IMF(国際通貨基金)のSDR(特別引き出し権)の通貨バスケットへの採用を手始めに自由化が進めば、結果的に人民元は大きく減価するとも予想される。米国自身も人民元が「割高」になりつつあることを認めている。つまり、米国が利上げしても人民元が減価すれば「丸く収まる」。
ところが、8月の人民元切り下げをきっかけに生じたのは、中国を貿易相手国とする新興国の通貨安と株安であり、人民元の減価が解決策ではないことが判明した。中国や新興国が自国通貨の増価を甘受すれば、これらの国々で景気悪化要因となる。どちらに転んでも米国の利上げは新興国不安を介して金融市場の安定を損ねる形となる可能性が高い。
FRB(米連邦準備制度理事会)が「金融市場は安定した」と判断した以上、賃金上昇に確信を持てた段階で12月利上げは決断されるだろう。ただ、FRBの利上げが金融市場に再度の混乱をもたらす可能性は高いといえ、結局、米国の長期金利は低下して戻ってくると予想される。
(SMBC日興証券シニア金利ストラテジスト 野地 慎)