(笹井ゆり子)なかなか帰ってこないんで…。
(ゆり子)迎えに来たら父が…倒れてたんです…作業場に。
(土門薫)被害者だ。
(榊マリコ)手足はまだだけどあごや首の硬直は始まってる。
まだ乾燥してない。
死後3時間前後ってとこね。
傷は2か所。
現場の状況から見て事件性がある。
お願いします。
(鑑識)はい。
(吉崎泰乃)ちょっと見てください。
血液反応ね。
ここが殺害現場か。
(泰乃)こういうのはどうしましょう。
(相馬涼)うーん…凶器にはなりそうにないっすね。
でも一応押収して。
こういうのも。
(泰乃・相馬)はい。
(村上洋治)それは京春日です。
懐中屋を代表するお菓子です。
(権藤克利)専務の村上さんです。
来てもらいました。
(泰乃)あの…こういったものがあるのはここだけですか?はいここだけです。
あのこれは…?
(村上)あっよく…こうしてましたから失敗作は。
失敗作…。
これと差はないように見えますけど。
4代目にしかわからない事があったんだと思います。
4代目というのは殺された笹井幸造さんですね?はい。
4代目の社長です。
じゃあ5代目は専務の村上さん。
…さあどうなんでしょうか。
専務あちらで少しお話を。
はい。
じゃあこのまな板も押収しますね。
その和菓子もね。
(相馬)え?さすがに和菓子で撲殺は無理ですよ。
いいから。
この中にある和菓子も全部。
(相馬)はい。
相馬君。
(相馬)はい。
何してるんですか?床や壁に付着した微物だって大切な証拠。
ここまでしますか。
なるほど。
村上専務は被害者の息子さんではないんですね。
はい。
私は20年前に社員に採用されて…。
専務はお菓子は作らないんですか?昔はやっていましたが3年前に工場を任されて…。
工場があるんですか?ええ伏見に。
じゃあ専務は普段はその工場のほうへ…。
はい。
だから今はめったにこっちには来ません。
ではここの作業場に入るような事は?私は…作業場には入れないんです。
なぜ入れないんですか?さあ…社長が決めた事なんで。
(ゆり子の泣き声)すいません。
(泣き声)
(村上)すいません。
けじめをつけてたんだと思います父は。
村上さんに工場に専念してもらうように…。
どうぞ。
あ…。
彼の発案ですからあの工場は。
それが半年で業績を上げたんで2年前に専務に抜擢されたんです。
例えば専務と被害者の間に何か確執があったような事は…。
まさか…。
父ほど村上さんをかってた人はいません。
(笹井幸造)村上ほど店の事を考えてる奴はおらん。
骨のある奴や。
だからこそ甘やかすわけにはいかん。
でも少し厳しすぎるんじゃないかってみんなが言ってたから…。
あいつはへこたれん奴や。
平気で俺に意見してくる。
それでいい。
あいつはもっともっと上へ行ける。
少なくても兄よりは見込んでたんです。
あの…あなたのお兄さんは現在…?兄は今東京で全く別の仕事をしてます。
なぜお兄さんは継がなかったんでしょうか?あ…継ぐ気はあったんですよ。
和菓子作りをしてました父と4年前まで。
それがどうして…?甘やかしすぎたって言ってました。
継ぐって言ってくれたのがうれしかったんでしょうね…。
(ゆり子)ちょっと…!ちょっとお兄ちゃん待ってよ!
(ゆり子の声)だから自分に教えられた事しか出来ないようになってしまった。
自分のせいだと父は言っていました。
それで才能の限界を感じた兄は自ら懐中屋を出て行ったんです。
(ゆり子)ちょっと待ってよお兄ちゃん!お兄ちゃん…!それなのに最近懐中屋に戻ってきたいなんて。
お兄さんが?ええ。
でも父は絶対に許さないって…。
(携帯電話の振動音)ちょっと失礼。
被害者の息子ですが死亡推定時刻に東京でアリバイがありました。
娘のほうは?
(権藤)「被害者と2人きりで暮らしてるんで…」村上専務は?一人暮らしなんでその時間のアリバイはありません。
他にアリバイのなかった店員や職人ですが…。
(風丘早月)はいこれ。
ご遺体の爪から採取した微物。
はい鑑定してみます。
それと…腕にあったやけどの痕なんだけど…これ全部煮詰めたあんがはねて出来たものだった。
犯罪所見ではないって事ですね。
うん。
長年和菓子を作り続けた職人の体ね。
この致命傷をつけた凶器絶対見つけないと…。
必ず。
(日野和正)せーの…。
どう?ダメです。
血液反応はありませんでした。
洗剤で洗われた痕跡もありませんでした。
(相馬)こっちの傷は現場の作業台と一致しました。
でもこっちの傷と合致する凶器がないんですよ。
(宇佐見裕也)被害者の爪から採取された微物を分析しました。
ほうれん草と乳化剤で作った合成着色料です。
(日野)ま…被害者は和菓子職人だからこの手のものが爪に入っても不思議じゃないね。
あああと…押収した金型から米油が出ました。
(日野)これ…せんべい焼くもんだよね。
それにどうして米油が?ああ生地がくっつかないように普段から塗っておくんだよ。
でもこれだけその米油が出ませんでした。
なんでこれだけ?さあ…。
あの…現場からの押収物に合成着色料なんかないんですけど。
(職人)着色料は全部この冷蔵庫に保存してます。
野菜?ええ。
うちは昔から野菜や果物の煮汁で着色してますさかいに。
あの…そうじゃなくてこういう合成着色料は…。
まさか。
うちではこの手のものは一切使いまへん。
つまり被害者だったら絶対に使わないってわけか。
だとするとこの合成着色料を使っている誰かが昨夜あの作業場にいた可能性がある。
実は気になる証言がある。
工場での量産についてはようもめてはりましたわ。
もめていた…4代目と専務がですか?まあ添加物なんか入れると味変わりますやろ?工場では合成着色料を使っているらしい。
それで…被害者は専務ともめてたの?ああ…。
だが被害者が専務を認めていたという証言もある。
専務の評判も決して悪くはない。
よう尽くしてましたわあの厳しい4代目に。
せやから専務にも抜擢されたんでしょあの若さで。
そういえば息子さんが帰ってきたがってるとか…。
よう言うわほんまに。
なんし4代目に甘やかされとったからねえ。
専務みたいに求人見て来た人で長続きするんは珍しいんよ。
そう。
だがその着色料は無視出来ないな。
ねえ。
工場にある合成着色料押収出来ない?被害者の爪から採取された合成着色料です。
照合のためにこちらにある着色料を任意提出して頂けませんか?まさか工場の人間を疑っているんですか?いえ。
事務的な確認作業です。
困ります。
着色料を全て押収されたら今日の生産ラインが止まってしまいます。
いいえ。
それぞれほんの少しずつで結構です。
ご協力お願いします。
こちらにサインを。
被害者は菓子の量産には反対だった。
…という話を聞いたんですが。
まさか。
この工場は4代目が作ったんです。
あなたの発案だったのでは…。
4代目の許しがあっての事です。
同業者の寄り合いでもめていたそうですね菓子の量産化の件で被害者と。
見た人がいるんです。
4代目は気難しい人でしたからもめたのは私だけではありません。
つい先日も茶道の家元ともめたばかりで。
おはようございます。
今日の作業は5代目と私なんですが何度携帯に電話しても5代目出なくて…。
もう5代目やない。
(村上)え?東京へ行った。
え?東京?なんの用で?お前工場作りたい言うとったな。
え…あっはい。
今は生活から和菓子が消えて大口の客と言えば茶席か神社仏閣か老人ホームですから。
それならせめて駅やデパートに置いて普段遣いをしてもらわないと。
だから量産化が必要なんです。
新しい工場が出来たらお前が責任者になれ。
え…?ほしたらここじゃなく工場へ通え。
4代目…。
お前は俺と一緒におったらいかん。
俺はお前までダメにするかもしれん。
せやから頼む…工場へ行ってくれ。
(家元)茶室は暗うおますやろ?せやから少しでも見目鮮やかなお菓子をとお願いしたんです。
…けど茶席の日に頂いたんはこれまでどおり懐中屋さんらしい地味な色合いのお菓子でした。
大切な茶席でした。
面目潰された思うて抗議したらあんた…。
でしたら他の店で買うてもろうて構しまへん。
亡くなられた人につろう言いとうありませんけど懐中屋さんとは先々代からのお付き合いです。
(家元)少しはこちらの要望を聞いてくれても…なあ?楽にしなはれ。
(権藤)はい…失礼します!お店再開したんですね。
4代目の葬儀の日取りも決まりましたしこのまま閉めていても4代目に叱られますんで。
その被害者の爪から採取された合成着色料…工場から押収した中に合致するものがありました。
あの夜工場の人間が事件現場にいたという事です。
この着色料なら一般に流通しているものです。
でも被害者なら決して使いませんよね。
実際にここにはありませんでした。
じゃあ…外で同業者と仕事をした時に付いたのかもしれませんね。
被害者は作業場に入る前に念入りに手を洗っていたそうですね。
洗っても落ちない合成着色料ならいっぱいあります。
特にこれは油だけに溶ける着色料です。
それに…こんな石けんで洗ってもなかなか落ちません。
状況的には工場の人間が怪しいな。
特にあの専務を疑ってるのよね。
凶器はまだわからないのか?調べてはいるんだけど…。
さすが天下の懐中屋だね。
ただいま。
(宇佐見)あっおかえりなさい。
ちょっとこれ見てください。
(相馬)僕とマリコさんが採取した微物の分析結果です。
この丸がしてあるのは?ああ…こっちが白味噌の成分こっちがみりんでどうやら白味噌もみりんも2種類ずつあります。
隠し味なんだろうねえあんこの。
もしかして和菓子の話してる?風丘先生!その和菓子です!ジャーン。
はいっ!美味しそう!早速お茶入れますね。
そうくると思った!これって京春日?
(早月)そう。
でも本店で見たのと形が違う。
(早月)さすが!これはデパートで買った工場で作ったもの。
で!本店のも買ってきました。
はいっ。
ところで先生今日はどうして?ん?ん…んんっ!そうそう。
いや凶器がまだ見つからないって言うから致命傷の皮膚と頭蓋骨の状態から凶器の重さを割り出してみた。
手掛かりになる?もちろんです!ありがとうございます。
(日野)いつもすいませんね。
(早月)いえいえ!
(日野)餅は俵型のほうがやわらかいけど僕はこの半月のほうが好きだね。
ええ本店のほうがお米の味がしっかりしてますね。
うん!本当だ。
緑あんも本店のほうが味が濃い。
本店のは全体的に甘いですね。
でも嫌な甘さじゃないね。
うん。
お茶と一緒なら断然こっちです。
そうですか?
(早月)ん?形違うだけで同じ桜餅じゃないすか。
桜餅じゃないから!味に違いありますよね。
私はどっちも美味しいって事しか…。
じゃあ鑑定してみましょうよ。
(宇佐見・早月)ん?俵型と半月そんなに違うんなら成分が違うはずだし。
そうねえ…鑑定してみましょう。
もうマリコ君まで…。
いえ…気になってた事があるんです。
こっちが作業台の上にあった京春日。
こっちが捨てられていた京春日。
捨てられてた!?どこが違うの?その違い成分を調べればわかるかもしれません。
…かもしれないけどもそれで何がわかるの?殺害現場に同じお菓子があり一方は捨てられていた。
ああ!それが殺人の動機だったら…?え!?お菓子捨てられたぐらいで殺します?少しでも可能性があるなら調べる意味はあるはず。
結果から言うと…作業台にあったこちらも捨てられていたこちらも成分に違いはありません。
あっ…やっぱりあんこに白味噌とみりんが使われてますね。
ええ。
ああ…それなんですけど工場で作られてるこれ使われてる白味噌とみりんが…これと違いました。
泰乃さん!
(泰乃)はい。
現場で私と相馬君が採取した微物の鑑定結果は?はい…。
ありがとう。
やっぱり…!どうしたんです?こっちが半月型に使われていた白味噌とみりん。
こっちが俵型に使われていた白味噌とみりん。
事件現場からはその両方が採取されてる。
本店では両方使ってんじゃないの?いえ本店から押収した白味噌とみりんは…これだけですね。
(相馬)成分表示を見ると…これですね。
つまり本店で使われてない白味噌とみりんが本店の現場から採取されたって事ですか?
(村上)工場で作る京春日が俵型なのは工場の機械の都合で…味は変わりません。
和菓子好きに言わせると違うそうです。
(村上)え?本店のほうが甘さはもちろん米や小豆の味がしっかりしてるって言ってました。
(村上)それはいいお客さんですね。
でもそんな人ばかり相手にしていたら商売は出来ません。
餅粉よりも餅米の量が多いと米の味は強くなりますが餅米が多いとすぐに硬くなってしまいます。
(村上)そんな商品常に職人がいる本店ならともかく一日商品を並べっぱなしにするデパートや駅には置けません。
(村上)普通のお客さんは餅米の餅だろうと餅粉の餅だろうとそんな事どうでもいいんです。
それよりもむしろ硬くなってしまったら怒ります。
私たちは今一日経っても硬くならないスーパーの団子と戦っているんです。
それにお客様は和菓子で米と小豆の味を見破る客はいません。
でも科学はそれを見破ります。
成分を分析した結果本店の京春日に使われていた白味噌とみりんです。
確かにこの2つは本店にありました。
工場の京春日に使われていた白味噌とみりんです。
この工場にありますよね?ここにありますがそれがなんでしょう?工場にはあって本店にはないはずのこれが本店の殺害現場から見つかりました。
きっとこの白味噌とみりんが付着した靴が殺害現場を歩いたんです。
どちらも一般的に流通してる商品です。
白味噌とみりんそして…合成着色料。
ここで使われているこの3つが殺害現場から見つかった。
偶然とは思えません。
工場の人間があの夜殺害現場にいた。
そう考えるのが自然でしょう。
何がおかしいんですか?…だとしてもこの工場には私以外の人間もたくさんいます。
でしたらこの工場の人全員…!それに…!たまに4代目もこの工場に来ます。
その時に靴に付いたんじゃないでしょうか?殺された日に4代目がここに来たんですか?さあ…たまに抜き打ちで来てはあれこれ文句をつける人でしたから。
(笹井)工場で作った京春日食べてなんや変や思うたんや。
これは懐中屋が使うとる白味噌やない。
みりんも違う…!4代目が使ってる白味噌やみりんは生産量が少なくて量産には対応出来ないんですよ。
そうやさかい代替品使うて懐中屋の菓子とは似て非なるまがい物を作ったっちゅうのか!?代わりのものを見つけるのもひと苦労なんですよ。
そんなもんは苦労やない。
先代から受け継いだ菓子を今手に入る最高の材料を使うてどうやって復元するか…地味やがそれこそが本当の苦労なんや!そんな…いくらなんでも厳しすぎますよ。
こっちは味のわかる客を育てようと客にも厳しいしてんのや!なんで身内のお前に甘うせんといかん!?あの専務の言うとおり私たちが証明したのは…工場で使われていた材料が現場に残されていた…それだけね。
やはり突破口は凶器かもしれんな。
(エンジン音)すみません京春日はもう売り切れてしまったんです。
えっ!?はい…。
じゃあ…何かお茶に合う他のものを。
それでしたら…こちらのものはいかがでしょう?ああきれい。
(早月)じゃあ…雪割草春ほのかと…寒椿。
…と芽ばえも。
6個ずつ全部で24個ください。
はい。
こんにちは…。
いらっしゃいませ。
こちら1週間前に作ってもろうたんやけど父の米寿祝いにこちらの4代目に。
(店員)あの…何か不都合がございましたでしょうか?4代目があんな事にならはって…。
父がどうしてもこれを店に飾りたい言うて。
そういう加工ってこちらでしてもらえるやろか?おはようございます!
(一同)おはようございます。
ああ風丘先生。
きれいでしょう!?懐中屋本店の和菓子。
(相馬)これを食べるためにお茶を飲みに来たみたいです。
(早月)宇佐見さんのお茶がこの和菓子に合うんだから…!どうぞ。
どうも。
先生ただお茶飲みに来たわけじゃないですよね?え?何か気になる事があって来たんですよね?ああ…。
ねえあの干菓子の…砂糖菓子って言うの?あの…型があるじゃない?木で出来た。
パーンッてやる…。
ああいうのですか?やっぱり押収してたんだ!凶器かもと思って押収したんすけど何か?あれ?ない…?
(早月)ないんじゃない?何がです?こんな大っきな鯛を作れる砂糖菓子の型。
昨日見たのよ…殺された4代目が作ったっていう鯛の砂糖菓子。
そんな大きな型…現場にはなかったですよ。
あっ!昨日私が割り出した凶器の重さってわかる?ちょっとすいません…。
あっ!ほらそうそう!このぐらいの重さになると思わない?こんな大きな鯛の型でしかも木で出来てるって言ったら…。
じゃあもしかして…。
一番でっかい鯛の木型ですな。
あれ?確かここにしまってあったはずやねんけどな…。
(権藤)確かですか?ええ。
4代目が特に大切にしてた型ですさかいなあ。
大切に…?4代目が発注して作らしたもんですわ。
2年前に村上さんが専務にならはった時にお祝いや言うて。
だとするとまだ処分されてないかもしれないな。
(カメラのシャッター音)ちょっと!どういう事ですか!?私の家に勝手に…。
この令状と管轄の役所の立ち会いがあれば出来るんです。
(相馬)見つけた。
ありました。
カーテンを閉めてください。
はい。
ALS。
はい。
(村上)ちょっと何を…。
(泰乃)血液反応はありませんね。
(相馬)というか洗剤かなんかで洗ったあとがありますよ…。
干菓子の木型は洗剤では洗わない。
それが懐中屋のやり方だと聞いています。
あなたが洗ったんですね?これを殺害現場から持ち出したのも。
持ち出した…?違います。
違う?現にあなたの家にあるじゃないか!もらったんです。
4代目がもう使わないと言うので。
いえ被害者は1週間前にこれで干菓子を作っています。
ええだからそのあとにもらったんです。
村上専務…。
私が専務になった時社長が作ってくれた木型です。
何かの励みになればと無理言って頂きました。
もちろんそれで菓子を作る事はもうありません。
だからきれいに洗いました。
何かいけませんか?こちら預からせて頂いてよろしいでしょうか?お断りします。
村上さん。
4代目から頂いた大切なものなんで。
(村上)こんな見事な祝い菓子初めて見ました。
私なんかのためにありがとうございます。
その上でこんな事を言うのはおこがましいのですがこの干菓子の型記念に頂けないでしょうか?それはあかんな。
また使うんやから。
お前が5代目になった時に。
きっとあれが凶器だ。
ええ。
科学で証明出来ないのが悔しいけど。
必要なのはあの専務が殺害現場にいたという証拠だ。
それはどうすれば手に入る?やだまた食べてるの?だって風丘先生が大量に持って来たから。
でもこうやって見ると手作りだってわかりますね。
うん?この4つ同じお菓子なのに少しずつ形が違う。
(宇佐見)それわざとだと思いますよ。
あえて同じにしない。
そういう職人もいます。
なんでですか?そのほうが季節を感じやすくこうして話も広がる。
なんかよくわかんない世界ですね。
形が違えば味も変わる。
それで変化も楽しめます。
味が変わるって…この4つ同じ材料ですよね?たとえ同じ素材でもどう練るのかどう伸ばすのかによって歯触りや口どけが変わってくるんです。
すごいさすが宇佐見さん!食べ比べてみます。
君味音痴だったでしょ?っていうかそんな違いわかるほうがどうかしてますよ。
どう練るのかどう伸ばすのか…。
これ調べたのは成分だけですよね?
(宇佐見)えっ?ええそういう鑑定でしたから。
でも味を変えるのは成分だけじゃない。
ええ。
どうしても気になるの。
なんでこっちが捨てられていたのか。
そこに事件の真実があるような気がしてならない。
調べましょうか。
この和菓子のお餅とあんの成分以外全て。
同じように見えますがこちらがこの台にあったものこちらがここに捨てられていたものです。
失敗作だから捨てられた。
そうおっしゃいましたね。
4代目が昔からそうしていたのでそう思っただけです。
餅ですか?はいその拡大写真です。
こっちが捨てられていた京春日。
あ…。
そう捨てられてなかったほうに比べてわずかですがお餅が伸びて薄くなっています。
きっとあんを包む時4代目はお餅を伸ばさないようにふわっと包んだのに対して捨てられていたほうは引っ張って包んでしまった。
それだけの事で食べた時の歯触りが違ってくる。
あなたが言ったとおり失敗作だったんですね。
そんな違いわかる客はいませんよ。
それはともかく捨てられていた失敗作をあの夜ここで作ったのは村上専務あなたです。
なんで…なんでそんな事を思うんですか?それは捨てられていたこの和菓子が証明しています。
合成着色料でついたあなたの指紋の一部です。
被害者の爪からも採取されたこの着色料でした。
あなたの工場にある合成着色料ですよ。
もちろんこれが指についても簡単には落ちません。
しかしあなたが言ったように油には溶けます。
たとえこの型に塗られている米油でも。
お餅を包む前にこの型に触りましたね?その油であなたの指についていたこの着色料が溶けこのお餅にあなたの指紋を残した。
そのあとあの型についた自分の指紋を拭き取ったんだな?だからあの型だけ米油が検出されなかった。
まさか餅に触る事になるなんて…思ってもいませんでした。
(村上の声)あんな事本当に3年ぶりだったんで…。
こんな時間に…。
売る時硬くなっちゃいますよ?これは売りもんやない。
(村上)は?あの…なんで突然私を呼んだんです?洗っても落ちんのは合成着色料やな。
そんなもんは和菓子職人の手やない。
その話なら前にもしたはずです。
野菜や果物からとった色は使えんちゅう話か?量産化は出来ないという話です。
大体自然の色は発色が悪い。
それで茶道の家元ともめたんですよね?取引も切られたそうじゃないですか。
どう言われようと譲れん事はある。
心あるお人ならいつかはわかってくれるはずや。
じゃあ言わせてもらいますけどこんなせんべいもうはやりませんよ。
もっと万人受けするものを作ってください。
そんなもんは他の店に任せといたらええ。
だからデパートにはねられるんです。
うちの菓子はデパートに合わせて作ってるんやない!そのデパートに頭を下げてるのは私です!包んでみろ。
はい?なんやもう忘れたんかやり方。
毎日工場でやってます。
そんなものは機械がやっとるだけや。
もう一度。
もう一度。
4代目一体…。
もう一度や!はい。
とても食えたもんやないな。
え?もうええ。
一体なんですか?お前はまだ機械で餅を丸くこしらえとけ!ちょっと何するんですか!仕事の邪魔や!なんでこんな事するんですか!もう帰れ!あなたにとって私は一体なんなんですか!お前はただの工場長や!まだ5代目やない!うっ!
(ぶつかる音)
(村上の声)私は一生ただの雇われ…。
実の息子が心変わりしたらいつでも見捨てられる。
いやいつでもそう出来るように工場をあてがわれただけだったのかもしれない。
(村上の声)だからここに来る事も許されなかった。
そう思ったら今まで抑えていたものが一気に溢れ出して…。
(家元)あの…すいません。
失礼します。
職人さんたちは…?ああもう帰ってしまいました。
あの先日は4代目が大変失礼な事を…。
茶席は一期一会。
その場限りでええ暗い茶室に光がともるそんな菓子がほしかったんです。
ええ。
4代目にはそういう気遣いがなくて本当に…。
いえ今日他の店の菓子を茶席に出してようわかりました。
おたくのお菓子でなかったらあかん。
おたくの菓子やないと茶席が締まらんようになる。
なんでうちが先々代からずっとおたくと付き合うとったかやっとわかりました。
明日改めてまたおわびとお願いに参ります。
失礼します。
4代目の気遣い。
今そう言いましたね。
自分は気遣いには2つあると思います。
厳しくても相手を思う気遣いと自分が嫌われないためだけの気遣い。
4代目はどっちだったんでしょう。
あなたの話を聞いて不思議に思う事があります。
これは…。
いつもここにしまわれていたんですよね?なのになぜあなたを3年ぶりに呼び出したあの夜はここに出されていたんでしょう。
なぜ3年ぶりにあなたに和菓子を作らせたんでしょう。
死んだ人の気持ちはわからないけど本当は村上さんを気遣っていた。
そう思えてならない。
だからこそあえて悪者になったのかもしれないな。
息子を甘やかし継がせられなかった苦い過去がそうさせたのかもしれない。
だから今度こそはと厳しくした。
でもきっとそれが彼を追い詰めたのね。
だからといって殺していい理由にはならん。
2015/11/06(金) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
科捜研の女11[再][字]
「京都老舗殺人事件!味の鑑定…和菓子職人vs科捜研!!」
老舗和菓子店で社長の撲殺死体が発見された。マリコは捨てられていた和菓子に注目するが…。
詳細情報
◇出演者
沢口靖子、内藤剛志、風間トオル、斉藤暁、奥田恵梨華、高橋光臣、長田成哉、若村麻由美
【ゲスト】
岡田義徳、栗塚旭
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
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