クロスロード【藤井慎介/木工作家】 2015.11.07


1組のご夫婦が仲よく森林浴。
と思いきや…。
ハンガー?あっえっと…。
そこにあったのはシダ。
これが何ですか?森の中で靴べらだのハンガーだの次々と不思議なことを言い出すこの男性。
その正体は今注目のこれが彼の作品。
圧倒的な美しさが見る者の心をとらえ計算しつくされた座面のカーブが座る者の体をとらえる。
まさに1脚このロッキングチェア実はモチーフはイカ。
しかも獲物を捕まえるときの捕食のイメージなんだとか。
実際座ってみると…。
日本の中でも藤井さんみたいな感性の持ち主はたぶんいないんじゃないかなと思うし。
藤井さんの作るものは芸術品のような美をたたえながらもあくまでも生活に使う道具。
こちらは蓮をモチーフにした鍵置き。
森で見た枯れ枝はコートハンガーになりました。
芽吹いた新芽がフックになっています。
これがどっから見ても後ろを向いてる。
そのユニークな発想はどこから?木をこよなく愛し木と遊ぶ木工作家藤井慎介。
その創作の秘密に迫ります。
爽快なドライブ日和ですが藤井さんが聴いているのはなんともけだるい音楽。
70年代にアングラの女王とうたわれたブルースシンガー浅川マキ。
藤井さんの大のお気に入りです。
この人の。
実はこの曲に歌われている女性の切なさがあの後ろ向きの少女のモチーフになったのだそう。
そんな藤井さんを待っていたのは…。
お疲れさま。
安曇野在住の人気藤井さんの木工と大須賀さんのステンドグラスのコラボでランプを作る企画があり先に土台部分を仕上げた藤井さんが作品を持参したのです。
アハハハッ。
そのなかにはあの『後ろを向いた少女』も。
ランプ台だったんですね。
あ〜。
言葉を失う大須賀さん。
おもしろいけど。
もうずるいね。
先にこうやって作るほうって楽ですよね。
要するにオブジェの真ん中にコードのための穴だけが開いている。
だから上をどうするかっていうのはねお前どうするんよ?お前を試してやるぞみたいなね。
ちょっと脅迫状が半分入ってるようなね。
ベテラン作家をすっかり困らせてしまった藤井さん。
でもなんだか楽しそう。
藤井さんが暮らすのは富士山のふもと。
農家が使わなくなった納屋を借りて工房にしています。
朝ここに来るとまずは広げた材木を眺めることから一日が始まります。
藤井さん愛おしそうに材木を立てかけました。
今日の作業に取りかかります。
何やら細い棒を削り始め極小のかんなをかけては手で触り具合を確かめる。
その繰り返し。
おや?この形…これは靴べらですね。
ということは…あっもしかしてあれですね?あの安曇野の森で見たシダが不思議な形の靴べら立てになりました。
一つの木をくり抜いた芸術品のように見えますがそこにはあるこだわりが。
結局僕つくるのはあくまでも実用品。
しかし藤井さんはそんな生活の道具のなかにこそ美を追求しようと自由な発想繊細さを極める作業に妥協しません。
例えばこの椅子にも独自のアイディアが。
こちらの背もたれ実は本体とは根元の1か所でしかつながっていません。
背もたれを釣り竿のようにしならせることで木の椅子が体にフィットするという構造。
何度も座り心地を確かめてはミリ単位の調整を重ねることひと月。
まさに用途と美しさが融合したひと品が出来上がりました。
どこをとってもまるで生きているかのように豊かな表情。
更にはしなる背もたれが背中を優しく受け止めてくれます。
こちらのタイトルは鏡のような水面の下にはいろんなものが沈んでいる。
どこか神秘的な物語のあるテーブルです。
8月。
甥っ子と一緒にお気に入りの林へ。
藤井さん虫捕りは得意中の得意。
これクワガタ?うんクワガタ。
政慶君は虫捕り名人藤井さんの仕事にも興味津々。
悩みを打ち明けた藤井さん。
甥っ子に製作中の椅子を見てもらうことに。
慎ちゃんこれ?そうそう。
この椅子も材木がインスピレーションを与えてくれました。
浮かんだイメージはすぐに図面に起こします。
作るのはクワガタの椅子。
デザインが決まると…。
一気に製作に入ります。
まずは大きな桜の木を裁断。
どの木目をどこに出すか。
そこまで見極めながらパーツを切り出す作業です。
僕の場合…。
当初のデザインとは違っても使い心地のよさはためらわず埋め込んでいくのが藤井流。
これ肩甲骨のところが気持よさそう。
しかしそもそも藤井さんはなぜ生き物をモチーフにすることが多いのでしょうか?そのためには最後の最後まで自分の手でやり遂げたい。
専門の職人さんに任せる作家が多いなか藤井さんは漆塗りまでを1人で行っています。
いわく木を扱うということは木目とつきあうこと。
その木目をどう出せるかが漆の仕事なのだそうです。
クワガタは何度も重ね塗りをし深い色合いに仕上げました。
この秋開催された椅子展。
今話題の6人の作家の作品が一堂に会すなかでも藤井さんの椅子は精彩を放っていました。
こちらは新作の長椅子。
そしてあのクワガタの椅子。
堂々たる姿はさながら玉座のような風格。
安定感のある脚。
力強く天に伸びる背もたれ。
悩んでいたその先端は2つに割れ自然な曲線を描いていました。
こちらのお客さんもくつろいでいます。
これすてき。
これもわざと反らしたんだ。
この男性は藤井さんの椅子を10脚以上もお持ちだといういわば藤井マニア。
友達はそこに椅子足かけてブラブラしたりとかして。
「出かける?」って言っても「いいここにいる」って言って「落ち着く」って言って出かけない誰も。
そう藤井さんの椅子のよさは座ったときにいちばんわかるのです。
いただきます。
いただきます。
お昼は毎日工房から歩いてすぐの自宅に戻って食卓につきます。
藤井さんはどんな子供だったのかお母さんに伺いました。
親戚に大工さん大工のおじさんがいて。
一歩間違えればねやっぱりちょっとおかしいっていうくらいの実にうまく使ってるって言うのね。
写生に行ってもねだから写生なんだけども非常に…。
見取り図みたいに。
そうそうそう。
虫と木が大好きだった藤井少年。
これは小学校4年生の時の作品。
魚の外側と中身をスプーンとフォークという道具に制作。
しかし…。
安定した会社員の身分を捨て木工の技術学校に飛び込んだ藤井さん。
年齢は30過ぎゼロからの挑戦。
更には木工を始めて10年目。
工芸界の最高権威日本工芸会の新人賞を受賞。
それは晴れて作家と認められたことを意味します。
高い技術力を武器に将来が約束されたまさにその時大きな試練が訪れました。
3年前利き手の右手を襲った大事故。
しかし奇跡的に無傷だった人さし指とどうにか切断せずに済んだ親指。
2本あればものは握れる。
そう思った藤井さんはリハビリの末バンドで道具を固定し創作を続ける術を身につけます。
そしてそれを境に作風は大きく変わりました。
復帰後初めての作品。
タイトルは座面も脚もすべてが繋がっている有機的な椅子。
ケガをする以前の作品とは明らかに趣を異にする新生藤井スタイルが生まれた瞬間でした。
そんな藤井さんの創作活動を支える大切な場所があります。
ここは名古屋にある老舗の材木店。
木曽川流域の銘木が集積する場所です。
その中から藤井さんのために「これは」という木材を用意してくれるのが社長の…。
でね何かこれは…。
これはこれでね何か…。
これはこれで何か使えますよ。
なんと藤井さんが目を留めたのは木のいい部分ではなくカスカスになった部分。
藤井さんはねわりと思いがけないものをポンっと手に取る。
それを聞くとそれなかなかいい木だから。
とにかく木のことしか頭にない様子の藤井さん。
でもこの腐った木どうしようというのでしょうか?藤井さんは新しいチャレンジをもくろんでいました。
今日はそのためにある陶芸作家のもとへ。
小枝真人さんは鳥や自然をモチーフに染め付けの焼物を作る人気の高い作家さんです。
実は2人は木工と陶芸異素材のコラボによる二人展を計画しているのです。
あのカスカスの木は藤井さんが原木の風合いを残して製材ワックスがけをしました。
それを今度は小枝さんがどうするか。
今まで私が作ってきたものとは同じものではあの存在感に答えが出せなくて…。
そんな時にジーっと見てたら…。
10月。
工房から作品を運び出す藤井さん。
向かうのは二人展の会場です。
さてあのカスカスはどうなったんでしょう?あっ!ありました!白磁の大きな輪っかがつけられています。
これはいったい何?作ったのはやはり道具。
藤井さんが漆塗りの板をこしらえ香炉や花生けを置く台に仕上げました。
10月10日二人展が始まりました。
工芸品とは生活の中で使う道具。
だからテーブルにはコーヒーカップ。
棚には花瓶と異なる物と物とが組み合わさったサマこそが本当の姿。
藤井さんはそんな思いから今いろんな素材いろんな人とのコラボに挑みたいと考えているのです。
いったりきたりしながら。
やっぱり。
名古屋の材木屋さんも駆けつけてくれました。
覚えてます覚えてます。
これあの僕はひょっとして…。
同じ頃ステンドグラス作家の大須賀さんも…。
藤井さんの作った台座に趣向を凝らしたステンドグラスを取り付けランプに仕上げていました。
優しい光を受け木目がいっそう美しく浮かび上がっています。
けれどあの『後ろを向いた少女』の答えはまだ出ていないそうです。
富士山が初雪をまとった頃工房には11月の個展に向け製作に取り組む藤井さんの姿がありました。
道具に幸せを閉じ込めるあなたの真摯さを応援します。
2015/11/07(土) 22:30〜23:00
テレビ大阪1
クロスロード【藤井慎介/木工作家】[字]

木工作家・藤井慎介。いま彼が挑んでいるのは他素材を扱う作家とのコラボレーション。ジャンルの違う工芸アーティストたちと刺激し合い、さらなる高みを目指す。

詳細情報
出演者
【ナビゲーター】
原田泰造
番組内容
木工作業だけにとどまらず材木の買い付けから漆塗りまで、全てをひとりで手掛ける木工作家・藤井慎介。独特な世界観で作られる椅子やテーブルは、それだけでオブジェのような美しさをもちながら機能性にも優れているのが特徴。いま彼が挑んでいるのは他素材を扱う作家とのコラボレーション。陶芸家やステンドグラス作家など、ジャンルの違う工芸アーティストたちとお互いを刺激し合い、さらなる高みを目指す。
番組概要
様々な分野で活躍する、毎回一人(一組)の“挑戦し続ける人”を紹介。彼らが新たなる挑戦に取り組む今の姿を追う。挑戦のきっかけになったもの、大切な人との出会い、成功、挫折、それを乗り越える発想のヒントは何からつかんだのか?そして、彼らのゴールとは?新たにどこへ向かおうとしているのか…。そんなクロスロード(人生の重大な岐路)に着目し、チャレンジし続ける人を応援する“応援ドキュメンタリー”。
音楽
【エンディングテーマ】
「youth」竹原ピストル
(JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)
ホームページ
http://www.tv-tokyo.co.jp/official/crossroad/

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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