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新資本規制、2段階で 巨大銀の破綻に備え

2015/11/10 1:31
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 日米欧などの金融当局でつくる金融安定理事会(FSB)は9日、金融システムへの影響が大きい「巨大銀行」への新たな規制を発表した。万が一の経営破綻に伴う税投入を避けるためリスク資産に対する社債や資本などの割合を2019年に16%、22年に18%の2段階で引き上げるよう求めた。18%時の追加の調達額は世界全体で約60兆円と試算。大半は中国の銀行の必要分で、3メガバンクなどへの影響は少なそうだ。

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 新規制の対象は世界の金融システムに影響を及ぼしやすい3メガ、英HSBC、米JPモルガン、中国工商銀行など30行。リーマン・ショック後、銀行の経営破綻を避けるため、いわゆる「バーゼル3」の資本規制を導入し、自己資本比率を8%以上に引き上げた。

 今回の新規制は、中でも「大きすぎてつぶせない」問題を抱えた大銀行への対応策。破綻時に損失を吸収する力を高め、金融システムへの悪影響を減らすとともに、国民の税金投入などによる救済を最小限にとどめる目的だ。

 各当局の合意で普通社債の算入を認めたため、銀行がすぐに増資などで資本を積む必要はない。今回の規制は持ち株会社が対象となるため、比率を引き上げるため持ち株会社が傘下銀行に代わって社債を発行できる。3メガは「求められる規制には、問題なく対応できる」という。

 日本向けには預金保険制度に基づく特例も設けられた。銀行は将来の破綻に備えて預金保険料を払い、その金額が既に2兆4000億円弱ある。これを“のりしろ”として資本に算入できることも3メガには有利。3メガからは「利益の積み上げだけで規制の水準を達成できる可能性もある」との声も出ている。

 新規制の影響は日欧米といった先進国の銀行よりも中国に及びそうだ。

 FSBは複数のケースを想定した追加調達額の試算も公表した。不足分をどう算定するかはまだ議論の余地を残すものの、最も穏やかなケースでは18%時点で最低約60兆円とはじいた。ただ、このうち約8割が中国の銀行の不足分に相当する。

 中国の銀行は預金者からお金を集めて、企業などに融資する経営モデルが一般的だ。社債などの長期債市場が発展していないため、リスク資産に占める社債や資本などの絶対額が低い。景気が減速している中国では、今後の貸し倒れ増加の懸念も浮上している。

 銀行規制を巡ってはFSBやバーゼル銀行監督委員会がいくつかの枠組みを同時並行で議論しており、この先も強化される方向だ。「今回の規制は経営努力の範囲で達成可能だが、今後も資本を厚くする必要がある」(金融庁幹部)との見方を示す。

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FSB、中国工商銀行、銀行、新規制、HSBC、JPモルガン

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