その歌声に触れたい
今コンサートの依頼が後を絶たない。
年に50を超える演奏会が開かれ全国に歌声を届けている
(拍手)いえいえありがとうございます。
実は青野さん気管切開をしている。
歌う事など考えられない
笑顔の向こうに歌声を失った絶望の日々があった
大学で声楽を学んでいた青野さん。
突然呼吸が止まる原因不明の病に襲われた
命を守るための気管切開。
声を失った。
それでも歌いたい
喜び悲しみ全てを歌に込めて声楽家青野浩美さんのブレイクスルー
はいこんにちは。
(取材者)こんにちは。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
自宅を訪ねると青野さんが出迎えてくれました。
脚に力が入らないため車いすを使っています。
中に入ると…。
(取材者)早速なんですけど…。
はい。
(取材者)ピアノですか。
はいそうですね。
我が家のピアノです。
母さん?母さ〜ん!ちょっと。
はい。
(取材者)こんにちは。
お邪魔しております。
ようこそ。
(取材者)よろしくお願いします。
よろしくお願い致します。
母です。
(取材者)そっくりですね。
青野さんがいつも首につけているのはスピーチカニューレと呼ばれる声を出すための特殊な管。
発作が起きた時は人工呼吸器を装着します。
この管をつけて歌う事は簡単ではありません。
(空気が漏れる音)声楽家にとって声量は命。
微妙な力加減で隙間を塞ぐ発声法を編み出しました。
原因不明の病と闘う生活は8年になります。
頂きます。
食事は普通にできますが麺類はちょっと苦手。
(麺をすする音)そっか。
そやなぁ。
(笑い声)…に見えます。
青野さんは2週間に一度必ず病院に通っています。
スピーチカニューレを交換するためです。
イチニのサン。
拭きましょうかね。
こうやったらしゃべれます。
(取材者)あ〜びっくりした。
歌う事は体に大きな負担がかかります。
手で押さえて歌うと粘膜が圧迫され肉芽という腫瘍が出来やすいのです。
望ましいね。
歌えば命に関わるかもしれない。
それでも青野さんは声楽家として歩み続けています。
今日はスタジオに声楽家の青野浩美さんにお越し頂きました。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
きれいな歌声はもちろんなんですけれどもあの声量に驚かされるというか。
びっくりしました。
いやでもこうスピーチカニューレをつけたら今しゃべってるの何の問題もないじゃないですか。
これ皆さんそのようにできるものなんでしょうかね?そうですね。
全員が気管切開されてる方全員が入れたからといって出るものではないんですね。
病気によって例えば声帯がもともとない方であるとか声帯が病気で動きにくい方であるとかそうなるとどうしても声を出すという事自体が難しくなりますよね。
私も初めはとってもちっちゃい声といいますかやっぱり慣れないのですごく大変だったんですけどもリハビリといいますか私の場合はおうちに帰ったりしますと特に母がですねしゃべってても「え?」って言うんですよすぐに。
聞き取ってくれないんですよね。
だから聞いてほしいと思うともう力が入って大きい声大きい声ってやってしまうと今みたいにきちっと音量が出るように勝手になりましたね。
少しだけ生で歌声を聴かせて頂きたいんですけれども可能でしょうか?よろしいですか?お願いします。
ありがとうございます。
じゃあいきます。
うわ〜。
はあ〜!すごい!こうスタジオの空気がふわっと変わるっていう。
何かこう一気に空気を変える力が…。
ワアッと…何て言うんですかね?すっごいきれいになりました。
ありがとうございます。
空気がきれいになる感じ。
浄化システムみたいな。
そのカニューレ自体言ったらずっとつけ続けている訳ですけども体に負担っていうのは?先ほどもちょっと出てましたけども肉芽の問題っていうのはやっぱり一番大きいかなとは思ってます。
ただその肉芽があるからといって歌わないっていうのは私にとってはその方が逆にストレスといいますか負担なのでもちろんリスクはあるのは覚悟してるんですけどもこれからも歌い続けていこうっていうふうに思ってます。
週末家族そろってのバーベキューが青野家の恒例行事。
青野さんは3人兄弟の長女です。
(笑い声)笑とる。
音楽の先生を目指し大学で声楽を学んでいた青野さん。
卒業間近のある日全身に力が入らなくなり倒れました。
検査を繰り返しても原因は不明。
更に突然呼吸が止まる発作に襲われます。
医師から勧められたのは気管切開。
「歌うことは難しい」と告げられました。
もう一度だけ歌いたい。
手術直前家族や友人が舞台を作ってくれました。
(拍手)大切な人たちに見守られて最後のコンサート。
(拍手)やっぱり歌が好き。
ある決意が生まれました。
やってみて挑戦してみてもし私が歌えるようになったら私が前例になる事ができるかもしれないっていうふうに思ったのでうれしくなりましたね。
手術後何種類ものスピーチカニューレを試し懸命の努力を続けた青野さん。
2年後ついに歌声を取り戻します。
今ステージで必ず歌う曲があります。
家族友人多くの人に支えられて今舞台に立っている。
今度は私が歌で誰かの力になりたい。
気管切開の前のコンサートっていうのはどのようなお気持ちで臨んだんでしょうか?やっぱり自分の中ではこれが最後だっていうかケリをつけるではないですけども最後にきちっとそういうものをやらせて頂いて終わろうというふうに思ってやりました。
最後の…その最後の一曲の時ってどんな気持ちで歌われてたんですか?後悔のないように歌おうって思って歌いきるっていうような形で歌いましたね最後の曲は。
お医者様にまあ「しゃべる事は努力すればできるかもしれない。
歌う事は無理だ」っていうふうに言われた時っていうのは…。
すぐ「何でですか?」って聞いてるんですよね私はその時。
なので本当にスッと「やってやろう」と。
食い下がったんですね。
そうかもしれないですね。
「何で?」って。
歌を歌うという事は私にとってはまあ当たり前だったんですよね。
当たり前な事ができなくなる事って考えた事がなくってとっても怖かったんですよね。
一番最初に初めて歌った時…そのリハビリの中でちょいちょいちょいちょい歌って試してみてたんですか?ちょうどその時映画でジブリの「崖の上のポニョ」ですか?ちょうどやってたんだと思うんですよ。
CMとかでよくあの曲が流れてまして「ポニョポニョ」いうやつですね。
あれが流れてきててスピーチカニューレである程度おしゃべりができてたのでこれはいけるんちゃうかなと思って病室でこっそり歌ったんですよね鼻歌で。
歌えたんですよ。
歌えるやん思ってで家に帰ってきてからピアノで今のようなクラシックの曲ですよね歌ったら歌えましたね。
すごいの〜。
もうどんな気持ちでした?「歌えるやん!」っていう時の感覚って…。
いやそれはそれはうれしかったですよね。
この日青野さんは岡山へ向かいました。
次のコンサートで共演する特別な友人とリハーサルをするのです。
高校1年生…3歳の時に気管切開をしました。
将来の夢はドラマーです。
2人は5年前気管切開した患者の集まりで知り合いました。
今回はポップスで共演。
青野さんはウインドシンセサイザーを吹きます。
カンナさんを妹のように思って応援する青野さん。
でも時には…。
青野さんはカンナさんに伝えたい事がありました。
コンサート当日。
青野さんがいつものようにお客さんに語りかけます。
悲しみ苦しみがいつの日か喜びに変わるっていう経験を私はしました。
お呼び致しましょう。
(拍手)いよいよカンナさんの番です。
(拍手)
(拍手)すごい。
今カンナさんのしっかりとしたお言葉がありましたけれどもあれお聞きになった時どう思われましたか?あんなに大人になって自分の思いを人にしゃべるっていう事ができるようになってきたんやなって思ってすごくうれしかったです。
本当にお姉ちゃんっていう感じでしたね。
ビシバシと。
気管切開をした声楽家と言われるのが嫌だったっていうお話があったんですけれども。
私は声楽家として勝負したいって思ってやってるのにそんなふうに言われるのすごく嫌だったんですね。
でも何度も何度もそういう本番を重ねているうちにそれこそ本当に私の話を聞いて泣いて下さる方また同じような状況におられる方が「明日から頑張ろうと思いました」というような言葉を頂いた時にあっこれでいいんやって思えたんですよ。
今は一番声楽家として舞台に立っていて先生になりたいって夢も昔持っていたという事なんですけども今はそこに対してはどんなお気持ちですか?実は私以外の家族はみんな教師なんです。
そうなんですか。
実は父から羨ましいって言われた事がありました。
自分たちは長年30年以上先生をやってても教えられる子どもっていうか関わる事のできる人たちっていうのはすごく人数が限られてるんだけどもお前は本当にすごいたくさんの人とふだん出会う事ができてそういう人たちにもしかしたら何か影響を与える可能性があるっていう事はすごい羨ましいって言ってもらった事があるんです。
そういう意味である意味先生のような事なのかなって。
もう先生ですよね。
すごい挑戦されている青野さんですけどほかに何かやってみたい事ってありますか?音楽以外とかですか?音楽以外で。
よくぞ聞いて下さいました。
私ね泳ぎたいなと思うとるんですよ。
(笑い声)ここだって…ぶっちゃけて穴開いてるじゃないですか。
穴開いてるんですよね。
大敵。
水は大敵なんですよ。
これはやってはいけないって言われるんですけど…。
どっからでも入ってきますもんね水は。
そうですね。
ここから水が入ってくると直で肺に入るので駄目なんですよね本当は。
ふだん講演会で「前例がなければつくればいい」とかいうて偉そうな事言ってる割にはもう自分でね今じゃあ何か前例をつくるために努力してるのかっていうとしてへんなっていうところがあるんで。
いやいや誰も思わないですよそんな事。
自分では思うんですよ。
自分では思うんだ。
なのでもう一つ前例をつくる。
生きてる限り前例をつくる。
前例をつくるって一人1個やれるかやれないかをまだまだいくって事ですよね。
やりたいなって思ってるんですよね。
(青野)何をした訳じゃないのにな。
2015/11/09(月) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV ブレイクスルー41▽私が前例をつくりたい〜声楽家・青野浩美[字][再]
全国各地を回り活躍する声楽家・青野浩美さん(32)。呼吸が止まる発作のため、気管切開している。声を失う絶望をくぐり抜け、再び舞台に立つ青野さんの日々に迫る。
詳細情報
番組内容
プロの声楽家として、全国各地を回り活躍している青野浩美さん(32)。突然呼吸が止まる発作のため、気管切開をしている。一度は声を失うという絶望の日々をさまよったが、「前例がないなら私が作る!」と決心。特殊な器具を付けて歌う方法で、再び舞台に立った。「私より上手な声楽家はたくさんいる。でも、病気や障害という本来ならしなくてもいい経験から伝えられることがある。」と語る青野さん。そのブレイクスルーに迫る。
出演者
【ゲスト】声楽家…青野浩美,【司会】風間俊介,安藤桃子,【語り】Chiko
ジャンル :
福祉 – 障害者
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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