞かん」。
「聞かんはずや糠に首」。
「またにわかでっか?わたいほんまの話思て手に汗握って聞いてまんのに」。
「せやさかい新聞を読めちゅうねやがな」。
「この間そこの豆腐屋に…」。
「いやもうよろしいわもう。
こんなん聞いてたらなんぼだまされるや分からん。
さいなら」。
「おうちょっと待ちぃな。
まだ『年寄りの冷ややっこ』ちゅうのがあんねんで」。
「いりまへんわほんまに。
何が『年寄りの冷ややっこ』やほんま。
ちょっと気になるなあ。
どんな話やったんやろな。
聞いといたらよかった。
しかし何や言うてたで。
『死んでるおやっさんの首をかき落としてそばにあった糠の桶へ放り込んで逃げていまだに捕まらん。
この話聞いたか?』。
『聞かん』。
『聞かんはずや糠に首』。
おもろいな。
ちょっと誰ぞに試したなってくるな。
誰んとこ行たろ。
せやまっちゃんとこ行たろな。
あいつな日頃からわいの事アホやバカや抜かしよるさかい今日はこれポンポンとかましてびっくりさしたろ。
おうまっちゃんいてるか?」。
「え?何や誰やと思たら町内のアホやないかい」。
「いきなりやがな。
おい何かしたかね。
お前知ってるか?」。
「何が?」。
「いや聞いたか?」。
「どないしてんな」。
「ゆんべなこの西の辻の米屋盗人入ったん知ってるか?」。
「え!何か?西の辻の米屋あそこ盗人入った?」。
「お前かかるぞ」。
「何の話や?」。
「いやいやこっちの話。
盗人なあれやなまずなこの長〜いもん長〜いもん長〜いもんをブラブラ〜ブラブラ〜ッとぶら下げて入ったんや」。
「何か?その盗人ふんどしすんのを忘れたん?」。
「言うやろがな」。
「それ言うなら『長い抜き身をぶら下げて』と違うか?」。
「え〜そうそうそうそうそうそう。
でおやっさんに金を出せちゅうて突きつけた。
おやっさんびっくりすると思いの外なかなか腕がうろ覚えや」。
(笑い)「うろ覚えはお前やないかい。
『腕に覚えがある』」。
「え〜そうそうそうそうそうそう。
何でもおやっさんな若い時分に十三で軟らかい餅食い過ぎて『あ〜苦しい苦しい』」。
(笑い)「『柔道の修行をしてやわらの心得がある』」。
「え〜そうそうそうそうそうそう。
お前何でもよう知ってるなあ。
ところがこれがいかんがな。
昔からよう言うやろ?生びょうたんは青びょうたん。
違う。
言うやろお前。
生麦生米生卵」。
「早口言葉か?」。
「え〜あの言うやろがな」。
「『生兵法は大怪我のもと』」。
「そのもとそのもとな。
盗人がさっと斬り込んできたらおやっさんがぱっとっ!かわした。
こうかわした」。
「何をや?」。
「こうかわすねんかわすねん」。
「せやさかい何をかわしてん」。
「ほらあれや…そうそう。
西宮をかわした」。
(笑い)「お前西宮どないしてかわすねんな」。
「い〜や別になもう西宮やのうても堀川でも今宮でも何でもええねや」。
「え?西宮堀川今宮ちゅうたらほうえべっさんか?」。
「えべっさ〜ん!いやいや。
そのえべっさんが手に持ってるもんや」。
「魚釣りざおか?」。
「魚釣りざお〜!いやいや。
その魚釣りざおの先」。
「てぐすか?」。
「てぐすの先」。
「浮きか?」。
「浮きの先」。
「針か?」。
「針針針針。
針の先についてるもんや」。
「餌か?」。
「餌〜!いやいや餌やなしにその餌に食らいついてる赤い大きな魚は何ですか?」。
「タイか?」。
「そう体をかわした」。
「アホかお前は。
体かわすのに人西宮まで連れていくやつがあるかいな」。
「盗人がトントント〜ンと泳いださかいおやっさん腕をつかんで肩へ担いで土間へど〜んと投げつけた。
でおやっさん夜ばいに行たんや」。
「何でやねん。
何でそないなるねん。
四つばいやろ」。
「あ〜四つばい四つばいな。
刀が横手にチャリンと飛んでるのを見て安心して手で縄を探ってるとこの盗人抜かりがないがな。
懐からかねて用意のがまぐち出して『おっちゃんこれなんぼ?』。
違う。
薄口濃い口辛口」。
「あいくち」。
「あ〜あいくちあいくちな。
あいくちで下からおやっさんのしんねこをプツッ。
いやしんねこやない。
しん犬。
しんトラ。
しんカバ?いや長い動物いてるやろ」。
「キリンか?」。
「しんキリン。
せやないせやない。
首やない首やない。
鼻の長いやっちゃ」。
「天狗か?」。
「しん天狗。
何でやねん。
せやなしにな鼻が長うて鼻が長うて耳が大きいての〜しの〜しの〜しと歩いて『パオ〜ン!パオ〜ン!』て鳴く動物いてるやろ」。
「知らんなあ」。
「ゾウやないかい!」。
「分かってんのやったら最初から言わんかい」。
「やかあしやお前。
しんゾウ心臓。
ああしんぞう」。
「聞いてるこっちがしんどいわ」。
「『あっ』ちゅうたらこの世の別れ。
おやっさん死んでもた。
またこの盗人むごたらしいやっちゃ。
死んでるおやっさんの首をかき落としそばにあった糠の桶へ放り込んで逃げていまだに捕まらん。
お前この話聞いたか?」。
「聞いた」。
「聞いたはずや。
糠は毎日かき混ぜて…。
え?いやこの話聞いたか?」。
「聞いた」。
「聞いた?聞いたってお前誰に聞いたんや」。
「今お前に聞いたがな」。
「聞いたん。
ふ〜ん…。
さいなら」。
「何しに来よったんやあいつは」。
「『聞いたか?』ちゅうたら『聞いた』抜かしやがんねん。
『この話聞いたか?』。
『聞かん』。
『聞かんはずや糠に首』。
ウエ〜ッと笑うのにちょっとも分かっとれへんな。
ほんな事やからあいつ友達少ないのや。
う〜んあかんあかん。
このままでは収まりつかん。
もう一人誰のとこ行たろ。
せやよっさんとこ行たろな。
あいつやったらええやつやさかいかかってくれるわ。
よしよっさんとこ行たろ。
おいよっさんいてるか?」。
「お〜誰やと思たらお前かいな。
久しぶりやな。
まあまあこっち上がってそこ座りいな」。
「お前知ってるか?」。
「何が?」。
「聞いたか?」。
「どないしてえな」。
「ゆんべなこの西の辻の米屋盗人入ったん知ってるか?」。
「ちょっと待ちぃな。
この西の辻に米屋なんかないで」。
「え?あっしもた!これ隣町まで来てんねやがな。
えらいとこまで来てしもた。
いやあのほな東の辻」。
「ないな」。
「北の辻」。
「ないで」。
「北北西」。
「んなもんがあるかいな。
何か?お前米屋探してんのんか?」。
「いや別に米屋探してるっちゅう訳やないねんけどな。
この辺米屋ないの?」。
「やっぱり探してんねやがな。
それやったらなここずっと南行たとこに米政っちゅう大きな米屋があるで」。
「米政米政な。
ゆんべその米政に盗人が入ったんや。
おやっさんに金を出せちゅうて長い抜き身を突きつけた。
おやっさんびっくりすると思いの外なかなか腕に覚えがある。
なんでも若い時分に柔道の修行をしてやわらの心得がある。
これがいかんがな。
昔からよう言うやろ?『生兵法は大怪我のもと』ちゅうやっちゃ。
盗人がさっと斬り込んできたところをおやっさんぱっとっ!体をかわした。
盗人がトントント〜ンと泳いださかいおやっさん腕をつかんで肩へ担いで土間へど〜んと投げつけた」。
「ちょっと待ちぃな。
向こうのおやっさん3年前から病気で寝たきりやで」。
「寝たきり…。
ほな息子がいるやろ」。
「いるな」。
「息子息子。
な!息子が腕をつかんで肩へ担いで土間へど〜んと」。
「今年2つやで」。
「2つ…。
ちょっと待ちぃな。
何でお前何でお前3年前から中風で寝たきりのおやっさんに今年2つの子どもがいてんの?おかしいやないかい」。
「知らんがなそんなもん」。
「え〜米屋にな腕の立つ若い男一人ぐらいいてるやろ」。
「それやったらな田舎から出てきたよねやんっちゅうのがいてるで」。
「よねやん!よねやんがこう肩へ担いで土間へど〜んと投げつけた。
盗人があおむけにひっくり返ってるところをよねやん上からぐっと四つばいに押さえ込んで刀が横手にチャリンと飛んでるのを見て安心してこう手で縄を探ってるとこの盗人抜かりがないがな。
懐からかねて用意のあいくち出すと下からよねやんの心臓をプツッ!『あっ』ちゅうたらこの世の別れ。
よねやん死んでもた。
またこの盗人むごたらしいやっちゃ。
死んでるよねやんの首をかき落としてそばにあった糠の桶へ放り込んで逃げていまだに捕まらん。
お前この話…この話聞いたか!」。
「よう教えてくれた。
よう教えてくれた。
おいかか。
泣いてる場合やあれへんがな。
お前な今すぐ田舎に電報打て。
わし米政行て話してくる!」。
「あら?ちょっと様子がおかしいけど…。
あの一体どないした?」。
「どないしたもこないしたもあるか。
その殺されたよねやんっちゅうのはうちのかかの実の弟や」。
「え〜!」。
「せやさかい呉服屋奉公さしとけちゅうたのにお前が米屋の方が食いっぱぐれがのうてええとか言うさかいこんな事んなった…。
今更そんなん言うたかてしゃあない。
お前な今すぐ田舎に電報打て。
わし米政行て話してくる」。
「行たらあかん。
行たらあか〜ん。
駄目…。
うそやがなうそ。
何でこないなんねん」。
「うそ?うそてお前どういうこっちゃ」。
「いや怒りないな。
違うねん違うねん。
『この話聞いたか?』。
『聞かん』。
『聞かんはずや糠に首』。
ウエ〜ッと笑おう思て」。
「笑えるかいな。
実の弟殺されて何の笑い話なんねんこれ。
分かった。
どうせこんな事己一人の知恵では思いつかん。
誰ぞにケツかかれて来たんやろ。
誰が行けちゅうたんじゃ?」。
「あっそれやったら阿弥陀が行けちゅうたんや」。
(拍手)
(拍手)
(拍手)え〜出番まで長い事待たされてつい楽屋でうたた寝してしまいましてな。
で今さっき「のんきさん出番です。
はよ出なはれ〜」言うて慌てて出てきたもんですさかいすんません今日寝癖のままで落語さして頂きます。
(笑い)あ〜よかった。
やった受けたがなこれ。
よかった。
受けへんかったらグレたろ思うてたんですけども。
私の方も一席おつきあい願いたいと思いますけども。
え〜師匠から習いました落語一席。
面白くなかったらこら師匠の責任でございましてね。
(笑い)いやいや「アハハ!」やないの。
おもろなかったら師匠に尻拭いして頂きまして面白かったらこらもう私の実力という事でございますので。
わがままのんきの落語おつきあい願いたいと思いますが。
「こんにちは」。
「おうおうお前さんかいな。
まあまあこっち入んなはれ」。
「ええどうもおおきに。
ハハハハ!アッハハハハ!」。
「何を笑てんねんな」。
「いや違いまんねん。
もうちょっとでえらい目に遭うとこでした」。
「何やどないしてんな」。
「こないだあんたに『人間はいろいろと始末せないかん』ちゅうて教えてもらいましたやろ」。
「おう言うたがな」。
「そん中で要らんようになった紙3遍使えると言いましたな」。
「おうおう言うた言うた。
要らんようになった紙ではなをかんでそれを乾かしてお便所へ持っていくと」。
「こりゃええ事聞いたと思て要らんようになった紙持ってお便所へ行きましたんや」。
「何?」。
「それを乾かしてはなは…かめまへんなあ」。
「当たり前やがな。
順番間違えてどないすんねんな」。
「エッヘヘ。
じんべえはんあの私この一本の扇子を10年使う方法を考えました」。
「ほうどうすんねんな」。
「扇子を半分だけ広げて5年使いますねん。
でもう半分広げて5年使うと10年なりますやろ」。
「素人の考える事やな」。
「あきまへんか?」。
「わしならこの一本の扇子を一生いや孫子の代まで使うてみせるな」。
「え〜そんな事できますか?」。
「扇子を全部広げて顔の前に持ってくるねん。
で扇子をいのかさんと顔をこういう…」。
「もし。
そんな事したら風来えしまへんで」。
「外から風の吹くのを待つのや」。
「何のための扇子や分からしまへんがな」。
「それはそうとなお前さんおかずはどないしてる?」。
「塩。
どうです?これ安上がりでっしゃろ」。
「塩か塩な。
けど塩は減るなあ」。
「いやまあそらまあ減りますけど」。
「梅干しはやった事はないのんか?」。
「あれやりましたがな。
あれもええ加減なもんですわ。
朝梅干しの皮を食べて昼に実晩に種をねぶって中の天神さんを食べても一日に1個。
こらぁ手荒いと思てやめました」。
「梅干しは食べたらあかんがな」。
「え?」。
「あれは見るもんや」。
「見るもん?初耳やがな。
いやあの梅…」。
「梅干しを皿の上へ載せて茶わんと箸を持って梅干しをじ〜っと見んねん。
あ〜これが口の中に入ってくると思うと唾が出てくる。
それをおかずにごはんをガサガサガサ」。
「情けな。
あんたそんな事ばっかりしてたら体弱まりまっせ」。
「いやいや心配せえでええ。
わしかてなたまにはおつゆの一杯も吸うてるさかい」。
「分かりました!あんたのおつゆ当てまひょか。
塩を湯か何かで薄めたような…」。
「お前さんとおんなじようにしいないな。
わしのはなほんまもんのダシが十分にとってあっておつゆの実には菜が浮いてある」。
「へえ〜お金かかってまんねんな」。
「それが一銭も要らん。
教えてあげよう。
まずこのダシのとり方やがこらぁな横町の鰹節屋へ行って『おい。
鰹節20〜30見せてもらおう。
ちょっと祝いもんで使うのでなうちのやつと相談したいねん。
すまんけどこれうちまで持ってきてもらえんやろか』。
鰹節屋が来るわ。
『家内のやついてへんがな。
わしが決めてしもうても構へんねんけども後でごちゃごちゃ言われるのもどもならん。
すまんけどこれ明日まで預からしといて』。
鰹節屋が去るわ。
後に残ったんは鰹節や。
中の1本を丸ごと引き抜いて鍋の中へ放り込んでグラグラ〜グラグラ〜。
十分にダシの出たとこを見計ろうて鰹節を引き上げて火鉢の灰の中へ埋めてしまう。
水けを吸い取らして軒下へつって乾かす。
乾いたら元どおりの鰹節やがな。
明くる日に鰹節屋が来たら『すまん。
あれからうちのやつが買うて帰ってきよったんや。
二重になってしもうて…。
またなんぞ入れ合わせさしてもらうわ』。
な?ダシはとれたやろ?」。
「えげつないでんなこれ。
え〜!いやいやまあダシのとり方分かりました。
であの〜おつゆの実…」。
「こらぁな朝手水を打ったムシロをそこのな土間にひいとくねん。
間引き菜を売りに来たら『その間引き菜皆買うけどなんぼにしてくれる?え?5円。
5円は高いけどまあええわ。
けどそれ上の方がええ菜で下の方が悪いのとちゃうか?ちょっとそのムシロの上にあけてんか。
なるほどええ菜やな。
けど5円は高いなあ。
20銭まからんか?え?何?20銭引いて4円80銭。
ただの20銭にまからんかっちゅうねん』」。
「じんべえはんそんな事言うたん。
あんた怒りましたやろ」。
「ああ。
菜をな元へパッパッと戻してツ〜ッと出ていこうとする。
それを呼び止めて『ちょちょちょ…待ちんかいな待ちんかいな。
気の短い商売人やな。
戻っといで戻っといで。
うそやうそやがな。
うそやがな。
もういっぺんあけといてあけといて。
アッハハハ!今20銭と言うたんこら冗談やがな。
ぽ〜んと張り込んで25銭』」。
「5銭増えただけでんがな」。
「今度はほんまに怒りよったな」。
「当たり前でんがな」。
「ものも言わんと菜を元へ戻してシュ〜ッと行ってしまいよった。
人間腹を立てたら損っちゅうのはここのこっちゃ。
腹立ちに紛れに菜を元へ戻したもんやさかいにムシロの上にぎょうさん菜がひっついてあんねん。
それを拾い集めただけでも2日や3日のおつゆの実には困らんなあ」。
「はあ〜!」。
「お前さんこれぐらいの事で感心してたらあかんで」。
「ちょっとだけあきれ返ってるんでございますけどもね。
え〜まあまあ。
ほかにはおまへんか?」。
「そやな。
ほなお前これはどうや?たまたまの話やがな。
こないだな住吉さんへな五銭玉2つ持って住吉さんへお参りしその帰りにちょっとした買いもんをして空のタバコ入れへタバコを詰め腹いっぱいにごはんを呼ばれて土産もんまでもろて帰ったんやがこれはどないや?」。
「何です?五銭玉2つで住吉さんへお参りしてその帰りにちょっとした買いもんをし空のタバコ入れへタバコを詰め腹いっぱいにごはん呼ばれて土産もんまで!そんな事五銭玉2つでできますか?」。
「できんねや。
おさい銭これあげるべきもんやがあげ方がある。
まず住吉さんの末社行ってなさい銭箱の縁に五銭玉1枚載せんねん。
放り込んだらあかんで。
何もなれへんさかいに。
ほんで拝むだけ拝んだらお下がりを頂戴しますって言うてこの五銭玉を持って次行く。
その次もまたその次もまたとおんなじように拝んで回って今度は最後にな本社の大きなさい銭箱にぽ〜んと放り込んどいて『皆さんでお分け願います』。
こう言うねん」。
「なるほど皆さんでね」。
「そう言うといたら寄り合いの時にな皆で分けはるやろ」。
「ほんで残りの残りの五銭玉はどう…」。
「急ぎないな。
住吉さんの裏手へ出ると駄菓子屋がある。
そこでアメを5銭で買うた。
ふと見ると子どもが4〜5人遊んでるわ。
その中でなるだけしつけの行き届いたええとこの子どもらしいのに『ぼんこれあげまひょ』。
渡した。
しつけがええさかいうち持って見せに帰るわ。
そこへわしが通りかかると『あっあのおっちゃんや』。
親はほっとかれんさかい礼の一つも言うてくるわ。
『まあうちの子どもが…』。
『いやいや。
えっあっそうですか。
ほなちょっと一服さしてもらいますわ』。
タバコ盆とお茶と茶菓子を出してくれた」。
「へえ〜」。
「でいろいろ世間話をしてやな空のタバコ入れをこう出して『しもた〜。
タバコ切らしてしもうてるがな。
この辺にタバコ屋は?』と立ち上がりかけると『こんなんでよかったらどうぞ』と出してくれたさかいそれを吸うた」。
「へえ〜」。
「でまあお茶のお代わりをして母親が台所に行ってる隙にやなその空のタバコ入れへそのタバコをこう詰めてやなそれは懐へ」。
「入れてしまいまんの?考えてまんな」。
「でまあ茶を飲んでは一服し一服しては茶を飲む。
そうこうしているうちに亭主が帰ってきた。
『まああなた様からもお礼を申し上げて下さいな。
こちらさんからうちの子どもがえらいええもんをもらいましたんやわ』」。
「ええもんて5銭のアメ玉でんがな」。
「亭主はそんな事知らんがな。
『うちのせがれが…』。
『いやいやそんな大したもんやおまへんねん。
けど今も言うてたんですけどうちの子どもなんか人さんから物もろうてみなはれ。
物を礼も言わんと口へポイですわ。
お宅さんとこはちゃんとしつけが行き届いてこないして見せに帰って本当に賢いぼんぼんで』。
子どもを褒められて喜ばん親はないわな」。
「そりゃそうですがな」。
「『おい何をしてんねんな。
気が利かん。
もうお昼回ってるやないかいな。
こちらさんにお茶漬けでも出してあげんかいな』」。
「うまい事いきまんなあ」。
「でまあ腹いっぱいにごはんを呼ばれてやなさて土産の段取り」。
「土産の段取り…。
これはどないやねん」。
「これはね相手に見えるような見えへんようなしかたでお膳の下で漬物を包みかけると『あっどうぞそのまま』。
『あっえらいとこがお目に留まりまして…。
これお宅で漬けなはったん?そうでっしゃろなあ。
まあうちのやつも漬けるんですがこないおいしい事おまへん。
今日はこれを持って帰っておい漬物っちゅうのはこういうふうにして漬けんのじゃ言うて頂かしたろと思いまして』。
『まあまあそれやったらうちにぎょうさんございます。
これお清。
こちらさんにお漬物2〜3本お包みして』。
土産が出来たやろ」。
「うわ〜恐れ入りました。
いや〜しかしなんな始末というのはなかなか手の込んだ難しいもんでんな。
今まで話聞きましたけどあの〜何です?始末というたらこれっちゅう極意みたいなもんは…」。
「ある。
始末には肝心要これという極意がある」。
「それひとつ教えてもらえまへんか?」。
「よっしゃ。
教えてあげるけどな日が暮れてからもういっぺん出ておいで」。
「分かりました。
ほないっぺん帰らして頂きます」。
日が暮れになりますと表の戸をば…。
「もしもしじんべえはん。
開けとくなはれ。
もし。
ほれ。
じんべえはん…」。
「やかましいなもう。
鍵はかかってないさかいに開けて入っといで。
ガタガタさしな。
戸がちびる。
そ〜っと持ち上げて入ってくるのや」。
「えらい難しいでんな。
こんばんは…。
あれ?真っ暗やがな。
あの〜明かりは?」。
「人間ってなもんはなお日ぃさんが昇ったら働いて日が沈んだらうちにじ〜っとしてたらええねん。
うちに明かりっちゅうもんはない」。
「いやまあそらまあそうでっしゃろけどね。
こない真っ暗やったらあんたどこにいてるか分かれしまへんがな」。
「それもそやな。
ほな手をたたいてあげるさかいその音を頼りに入っといで。
ええか?」。
「どや?」。
「はあはあ。
真っ暗でも何です?この目が慣れてきたらよう見えまんなこれ。
あ…あれ?じんべえはんあんた素っ裸ちゃいまっか?何で素っ裸?」。
「着物ってなもんはな人さんの前にいてる時だけ着てたらええねん。
うちにいてたらおんなじこっちゃ」。
「そらまあそうでっしゃろけどね。
あんた寒い事おまへんか?へえ分かった。
偉そうに言うてあんた座布団の下にこたつか何か隠してるやろ」。
「何を言うてんねや。
わしのこたつはな頭の上や」。
「頭の上?はあ。
何かえらい大きなもんがぶら下がってますな」。
「ああ。
漬物石のな大きいやつが荒縄でぶら下げてあんのや。
もしやあの縄が切れて漬物石が頭の上へ落ちてくると思うとわきの下から冷や汗がタラタラ」。
「命懸けでんなほんまに。
あの〜言うてた始末の極意を…」。
「あ〜教えてあげよう。
ほな表出なはれ」。
「へえへえ。
あの〜明かり…」。
「明かりはないと言うてるやろ」。
「そうかてこない真っ暗やったらげたがどこにあるや分かれしまへん」。
「そうか。
ほなその明かりがな柱に掛かってあるわ」。
「えっこれでっか?これ…。
え?これ…え?明かり?じんべえはんこれ金づちとちゃいまっか?これ何で明かりでんねん」。
「それでお前さんの目と目の間ボンッといってみ」。
「そんな事したら目から火が出る」。
「その火でげた捜し」。
「よろしわもうほんまに」。
「へえ出ました」。
「ほななそこにはしごがあるやん。
それをなその木にかけてうん上へ登り」。
「いやいやあの始末の極意を…」。
「分かってる分かってる。
はしごかけて登り。
教えたげるさかい。
登ったらその上に…うん前に木の枝があるやろ。
それしっかり持っとりや」。
「へえ。
こ…これでんな。
へえ。
持ちました」。
「しっかり持っとりや。
今はしご外すさかい」。
「ちょっと待ちなはれあんた。
わて宙ぶらりんやん。
どど…どないなります?」。
「静かにして静かに。
わしの言うとおりしたら極意教えてあげるさかい。
ええか?まず左の手離せ」。
「左の手?えらい事なってきた。
左の手…。
離しました」。
「離したな。
次は小指離せ」。
「小指?あんた下から言うだけやがな。
これえらい事なってきた…。
離しました」。
「次は紅さし指や」。
「紅さし指…。
だんだんとこれ難しくなってきて…。
離しました」。
「目つぶったらあかん。
目つぶったらあかんぞ。
しっかり目開けてんねんで。
ええか?今度は高々指離せ」。
「高々指…。
えらい事になってきた。
離しました」。
「次は人さし指や」。
「人さし指…人…ってこんなもん離すんかいな。
いやじんべえはんこ…これよう離さん」。
「それよう離さんか?」。
「こればっかりはよう離さん」。
「離すなよ。
これ離さんのが始末の極意や」。
(拍手)落語2席お楽しみ頂きました。
さて後半は前回に引き続きまして笑福亭松之助師匠のさまざまな方とのエピソードまたは落語に対する熱い思いなどをお聞きしたいと思います。
聞き手は明石家のんきさんです。
明石家のんきでございます。
前回に続きまして父であり師匠である笑福亭松之助師匠にいろいろとインタビューしたいと思います。
お父ちゃんよろしくお願いします。
どうも。
いやそりゃそうやけど前回から気になってたんやけどこれ何?これ…これはねいっぺん何かあの〜「岸和田愚連隊」やったか…テレビドラマがあって。
映画。
その撮影に谷川いう所で家ちょっと借ってメークしたりするのに。
そこの人がこの間持ってきてくれはってん。
卒寿祝に頂いたものでございました。
ところでお父ちゃん前回もね役者さんの話いろいろ役者時代の話聞いたけど一人忘れてる。
もっと役者ですごい人。
お世話になった人。
一人。
分かった分かった。
喋々さんや。
そうそうそう。
ミヤコ喋々さん。
喋々先生。
僕は天才って聞い…。
お父ちゃん一番あの人天才やて…。
お父ちゃんは天才や思うてる。
どういうとこからして?分からん。
分からんけどうまい。
もう何もせりふとしておかしい事言わんでも笑わす事ができる。
確かにね。
いっぺんねお父ちゃんびっくりしたんはね東京の日劇へ一緒に連れてってもろてね東京は喋々さんも初めてやってん。
ほいでねその前に漫才学校でいっぺん東京宝塚劇場に出てんねんけどね。
あのあと初めて行きはった。
その時ね1回目やったら全然受けへんねん。
「おい松ちょっと来てくれ」て。
ほかの人も2人おった。
「どこが悪いと思うかな言うてくれ」言う。
けどそんな事言うてもなわしらが分かる事じゃあれへん。
そやから分からへんから黙っとってな。
まあ時間がたっていくわな。
2回目舞台出てどうなんのかなと思てたら2回目ブワ〜!日劇全部大爆笑やねん。
それ1回目と変わらへんと僕は思う訳や。
聞いてて何も変えてない。
ちょっとも変えてない訳や。
それがブワ〜!そらまあ間だけぐらい…。
けどお父ちゃんまだそんな時分分からへんまだ。
あれだけは不思議やねん。
そいで「すごいなあ」。
そらぁ一緒に行ってたお父ちゃんの先輩なんかでも「すごいなあ」言うてたもん。
それとお父ちゃんやっぱり落語家になって一番交流あったと思う僕もよう知ってるいーやんこと六代目…。
あ〜六代目松鶴?しゃあないな。
いや「しゃあないな」て…。
結構お世話になったって…。
「世話なった」言うて。
「兄貴にはよう世話なった」言うて…。
そりゃ2年で師匠が亡くなった。
やっぱり素人やからその世界分からへんやん。
何やかんや言うて仕事兄貴が取ってきてそれで連れていってくれたからね。
だから新芸座へ行くまでは世話になってるわな。
それでなるべく噺家が…。
三代目春団治君と兄貴と僕とあやめいうてた五代目の…文枝か。
その4人しかおれへんもんな。
せやから兄貴も辞めさしたらいかんし辞めてほしいない思うからやろな。
その六代目と兄弟みたいに仲よかったやん。
ああ仲ええ。
そらあのやっぱり…向こうもやっぱり…。
どういうんかな。
何か弟がいてたらしいな。
それはもうちっさい時に死んでんねんて。
それでそんなんがあるから。
あの〜噺家が欲しかったからそうしたんちゃうかな。
落語で一番好きな演目ってある?何か。
落語か…一番好き…。
まあそれか特に思い出のある…。
一番好きな…。
「寄合酒」とか…ぐらいかな。
「くっしゃみ講釈」。
それは五代目のお師匠さんの…。
五代目うちのお師匠はんのネタはちゃんと覚えとこうと思たからな。
そら一生懸命やって…。
僕は稽古してないよ。
え?稽古してもろうてないねんで。
全部横で袖で見てて覚えたやつやで。
だから手の動きも皆覚えてるのよ。
それを誰か向こうの弟子に言うてたらしいで。
「くっしゃみ」か何か「尻餅」か何かでも「おい見てみろ。
これなこの松がやってんのあれはうちのおやじそっくりやねん。
よう見とけ」て言うたらしいけどな。
へえ〜。
僕が聞いたんは五代目のお師匠はんにええ言葉頂いてるとか何か…。
何?落語家に対しての…。
そやそやそやそや!「若い時は上手にやろと思たらあかんであらくやりや」いう。
あっ…。
それは僕にもねちゃんと…。
ああそやからやっぱり…。
やっぱりどっかあらいでな。
いーやんもあらいやろ。
兄貴もな。
だからもう大体うちのお師匠はんのはそうやろと思うねん。
お師匠はんも酒ばっかり飲んで舞台出てたらしいで。
あ〜なるほど。
僕これに書き留めてるって聞いたんやけどな。
メモしてると。
師匠のありがたい言葉とか諸先輩の言葉を…。
それはそっち側や。
それ四代目師匠やないかい。
四代目師匠。
そう。
「稽古してくれ」言うたら「君は僕を心服するか」言うてん。
「言えや」て。
ほんで「はい。
心服致します」言うてやな。
そのかわり四代目師匠の言う事はお父ちゃん「聖書」のごとく思うとったがな。
はあ〜!ほんでなそれやからNHKで初めて本番撮ってもらう時でも「江戸荒」13分かしらんで4時間前からやってるの。
おさらいが4時間やで。
うち来て来て稽古してでNHK行きなさい言うて。
4時間…ここでやって。
ほなパスしたんや。
ほなもうNHK出るパスポートもろうたようなもんや。
うわ〜。
ほいでいろんな事言うてくれた。
ちょっと読んでもええか?どうぞどうぞ。
「人生を愉快に過ごすという事は真面目という事である。
壁に向かって落語の稽古をする時真面目に熱中してやれば何もかも忘れて法悦に浸る事ができる。
これはこれほど愉快な事はないではないかい」。
ものすごくええ事言う。
ず〜っとぎょうさんいろいろあんねん。
ネタに対してもな。
ほいでこの四代目師匠が亡くなる少し前にな「松ちゃん。
僕は落語分からなんだな」言うて…。
おっさんええ加減にせえよ思うてな。
あんた「心服せえ」言うたからわしはあんたの事信用してん。
あんた「分からなんだな」て言うたら今まで言うたん…。
全部うそやがなって…。
うそじゃない。
この師匠には落語は考えてやるもんやという…。
お父ちゃんがそう解釈したわな。
落語は考えてやるもんやという事は教えてもろうたと思うてんねん。
なるほど。
いろんなねええお言葉とかこれもあれですけど…。
そんなもん噺家が言うこっちゃない…。
そやね。
「壁に向かって」とかやて…。
そうそうそう。
「法悦に浸れる」てないないない。
酒ばっかり飲んでるし。
ほいでええのんは…。
ええのは酒飲む時はお父ちゃんと差し向かいで焼酎やで。
そいで一緒に飲んで話してくれはるからな。
それ聞いてんねん。
ほう〜。
お父ちゃん最後にうちの兄弟子のさんま兄ちゃんに何か言いたい事とかね。
対する思いとか。
何であの男に言う事あんのん。
何にもないやないの。
え?あれ最高やない。
日本一やないかい。
天才。
あれもう天才や。
お父ちゃんあんま人褒めへんもんね。
大体君にやねわしああなってもらおうと思て三味線や日本舞踊習わして…タップダンスやって…。
ジャズダンスも…。
何にも役に立ってない。
こんなバカみたいな事はないな。
ええ。
言うのやったらさんま兄ちゃんもくそもない。
お前や。
分かってるか?はい分かってます。
こっちに来ました…。
今日のこの司会もあんまり出来ええ事ないで。
ええそうですね。
最後は僕が駄目出しをされたという事でございましていかがでございましたでしょうか。
ここで失礼をさして頂きます。
どうもありがとうございました。
え〜卒寿を迎えられました笑福亭松之助師匠。
インタビューを2回にわたってお届け致しました。
松之助師匠どうもありがとうございました。
というところで「上方落語の会」今日はもうお開きでございます。
2015/11/06(金) 15:15〜15:58
NHK総合1・神戸
上方落語の会 ▽「阿弥陀池」笑福亭生寿▽笑福亭松之助インタビュー[字]

▽「阿弥陀池」笑福亭生寿、「始末の極意」明石家のんき、(第356回NHK上方落語の会から)▽笑福亭松之助インタビュー(聞き手・明石家のんき)▽ご案内:小佐田定雄

詳細情報
番組内容
第356回NHK上方落語の会から、笑福亭生寿の「阿弥陀池」と明石家のんきの「始末の極意」をお届けする。後半は今年満90歳を迎えた上方落語界の重鎮、笑福亭松之助のインタビューをお届けする。聞き手は弟子で実子でもある落語家の明石家のんき▽ご案内は落語作家の小佐田定雄
出演者
【語り】明石家のんき,【案内】小佐田定雄,【出演】笑福亭生寿,【インタビューゲスト】笑福亭松之助
キーワード1
落語
キーワード2
漫才

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
バラエティ – トークバラエティ
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:38887(0x97E7)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: