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北沢かえるの働けば自由になる日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2015-11-09 それが私のプライド

「会社が何をしてくれるかではなく、自分が会社に何ができるかを考えなさい」

| 「会社が何をしてくれるかではなく、自分が会社に何ができるかを考えなさい」を含むブックマーク

今朝、NHKを見ていたら、すごいニュースがやっていた。

資生堂ショック」というテーマで、充実した育児支援制度で有名な資生堂が、2014年に方針転換して、育児で時短を選んだ社員にも、平等なシフトやノルマを与えるようになったというもの。

全国のデパートやスーパーなどに入っている、資生堂の化粧品売り場です。

一番のかき入れ時は、仕事帰りの客などでにぎわう午後5時以降と、土曜日と日曜日。 その売り場を任されているのが、全国に1万人いる「美容部員」と呼ばれる女性社員です。

1人あたりの営業ノルマは1日18人以上を接客すること。

資生堂では、より多くの客と接点を持つことが売り上げにつながると考えているからです。

(中略)

短時間勤務制度は1991年に導入しましたが、店頭に立つ美容部員はなかなか利用しませんでした。2007年、当時の社長が美容部員にも制度の利用を勧めたところ、利用者は一気に増えました。

ところが、同じ時期、会社全体で国内の売り上げがおよそ1,000億円減少します。

会社では、競争の激化やインターネット販売への対応が遅れたなど、さまざまな要因がある中で、美容部員がかき入れ時に店頭にいないことも原因の1つと考えるようになりました。

“資生堂ショック” 改革のねらいとは|特集まるごと|NHKニュース おはよう日本

というわけで、繁忙期に美容部員たちをどうしたら働かせられるかと考えた手段が。

育休復帰前の美容部員に、DVDを配布して、 役員自らが

「制度に甘えるな」

と警告することだった。

「 月日を重ねるごとに、何となく(育児時間=短時間勤務)を取るのが当たり前、甘えが出てきたりだとか、そこを取るという権利だけ主張しちゃったり」

そして、時短利用者にも、土日のシフトに入って、17時以降の忙しい時間帯も仕事しろと訴えたわけだ。

見ながら唖然としたよ。甘えって……なんだよ、それ。長い人生のうち数年、このぐらいは支援してもらってもいいんじゃないの。


7〜8年前、保育園に通っていたころ、資生堂の美容部員をしているというママがいて、ある日、大きくなったお腹に合わせて、おしゃれなマタニティ仕様の服を着ているののを見て、

「へぇ、いいね、それ。シンプルなスタイルで、マタニティぽくなくて」

「これ、うちの制服なんですよ。会社が用意してくれているんですよ」

「え、マタニティの制服があるの!?」

「はい」

なんていうか、妊婦が店頭に立つのはどうなんだとか、長時間立ち仕事で大丈夫なのかとか、当時はそういうことを平気で言う人が大勢いたんだけれど、それも含んで、意欲を受け止めて、続けたいところまで仕事させてくれているんだ、資生堂はすごいなぁと。

あのママの明るい笑顔を思うとね、なんだかな〜。

こっちの記事を読むと、またまたすごく理にかなったように思っちゃうんだな〜。

 事業所内保育施設や法定を上回る育児介護休業・短時間勤務制度など、資生堂子育て支援策の充実ぶりは目を見張る。「女性に優しい会社」という評価が定着した。だが資生堂は今、その定評からの脱却を試みている。子育てや介護をしながらも会社にいかに貢献してもらうか。「働きがいのある会社」を新たなゴールに設定した。

 国際事業企画部の国岡奈央子さん(38)は6歳と3歳の子どもを育てながら働く。3歳になるまで取得可能な育児休業を活用して、5年間子育てに専念し、13年11月に復帰した。「ママ社員向けの軽い仕事を振られるのでは」。そんな予想に反して担当業務は出産前と変わらず米国の子会社の経営管理。海外出張もこなす。現在も短時間勤務を続ける。限られた時間で成果を出すのは大変。「でもつらさよりも仕事のやりがいが勝っている」と話す。

(中略)

資生堂も1990年代までは結婚・出産退社が目立ち女性管理職比率も低かった。2001年にジェンダーフリー委員会を立ち上げ、女性活躍推進に乗り出した。女性の声に耳を傾けて子育て支援策を次々と拡充。出産退社を減らす当初の目的を果たす一方で新たな課題が浮上した。

 短時間勤務制度などをフル活用すれば約10年フルタイム勤務をしなくて済む。ここまで極端ではないにしろ、職場への十分な配慮を欠く制度利用が見られるようになった。そこで会社は子育て支援の目的を改めて検討。「基本は自助努力。制度は自力で解決できないときに頼るもの」と確認した。意思統一を図るために10年度に全女性社員ら1万人(管理職を除く)を対象にキャリアサポートフォーラムを全国で開き、当時副社長だった岩田喜美枝さんが直接説明して回った。

 育児を聖域にしない改革は現在も続く。昨年4月には短時間勤務中のBCの働き方にメスを入れた。

 制度利用者は1千人を超え、ここ10年で約3倍に。そのほとんどが夕方に早く帰れる早番シフトに入っていた。独身者など一部の社員に多忙な遅番が集中し、不満の声があがった。現場の上司が短時間勤務中の全BCと個別面談を実施。支障のない範囲で遅番に入るように要請した。

 会社に頼りすぎない姿勢は徐々に浸透している。

育児を聖域にしない改革 資生堂  :日本経済新聞

書き方次第でどうにもなるというか、これがなにがまずいって、「働き続けたい」という意欲がある人たちを、いろいろな面から支援していこうというのではない。

「基本は自助努力。制度は自力で解決できないときに頼るもの」

なにがまずいって、システムを頼るなって、制度は使うなって、精神論でこの状況を乗り切ろうとしているってこった。

「時短は甘え」

って言い切られると、社内の空気は一変するよな。そこから一歩踏み出せるかい?

育児の苦労は、小学校入学を境に一段落するが、そこからは、また、親として見守り、さりげなく支えが必要になる。しばらくしたら受験。18歳で大学に入学するまで断続的に続くんだがなぁ。そして、同時進行で、親の介護があり、自分自身の病気もあるかもしれない。

人はなんらかの問題を抱えたりして、仕事に集中できない期間もある。

というのを前提に、個々人の事情を踏まえて、働きたいなら場を与えていこうってのが、ダイバーシティの理想だったがね。そういう大きな視点からじゃなかったのかなぁ。

追記

これを読んでみて、あぁ、そういうことかと。

資生堂ショック報道への反応のズレ

念の為補足しておくと、美容部員の短時間勤務者のために、夕方以降の店頭活動を代替する「カンガルースタッフ」という派遣社員が1600名ほど在籍している。

ただ、このカンガルースタッフの育児を犠牲にすれば良いかというと違うので、結局またその店頭活動サポートのサポートが必要になり……と根本的な解決にはならない。

(実態はバイトだしキャリア蓄積という意味でも難しい。わりとこのカンガルースタッフは常時募集しているので、はてなでもやってた人がいるかもしれない)

ぶっちゃけ、ベテランの美容部員を様々なコストをかけて雇い続けて配置するよりは、繁忙期に素人バイトを投入して販売機会を逸失しない方が効果的というエビデンスが出て、経営陣の判断が変わったってこったろうな。

こういう風に方針を変えましたってテヘペロと言っちまわなくても、まぁ、現場の美容部員たちはわかっているだろうから。悲しいね。

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