番組の司会を務める…宇宙論や量子力学などを分かりやすく解説するサイエンス作家ですが…。
もう一つの顔があるんです。
アロハシャツ。
は〜いごはんだよ!はいごはんですよ〜。
ごはんごはんごはん。
(ネコの鳴き声)あら!ももちゃんももちゃんはい。
いっぱいいる。
これこれこれこれ!現在4匹のネコと同居している竹内薫。
実はこのネコ科学と深〜い関係があるというんです。
うわ〜。
あれはもう頬ずり。
あとはネコの遺伝子ですよね。
今日はネコ大好きサイエンス作家竹内薫が遺伝子の不思議をネコから読み解きます。
今日のテーマは「ネコ」。
はい。
竹内さんの顔デレデレでしたね。
大好きなんですね。
基本もうデレデレですよね。
そして今日はスタジオにもネコちゃんが来てくれたんですね。
三毛猫ちゃんがよりちゃん。
そしてこちらのキジトラさんがせんちゃん。
せんちゃん。
おとなしい。
かわいいですよね。
かわいい〜。
ありがとね〜。
フフフそれにしても今日はネコから遺伝子を学ぶという事でしたけどどういう事ですか?ネコっていうのは遺伝子の不思議を学ぶのにピッタリなんですよ。
例えばこの毛の模様。
ネコって兄弟でも柄が全然違う事があるんですよ。
あっそうなんですか?ちょっとこの親子を見て下さい。
あっ!この3匹の子ネコは兄弟なんですけれどもみ〜んな柄が違うでしょう。
本当ですね!色も全然違いますね。
それではこちらをご覧下さい。
かわいい〜。
かわいい子ネコちゃんですね。
この子ネコ何か気付きますか?えっ?いや…普通のかわいいネコだなっていう。
一見普通に見えるでしょ。
でもこのネコは2002年に世界中をあっと言わせたネコなんですよ。
えっどういう事だろう?なんと世界初のクローンネコなんですよ。
クローンネコですか?クローンっていうのは体の細胞から核移植によって別のネコを作る。
でももとのネコと全く同じ遺伝子を持ってるんですよ。
お〜。
この子ネコのもとになったネコがこちらです。
あれ?何か見た目が全然違います。
でも遺伝子は同じな訳ですよね?全く同じなんです。
えっ!遺伝子全く同じだったら見た目も全く同じになるような気がするんですけど。
不思議でしょ?不思議です。
今日はこのクローンネコの生みの親にその謎を聞いてきました。
2002年科学誌「Nature」に載ったこの記事。
世界初のクローンネコCCが生まれた事を伝える記事です。
こちらがクローンのもとになった三毛猫のレインボー。
これは代理母ネコ。
そして子ネコがクローン技術で生まれたCCです。
ところがもとになったネコレインボーとは見た目が違います。
毛色の模様は同じようにはコピーされなかったのです。
どうして模様が違うのか。
CCの生みの親テキサスA&M大学のクレイマーさんに聞いてみました。
一体どういう事なのでしょうか?そこには遺伝子の不思議な働きが作用しているんです。
ネコは2本1組の染色体を18組持っています。
それ以外にメスならばXの性染色体を2本オスならばXとYの性染色体を1本ずつ持っています。
このX染色体に毛色を茶色にする遺伝子があります。
ラージOと呼ばれています。
同じ場所にスモールoという遺伝子がある事もあります。
スモールoは毛を黒っぽくします。
メスは両親からX染色体を1本ずつもらいます。
両方ともラージOであれば毛の色は茶色になります。
一方両方ともスモールoだと黒っぽくなります。
そしてラージOとスモールoがあると両方の色を受け継ぎます。
これが三毛猫の毛色が決まる仕組みです。
ではなぜCCはレインボーのクローンなのに模様が違うのでしょうか。
よく見るとCCにはレインボーにあった茶色の毛がない事が分かります。
実はCCは茶色の毛を作るラージOのX染色体が働かなくなっていたのです。
その原因はもとになったレインボーにありました。
レインボーも最初は父親と母親から1本ずつX染色体をもらって受精卵から成長しました。
ところが細胞が分裂して増えていく途中である時期になると2本あるX染色体のどちらかが働きをやめ片方だけが働くようになる事が知られています。
そのまま細胞は増えていきやがてラージOだけが働く茶色の部分とスモールoだけが働く黒っぽい部分ができます。
はあ〜つまりレインボーは最初茶色を作る遺伝子も黒を作る遺伝子も両方持っていたけどたまたまCCを作る時に黒色を作る遺伝子が働いてる方を取ってきたから茶色が出なかったという事なんですね。
クレイマーさんたちも最初は黒が出るか茶色が出るか分かんなかったそうなんですよ。
CCが生まれて初めてこれは茶色のX染色体が働いてないんだねって分かったそうなんですよ。
へえ〜。
だけどそもそもどうしてX染色体は1本途中で働かなくなっちゃうんでしょうね。
あ〜それはいい質問ですね。
じゃあここからは専門家に伺いましょうか。
京都大学野生動物研究センターの村山美穂さんです。
(クラクション)
(クラクション)よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
どうしてX染色体は片方しか働かなくなっちゃうんですか?それはX染色体は1本で細胞の成長に必要な遺伝子が全部働くようになっているんです。
へえ〜。
へえ〜1本だけで十分なんですね。
そうですね。
という事は三毛猫のクローンは三毛にならないっていう事なんですね?そうですね。
まだヒトの手ではなかなか制御ができない部分なんです。
そうなんだ。
実は毛色を決める遺伝子ってほかにもあるんですよ。
ほかにもいろいろあるんですか?ええ。
じゃあその一部を見てみましょうか。
先ほどVTRにもありましたようにX染色体には茶色や黒になる遺伝子があります。
それからまた別の色の遺伝子としてはB1染色体にはWという遺伝子があります。
ラージWを持っていると全身が真っ白なネコになります。
へえ〜。
同じ場所にスモールwというタイプを持っていると白くはならないんですね。
へえ〜そうなんだ。
同じB1染色体にはまたラージSという遺伝子もあってこれを持っていると白い斑点ができます。
ラージSは白い斑点スモールsを持っていると斑点ができないです。
これちょっと分かりにくいかもしれないんで分かりやすい例を考えてみましょうか。
例えばですねお父さんとお母さんから両方ともラージSをもらいました。
頭と尻尾だけがしま模様っぽいですね。
あとは全体的に白じゃないですか。
じゃあ今度はお父さんとお母さんからラージSとスモールsをもらったらどうなるでしょうね?え〜そしたらラージSがスモールsになっちゃうから白い部分が減りますよね。
お〜!だからあの模様がもっと広く出るんじゃないですか?正解はこちら!お〜当たりましたね。
やった!本当に白い面積がだいぶ減りましたね。
ですよね。
遺伝子で決まってるんですね。
そうなんです。
CCのもとになったレインボーは三毛猫でしたよね。
はい。
あの場合だと茶色と黒があるのでX染色体のラージOとスモールoがあると。
ほう〜。
でも白い部分もあるのでラージSとスモールsもあると推測できるんですよね。
うわ〜何か模様から遺伝子が推測できるって面白いですね。
ねえ。
ネコは結構特殊なんですよ。
野生のネコ科の動物をちょっと思い出してみて下さい。
あんまり毛色にバリエーションがないような気がしませんか?確かにヒョウはヒョウ柄だしトラもトラ柄。
確かに種によって柄が決まってる感じがしますよね。
えっじゃあどうしてネコはこんなにバリエーションが多いんでしょうか?それはネコは家畜化されてヒトに守られるようになったからだと考えられてます。
へえ〜。
これは2007年に今のイエネコの祖先だという事が分かったリビアヤマネコです。
これもみんな同じような模様をしています。
へえ〜ここからどうやって模様が増えていったんですか?ですから外敵から分かりにくいようにして身を守るためとかそれからネコの場合は狩りをしますので獲物に見つからないためとかいうような意味があるんですがその時に…じゃあもう1万年かけて毛並みが守られてきたって感じなんですね。
そうですね。
このリビアヤマネコから始まったイエネコなんですけれども今ねものすごく品種が増えたんですよ。
お〜いろんな種類。
こうして見ても本当に多様ですよね。
今ではイエネコは100品種ぐらいいるんですね。
最近どの品種からどの品種が生まれたのかを調べる新しい研究方法が発見されたんですよ。
京都大学ウイルス研究所の宮沢孝幸さんです。
今年2月ネコの品種がどのように分かれていったのかを知る全く新しい方法について発表しました。
ネコの遺伝子に潜むウイルス感染の痕跡をたどると品種の系統が分かるというのです。
そのウイルスとはレトロウイルスと呼ばれる特殊な増殖のしかたをするウイルスです。
エイズの原因となるHIVや白血病ウイルスなどが代表的なレトロウイルスです。
レトロウイルスはRNAと呼ばれる遺伝子の設計図と特殊なたんぱく質を持っています。
細胞に感染するとRNAとたんぱく質が入ったカプセルを細胞内に放出します。
するとたんぱく質の働きでRNAがDNAにコピーされ更にそれが二重らせんのDNAになります。
このレトロウイルスから作られたDNAは核の中に入り細胞のDNAに組み込まれます。
この組み込まれたウイルスの設計図を基に正常な細胞がウイルスを作り続けてしまうのです。
しかし通常は…一方生殖細胞に感染が起こると大変な事が起こります。
こうしたDNAに組み込まれて遺伝するウイルスは内在性レトロウイルスと呼ばれます。
宮沢さんたちはさまざまな品種のネコの血液を集め染色体のどこに内在性レトロウイルスがあるのかを調べました。
まず見つかったのはC2という染色体上です。
全てのネコでこの部分に白い印があります。
これは全てのネコが同じ内在性レトロウイルスを持っているという事です。
その後の調べでおよそ300万年前にあるレトロウイルスが感染した痕跡だという事が判明しました。
この事から…更に宮沢さんたちは同じようなウイルス感染の痕跡がほかにもないか探しました。
すると今度はE3という染色体上にRD114というレトロウイルスの痕跡が見つかりました。
その結果は宮沢さんも思いも寄らないものでした。
これがその結果。
内在性レトロウイルスがあるとここが白くなるはずです。
ところがE3に内在性レトロウイルスを持っていたのはヨーロピアンショートヘアアメリカンショートヘアアメリカンカールといった一部のネコだけだったのです。
ほかのネコが持っていないという事から家畜化が始まった1万年前よりあとにレトロウイルスがある1匹のネコに感染しこれらの品種の共通祖先となったという事が分かります。
特に注目なのはアメリカンカールです。
耳が後ろに反り返っている事が特徴で1981年にアメリカの家庭に迷い込んだネコからできた品種です。
そのためどんな祖先を持っているのか分かりませんでした。
ところが内在性レトロウイルスからこのように推測する事ができるのです。
昔アメリカにはイエネコがいませんでした。
そこに大航海時代以降ヨーロッパから多くの人が渡ってきました。
その時にヨーロピアンショートヘアを連れてきた人もいたのでしょう。
これがアメリカンショートヘアになり耳が反り返るような遺伝子変異を持ったものがアメリカンカールになったと考えられるのです。
ネコのDNAの中にウイルスの痕跡があってそれを見ると共通の祖先を持っている事が分かるんですね。
そうなんですね。
実はネコだけじゃなくてヒトのDNAの中にも内在性レトロウイルスが入っている事が分かっています。
へえ〜。
この内在性レトロウイルスの研究というのは最近盛んになってきた分野で…例えば…そうなんですか。
でも体の中にウイルスがあるとそれ作り続けちゃうんですか?そうはならないんです。
ウイルスは入ったのは数十万年前とか古いと1億年くらい前というものもあって既に遺伝子に変異が入っているのでウイルスを作るというのはほとんどありません。
今回見つかった新しいものも既にウイルスの遺伝子が変異しているので大丈夫なんです。
こうやってネコは世界中に広がっていった訳ですがリビアヤマネコからイエネコに変わる過程で性格も変わったらしいんですね。
その性格がどう変わったのかを遺伝子を通じて調べる研究が行われています。
野生のネコ科の動物に比べておとなしい性格のイエネコ。
その性格の変化が遺伝子にも表れているのではないかと考えているのが京都大学の荒堀みのりさんです。
荒堀さんはまずイエネコの性格と遺伝子にどんな関係があるのかを調べる事から始めました。
荒堀さんが訪ねたのはネコカフェです。
お店の人に協力してもらいネコの性格についてアンケートに答えてもらいました。
質問は「おだやかな性格か」「遊び好きか」など30項目に及びます。
次にネコの口の中の細胞を採取しました。
この細胞からDNAを取り出しオキシトシンと呼ばれる物質に関する遺伝子を調べたのです。
オキシトシンとは脳で分泌される物質で神経細胞の末端から放出され受容体と呼ばれる部分で受け取る事で信号を伝えます。
ヒトの研究ではその受容体を作る遺伝子の違いによって信号の伝わりやすさが変化し愛情深さや親しみやすさが変わる事が分かっています。
荒堀さんはネコでもこの遺伝子が性格に影響しているのではないかと考え遺伝子に違いがないか調べました。
オキシトシンの受容体を作る遺伝子はA2と呼ばれる染色体上にあります。
染色体の中にはDNAがありますがDNAは塩基という物質からできています。
更にこの塩基にはCATGという4種類があります。
これがネコのオキシトシン受容体遺伝子の塩基配列の一部です。
荒堀さんが調べた94匹のネコのうち12匹分を表示しています。
基本的にはほとんど同じですが荒堀さんが注目したのはこの部分。
AのネコとGのネコがいる事を突き止めました。
次にこの結果をネコの性格と照らし合わせました。
例えばこのネコは「おだやかな」という項目が2で「ややあてはまらない」。
こちらのネコは同じ部分が6で「あてはまる」でした。
この2匹の遺伝子を解析したところ両親から1本ずつもらう染色体がA/AとG/Gという違いがありました。
こうした比較を94匹のネコ全てで行ったところ遺伝子と性格の違いに関係性が見つかりました。
Aがあるネコはないネコに比べて攻撃性が高いという有意差があったのです。
ネコの遺伝子が性格の違いを生み出している可能性が考えられる初めての成果でした。
え〜遺伝子の違いが性格の違いにも出るんですね。
オキシトシンと関連した遺伝子っていうのはヒトの場合はかなり調べられているみたいですがネコの研究も始まったという事ですかね。
そうですね。
ネコでこうした研究というのは世界的にもとても珍しくてほとんど初めてと言ってもいいと思うんですけれども。
そして荒堀さんたちはアンケートでネコの性格を評価するという事をしていましたけれどもそれ以外にも行動を観察する事とかホルモンを測ったりしていろんな角度からネコの性格というものを調べた上でほかのネコ科の動物の遺伝子も比較したりという事を今後計画しているところです。
これ例えばリビアヤマネコですとA/Aが多くてイエネコになるに従ってG/Gが増えるとかそういう事もあるんですかね?もしそういう事が分かってくるとネコがどういうふうにして家畜化されてヒトにより親しみを持つように選択されてきたのかという事が分かるかもしれませんね。
私たちの以前の研究ではイヌとオオカミを比較したという事があって…私面白いなと思ったのがVTRの荒堀さん心理学科という事でしたけど私も心理学を学んでたんですけどああやって遺伝子の検査をして研究をしていくっていうのちょっと珍しいなって思ったんですけど。
そうですねほかの専門の領域にも踏み込んでやってみたいという人たちが最近増えていていろんな分野を越えてネコを知りたいというような研究がこれから盛んになってくると思います。
そうなんですね。
そのうちネコ学科みたいなのを作って総合的に研究したら面白いかもしれませんね。
性格の研究の中でも特に私たちは今共感性という事に興味を持っています。
それをヒト同士それからヒトと伴侶動物動物同士の間でいろいろな比較をしていく事によって私たちの社会の根底にある行動の意味みたいなものが分かってくるんじゃないかと考えて研究を進めているところです。
今日はせんちゃんとよりちゃんに頑張ってもらいましたがいかがでしたか?いや〜ネコってすごく身近なのに知らない事がすごいたくさんありました。
これから町なかでネコ見かけたら「あの遺伝子持ってるのか」「ラージWが」とかちょっと見方が変わってまたネコを好きになりましたね。
村山さんありがとうございました。
ありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに!2015/11/08(日) 23:30〜00:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「ニャンとも不思議!遺伝子が明かすネコの秘密」[字]
ネコと遺伝子の不思議な関係が、注目を集めている。クローンなのにそっくりにならないネコの毛色の秘密、品種の進化、さらには性格の研究まで。遺伝子から解き明かす!
詳細情報
番組内容
遺伝子研究の成果は“ネコ”にも及んでいる。クローンネコの研究で明らかになる、「ネコがどういう毛色になるのか」の不思議。また、ウイルス感染の痕跡をたどって、「ネコがどのようにして100種類を超える品種に分かれたのか」という研究から、「ネコの遺伝子と性格との深〜い関係」まで。ネコと遺伝子の不思議な関係の数々をご紹介。無類のネコ好きとして知られる番組ナビゲーターの竹内薫もびっくりのネコ特集!
出演者
【ゲスト】京都大学野生動物研究センター教授…村山美穂,【司会】竹内薫,南沢奈央,【語り】筒井亮太郎
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
情報/ワイドショー – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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