伊坂幸太郎さんという作家がおってね。
ぼくは彼の小説を原作とした映画をいくつか観たことがあって、幸運なことにどれもぼくが面白いなと思うものばかりだったもので、小説家というよりは「映画の原作」の人みたいな認識でいたんだけど。
実は一作だけ小説を読んだことがあって、それが最近映画化された「グラスホッパー」だったんだよね。
とっても面白いお話だったから映画の方もずいぶん期待して観に行ったのだけど……いやはや、少し残念な気持ちになってしまった。
やっぱり難しいよ。原作を知っていると期待感を抑えるために自分と駆け引きしなくちゃでさ……。悲しいね。
でもまぁ、それは原作を知る者として仕方のないことなので、これ以上どうこうっていうのはないんだけど、純粋に映画として評価した時に「グラスホッパー」ってどうなのかっていう話をしなきゃならないとしたら……うん、やっぱりちょっと残念だった!ごめん!!
とはいえ良いところもあった(偉そうにごめんなさい)ので、悪いとこと良いとこを同じくらい発表できるように今からぼくがんばるね。
交わらない3人
予告動画はブログとかに埋め込めないようになってた。ジャニーズ的なアレで無理みたい。YouTubeで見れるので、どんなもんか気になる方はぜひ。
あらすじは以下。
仕組まれた事故により恋人を失った教師・鈴木は、復讐のため教員としての職を捨て、裏社会の組織に潜入する。しかし、復讐を遂げようとした相手は「押し屋」と呼ばれる殺し屋によって殺されてしまう。押し屋の正体を探ろうとした鈴木だったが、自らの嘘がばれ、組織から追われる身になってしまう。ハロウィンの夜に渋谷のスクランブル交差点で起こった事故をきっかけに、心に闇を抱えた3人の男の運命が交錯していく様を描いた。
まず1つ目の良いところなんだけど、それが冒頭のシーン。ハロウィンに浮かれる渋谷が収めてあって、それがとても印象的だった。現代っぽくていいじゃん!って思ったよ。
ただ、あらすじに「3人の男の運命が交錯していく様を描いた」ってあるけど、あんま交錯しないからね。これ注意ね。
原作は交錯するよ!?そりゃもうすんごく交わってドンって感じなんだけどさ、映画は違ったね。ラスト近くで山田涼介演じる”蝉”が鈴木(生田斗真)を見て「誰だこいつ」って笑うんだよ。
おい、ふざけんなと。交錯するんじゃなかったんかい、と。
鈴木が主人公として物語の軸になってて、鯨(浅野忠信)と蝉(山田涼介)のエピソードがずーっと別で動いていてる形なんだけど……。
鯨と蝉を見ながら「いつ鈴木とこの2人が出会うのかな!どうなっちゃうのかな!」っていう期待をすればするほど、それと比例するように終盤にがっかりするっていうね。ぶっちゃけ最後まで交わらないからね。びっくりしちゃったよ。
ニアミスはあるし、互いに多少は影響しあっているので、それを交わったっていえばそうなのかもれないけどさ。
でもほら、映画と原作って違うもんだし。それで面白ければいいんだけどね。
伏線のチラ見せ具合ハンパない
まず、どういった層をターゲットにしたのか知らんけど、伏線のチラチラ具合がほんとうに気になって仕方なかったのだよ。
あらすじをもう一回見ていただくと分かると思うんだけど、鈴木は序盤ずっと「押し屋」の正体を追っているのね。で、それがラストに繋がるわけなんだけど、彼の正体をさ、チラチラと分かりやすく見せてくれるわけよ。
いらないよ!そんなの!!
察しちゃうじゃん。物語の全貌、察しちゃうじゃん!!
ぼくは原作を読んでるから仕方ないとこあるけどさ、原作読んでない同行者でさえ、途中でストーリーの仕組みを予想できちゃってガッカリしてたからね。
というか、あんまりチラ見せするもんだから、ぼくはてっきり小説とはまた違った仕掛けがあって、原作を読了していたとしても楽しめるような構成になっているんじゃないかって深読みしちゃってたよ。
押し屋が軸でなくては
原作は「押し屋」がストーリーの軸になっていて、彼を追う形で鯨、蝉、鈴木の運命が交錯していく。
だけど、映画は全く違っていて、寺原会長っていう悪の親玉めがけて人が集まってくる感じなんだ。
これがよくなかったんじゃないかなと思う。
原作は、3人が追う「押し屋」と”物語上の仕掛け”との関係性が濃いゆえに、全体的にまとまりのある構成になっていた印象なんだけど……。
映画はそれとは別のレールを敷いちゃったから、最後まで3人が一堂に会することがなかったし、ゆえに「鯨と蝉って必要だった?」みたいに思えてしまう。
なんだかもったいない。
山田涼介が良い
もったいなんだけど、でもね、ぼくはそこそこジャニ好きなので、山田涼介さんがかっこよかったからわりとオーケー!いいよね!山田くんよかったよ!!
まるで踊るように人を殺してた。素晴らしかった。あの身のこなし、さすがジャニーズといった感じ。
ちょっと狂ったような雰囲気でさ、いやぁ、ファン増えるでこれ。
Twitterで「グラスホッパー」って検索すると、やっぱり女性ファンの「山田様」とか「蝉様」とかっていうツイートをたくさん見つけることができた。彼女らにとって「グラスホッパー」は「山田様の映画」なのだ。ぼくにとっても半分そんな感じだ。
ゆえに!ゆえにやはりもったいないのだ!
原作どおりであれば、蝉が鈴木を助けるっていう、生田斗真と山田涼介の濃厚な絡みを観れたはずだったというのに!!
我々一同、浅野忠信との絡みでは満足できないのである。
くやしい。ただただくやしい。
あ、あと蝉の相棒である岩西(村上淳)もかっこよかった。彼と蝉との掛け合いのシーンとか、電話で話してるシーンとか、グッとくるものがあったよ……。
鈴木の恋人の死は偶然か
こっから本格的にネタバレするので、気を付けて読んでほしい。ラストに言及するからね。
……はい、というわけで、いろいろあって関わる人間がみんな死んで、遊園地のピエロとして第二の人生を歩むことになった鈴木くん。彼の元に「押し屋」の妻(らしき女)が現れて、「押し屋」の正体などストーリーに隠された謎(一応ね)を語りだす。
実は「押し屋」は一人で行動していたのではなく組織として動いていて、「押し屋」の妻はもちろん、子どもたちも組織が用意した他人だってことが明らかになる。
その組織が用意した子どもが、実は鈴木の恋人・百合子(波留)が死の直前に命を助けた少年だった(百合子は少年をかばって死んだ)ってことも分かって、鈴木は少年から百合子が持っていた婚約指輪を受け取り「タイムカプセルだ!」と叫びながら号泣……。
っていうそこらへんの話。
実はけっこう前から寺西会長を殺害する計画は立てられていたようで、鈴木くんはまさにピエロのごとく踊らされていたってことも分かるんだけど、じゃあ彼はいつから踊らされていたのかってのがこの映画のポイントになっている。
劇中では、百合子の死の直後、事件が起きた交差点で鈴木が真犯人を示唆するメッセージを受け取ったところから計画が始まったという風に言及されていて、鈴木も納得して丸く収まったように見えるんだけど……。
でも百合子の死って、事故に巻き込まれたとはいえ、組織に関わる子どもをかばったことが原因だったわけじゃん。
もしかして百合子の死さえも組織によってコントロールされていて、そこから鈴木を操る計画が始まっていたのだとしたら……って考えるとちょっと怖いよね……。
ま、鈴木をひどい目にあわせる動機が見当たらないから「実はそうでした!」って言われても破綻してる感じはあるんだけど。
でも最後の最後で少しだけ「お!」って思ったよ。
言い足りないこと
思い入れが強いので、ちょっと言い足りなかったことをまとめて書いとく。
- 生田斗真のオーラ強くて鈴木じゃない感
- 全体的にテンポが悪い印象
- アクションシーンはかっこよかった
- 佐津川愛美の腹筋
- 山田くんかっこいい(2回目)
といった感じで、もしかしたらこれは山田くんを見るための映画なのかもしれないと思った。星2つ!
栄養士として
あとね、ぼく、栄養士と調理師の免許を持ってまして、一応病院とかで働いたことがあるので言いたくなっちゃったんだけど……。
鈴木と百合子が学校の給食室でイチャイチャしながらケーキ作って食べてるシーンあるでしょ。
あのね、あんなんやったら絶対ダメだからね!!
髪の毛とか落ちたら大変なことなるからね!頭に白いメッシュのアレ付けないとだめ!気をつけて!!