日曜美術館「至宝にこめた天平の祈り 第67回正倉院展」 2015.11.08


古都・奈良。
人々が待ち焦がれるあの展覧会の季節です。
オープン前から1000人を超す長蛇の列。
そう「正倉院展」です。
お目当ては1300年前の貴重な宝物。
今年は63件が出展されています。
シルクロードそして海を渡って伝えられた華やかな楽器。
初公開となる面。
なんとも不思議な顔だちです。
仏教の儀式に用いるフェルトの敷物。
最新の調査から非常に高度な技術で作られたものだと分かりました。
フェルト制作の第一人者がいにしえの技の秘密を探ります。
1300年前とは思えない袈裟。
東大寺大仏を建立した聖武天皇の知られざる思いが見えてきました。
天平文化の輝きを放つ正倉院の至宝。
新たに浮かび上がる魅力を見つめます。
「日曜美術館」です。
この季節がやって来ましたね。
今年で67回目になります「正倉院展」。
年に一度2週間だけ宝物が特別展示公開されます。
実際1300年それ以上のもの…作られた手仕事を目の前で見る大きな機会でもありますし。
今年も海外からもたくさんの方たちもきっと来られると思いますしにぎわうでしょうね。
そうなんですよね。
今年もその感動を是非一緒に分かち合いたいと思います。
奈良国立博物館学芸部長内藤栄さんと一緒にお伝えします。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
いろいろ教えて下さい。
内藤さんまず早速なんですが今年展示されてる紹介されているものの特徴どこにありますか?近年特別に調査された動物の毛に関する宝物。
そして人々の行事特に暮らしが分かるような宝物ですね。
奈良時代には七夕が既に行われていたんですがこの七夕で用いられた行事の関係品ですとかこのようなところに特徴があるかと思います。
じゃあ早速見ていきましょうか。
国際色あふれる豊かな至宝の数々今年の顔ぶれをどうぞご覧下さい。
奈良東大寺。
そのすぐ北にあるのが正倉院です。
1300年にわたって宝物を大切に守り伝えてきました。
幅33mの大きな倉。
宝物の数は9000件に及びます。
扉を開けるのは年に一度。
天皇の許可を携えた勅使が訪れる秋だけです。
宝物の保存のすばらしさは世界でも類を見ないと言われます。
宝物の多くは8世紀のもの。
国際色豊かだった当時の文化を今に伝えます。
大陸から日本にやって来た…高貴な女性が腰からさげた飾りと考えられています。
ひもの先端には琥珀で出来た魚。
全長およそ8センチ。
その体には極細の線でヒレやウロコが精密に刻まれています。
高さ15センチほどの…木画とは木で作るモザイク模様の事。
この箱には象牙や紫檀など南アジア産の珍しい素材が用いられています。
注目はこの細かいモザイク模様。
4種類の素材を精緻に埋め込んでいます。
黒く見えるのは黒柿の木片。
幅は僅か0.7ミリ。
茶色はツゲ。
そして白は象牙です。
隙間に見える部分には金属のすずが埋め込まれていました。
かつてはすずの光沢で箱全体が繊細な光で包まれていました。
気の遠くなるほど手がかけられた最高級品です。
今回高いデザイン性でとりわけ注目されているのが…東大寺の法要で用いられたペルシャ由来の楽器です。
撥の当たる革で出来た部分には朱や黒で絵が描かれています。
深い山の麓を水が流れその傍らには2人の男性がいます。
筆と紙を手にどうやら詩を詠んでいるようです。
裏側は鮮やかな花の文様が一面を覆っています。
白い花びらは象牙。
緑の部分は染めたシカの角。
赤茶色の部分には紫檀の木が使われています。
正倉院は高い芸術性と優れた技術を1300年守り伝えてきたのです。
貴重な宝物が多く集められたのは聖武天皇の時代です。
聖武天皇は遣唐使を送り日本を唐と対等な国にしていこうと決意します。
華やかな品々だけでなく唐の暮らしや考え方まで積極的に取り入れました。
その中には現代に受け継がれる風習があります。
京都冷泉家で毎年行われる「乞巧奠」。
今の七夕祭りの原形です。
日本の聖武天皇の頃というのも現在までも昔から大切にされてきたものがず〜っと大切にされてきたんですよね。
その国はやっぱり世界ではほんとにないしだから歴史が続いてるという事ですよね。
五色の糸や楽器和歌をお供えします。
かつては蹴まりもしました。
(冷泉)本来はね日の高いうちから蹴まりで…蹴まりを上げるまあ「上げまり」というんですけれどもお供えするという意味もあるしまた楽しむという意味もあると思いますけどね。
夕方早いうちから雅楽をします。
雅楽っていうのはお星さんにあげるものですけど雅楽のあと披講と申しまして歌を詠み上げる行事があります。
これもやっぱりお星さんにあげる。
お供えをするのは織り姫と彦星です。
特に女性たちは織り姫に思いをはせ裁縫の上達を願いました。
当時の乞巧奠で供えられた針と糸が展示されています。
「鉄針」。
長さ30センチ。
儀式のために作られた特大の針です。
赤い絹糸が通されたままの形で伝わっています。
「黄色縷」糸玉です。
繭のようなきれいな形で供えた事がうかがえます。
七夕の空に技能の上達をいちずに願う。
今も昔も変わらぬ思いです。
象牙を紅く染めて作られたものさしです。
これもある日の儀式に使われました。
何だと思いますか?昼と夜の長さが等しい日春分です。
2月2日唐では皇帝が臣下にものさしを与える習わしがありました。
人々が使う長さを統一して国を一つにまとめようとした唐の皇帝の考えを取り入れようとしたのかもしれません。
このものさしは縁起の良い絵柄で埋め尽くされています。
つがいのオシドリや飛び行く2羽のツル。
人々がこうした姿を見かけるのは国で良い行いがあるからだと考えられていました。
深い山渦巻く水辺。
この鏡には理想の自然界がうたわれています。
見つめ合う2頭のシカ。
仲良く空を飛ぶ鳥。
サルが山を駆けその横にウサギもいます。
自然豊かな行事や縁起の良い文様。
宝物は今の日本の暮らしの原形がこの時代に多く見られる事を語りかけてきます。
う〜ん…ねぇ。
堪能しましたねいきなり。
堪能しましたね。
宝物からその当時の生活習慣が見えてくるというのはとても面白い事ですけれども目が喜びますね。
ほんとに目も心もこう潤ってくるというかねこんなにワクワクするんだなあって改めて今VTRで。
今ご覧頂いているこの琵琶を例えば例に取りますともともとこの四弦の琵琶これはペルシャで生まれましてそしてそれがやがて日本に伝わってきたんですがここに使われている素材は日本にはない木が用いられているものなんですね。
あるいは動物の素材が。
で先ほど表側の桿撥の部分の山水の絵がございましたがあれは恐らく中国の理想郷というんでしょうかねそういうものを表現してると思うんです。
そういう点でも世界各地の文化がここに凝縮されていると言ってよいと思いますね。
今ご覧頂いているこの背面恐らく演奏中にはほとんど人目に触れる事はないと思うんですがそちらにこういう工芸技法の粋が凝らされていまして。
これは紫檀この紫檀をですねまずは彫り込みましてここに象牙ですとかそして緑色に染めたシカの角。
ツゲという赤い色の木もありますね。
そしてもう一回紫檀も使っておりましてこういうさまざまな木を埋め込んでいくんです。
こういうふうな高い技術というのはもちろん後々の時代にも継承されていきました。
まさに日本の工芸のある意味では出発点であり原点として後世に多くの影響を与えていったものなんです。
アップにして見るとそこまでどうして細かくやるんだっていうところまでもほんとに細かい…。
うわ〜ねぇ…。
仕事がされてますもんね…。
この緑色はシカの角を緑色に染めたものなんですか。
そうなんです。
もちろん一部分抜けていた場所がありましてそういうところは後世の人これ明治の人が修理してるんですがなかなかこの染めの技法が復元できなくてですねだいぶ苦労していろんな事をしてようやく染める事ができたというふうに聞いてます。
文様といえばですけれどもあの紅く染めた象牙の尺。
これは…!もうずっと見ていられる…。
「紅牙撥鏤尺」という30センチぐらいのものさしなんですが。
これ象牙を紅く染めまして。
象牙は奥まで染まらないんですね。
ですので削っていきますとこういう白い色が出てきて。
そして更に部分的に緑青をですね練り物の状態にしている緑青を埋め込んでいるわけなんです。
この模様そのものの形というかいろんなやっぱり意味があるんですよねきっとこの模様になっているというのは。
まずつがいの鳥というのはまさに幸せというんでしょうかやがて子孫を多く産むというようなそういう一つのおめでたい象徴でもありますね。
また他のこういう鳥の中にはリボンをくわえた飾りをくわえた鳥がおりましてこれなどはまさに人のところにそういうリボンそして宝石飾りをくわえて飛んできてくれるという。
そういうふうなおめでたい意匠にもなっているわけなんです。
縁起を担ぐというその考え方っていうのはどのような流れで大切にされてきたものなんでしょうか?まず古代において天候であるとかあるいは地震が起きる。
そういうさまざまな自然の現象というのは言ってみれば天がつかさどっているものでありその天から使命を受けている皇帝であるとか天皇が天候のそして自然の営みの責任を負っているという思想があったんですね。
ですから雨が降る降らない。
それはまさに為政者の責任であったわけなんです。
ですから何かこういう例えばおめでたい事があったりするとこれはきっといいしるしであろうとそういうふうに考えてですねこういうおめでたい瑞祥の意匠というものを特に重んじていたんだと思うんですね。
こういういいしるしが描かれるという事はつまり今はいい時代だなという事を暗に表現している。
ええ。
ほぉ〜…。
…と思ってまた見ると見え方がただかわいらしいなっていう事だけではないという事が十二分に伝わってきますね。
そうですね。
東大寺で行われた大仏の開眼1250年を記念した法要です。
繰り広げられたのは当時を再現したさまざまな歌舞音曲。

(演奏)正倉院には「伎楽」と呼ばれる音楽劇をはじめにぎやかな当時をしのばせる品も多く収められています。
頭の上で結ったまげ。
ぎっとかみしめた口元。
心優しい「力士」の伎楽面です。
今年初めて展示されました。
面はキリの木。
ひげにはイノシシの毛。
目と歯には銀の粉を混ぜた絵の具が使われています。
迫力はあるのに思わず笑みを誘う不思議な面です。
聖武天皇愛用の笛です。
木や竹ではなく蛇紋岩という岩石をくり抜いて作った珍品です。
表面を埋め尽くす花や草鳥のさまざまな彫刻。
こうした品は仏教の法要で用いられる事があったと考えられています。
あたかも竹で出来ているように節の形をあしらったデザイン。
横笛と同じく石で作られた珍しい尺八です。
聖武天皇がこうした仏教にまつわる品を大切にしたのには理由がありました。
当時の日本が数々の悲劇に見舞われたからです。
東海や近畿地方を襲った大きな地震。
更に病気や飢きんなども相次ぎ国は乱れました。
そうした中聖武天皇がよりどころとしたのが仏教でした。
国を災害から守り人々の平安を祈るため大仏を建立し自らも出家しました。
聖武天皇の仏教への強い思いをしのばせる品があります。
舶来の敷物「花氈」です。
当時唐で流行した花の模様。
花びらを立体的に見せる見事なデザインです。
こうした花氈は法要を華やかに演出したと考えられています。
聖武天皇と大仏建立に尽力したインド僧菩提僊那の肖像画です。
2人が座っているのが舶来の敷物です。
この花氈は何の毛で作られたのか。
1994年の調査で寒冷地に生息するヤギカシミアと推定されました。
しかし去年専門家たちによる調査が行われ新たな事実が判明しました。
調査を手がけた現代フェルト作家のジョリー・ジョンソンさんです。
手がかりは敷物に付着していた一粒の種でした。
中国などに分布する「オナモミ」という植物の種だと分かりました。
更に繊維の形を詳しく調べた結果敷物は大陸のヒツジの毛から作られた事が判明したのです。
見て触ってやはりセンスで羊毛と思いました。
なぜ天皇ゆかりの花氈がやわらかな高級品のカシミアではなく羊毛なのか。
その理由は羊毛で作ったフェルトの特性にあるとジョンソンさんは考えています。
調査で判明した当時の作り方を見せてもらいました。
比較のためカシミアでもフェルトを作ります。
青く染めているのが羊毛。
赤いものがカシミアです。
この色のついた毛でまず模様の部分を作ります。
そこに白い毛をかぶせていきます。
羊毛とカシミアで同じ面積にしました。
50度のお湯をかけ繊維を縮めます。
繊維同士を絡めるためです。
更に転がして圧力を加えていきます。
20分後。
カシミアと羊毛に違いが出てきました。
カシミアに比べ羊毛のフェルトが大きく縮んでいたのです。
熱で縮みやすい羊毛でフェルトを作ると繊維が幾重にも絡まり厚みがあって耐久性が高くなるといいます。
カシミアの方はちょっと伸びやすい。
羊毛の場合はちいちゃくなる。
ちょっと触ったらもうカチカチのひげのような感じの表面です。
一方で羊毛には欠点もあります。
縮む時に模様がゆがみやすく意図したとおりの絵柄を作るのが難しいのです。
ところが宝物の花氈では絵柄にほとんどゆがみが見られません。
縮んだあとまで計算に入れた当時の最高水準の技術が注がれた敷物だとジョンソンさんは考えています。
模様がつれる可能性が多いけど正倉院の場合は…すばらしいと思います。
難しい。
どうしても。
世界中大事な大変なコレクションと思います。
祈りのために座り続けても傷まない華やかな羊毛の敷物。
仏を敬い国を救おうとした聖武天皇の切実な姿が浮かび上がってきます。
再度調べるとより千数百年前の真実にまた近づけるというそこもこの「正倉院展」の毎年の面白さでもありますよねぇ…。
人間のこういう技術というのはある意味ある一面では進んでいくところもありますがだんだんと途絶えていってしまうものもありまして。
特に奈良時代この時代には一つの頂点にいってると思います。
そしてとても「わ!」って前のめりになってしまうのがあの面。
あの表情がとても…。
表情いいですね。
「力士」。
ええ。
これはキリの木で出来ているんですがこの内側に「周防」という2文字が墨で書かれておりましてね。
周防って山口の…?そうです。
山口県の周防ですね。
という事はこちらは周防国で作られてそれが東大寺に持ってこられたんだと思うんです。
都を離れた…その山口まあ地方性の一つの表れじゃないかなと思いますね。
とにかくその儀式というのがにぎやかで音ももちろんありこうした演技というか演出の部分もありでとても華やかであるというのはどういう意味があるんですか?ねらいが。
現代の我々からいたしますと法事…まあ仏教の行事というのはかなり堅苦しいイメージがあるかもしれません。
ところが奈良時代にはこういう演劇ですとか音楽舞さまざまなものを仏に奉納するという形で上演していたんですね。
仏教は当時における最新の学問であり最新の科学でありそういう最先端の文化だったんですね。
ですからそこに外国のさまざまな文化が盛り込まれてゆきそれを披露する場でもあったわけなんです。
とても象徴的な行事というか法事って…今でいうと仏教に関する行事というと厳かで静かでっていうイメージが勝手にありますけれども今ある一番いいものをお見せする場でもあった…。
そうですね。
それを仏に奉納するという場であったと思うんですね。
なぜそこまで手間暇かけて宝物をこしらえていくのかというのもよく分かってきますね。
そしてその聖武天皇がいかに仏教というものをとても心から…心のよりどころにしていたという事も分かってきますね。
ええ。
さあそして今回出品された最も大事な宝物も仏教に関係するものでした。
正倉院宝物の詳細を記したいわばリストです。
リストのトップにあるのが袈裟です。
仏教をあつく敬う聖武天皇にとって袈裟は何よりも大切なものでした。
袈裟は僧侶が肩から掛ける一枚の布。
仏への帰依を象徴する特別なものです。
今回展示されたのはとりわけ聖武天皇と仏教との深い関わりを物語る袈裟です。
横幅3m。
絹で仕立ててあります。
絹の寿命は800年とされていますがこの袈裟は1300年経てもほとんど傷みが見られません。
いかに大切に保管されてきたかが分かります。
実はこの袈裟は金剛智三蔵という人物から贈られたものだとリストに記載されています。
金剛智はインド出身の僧侶です。
「密教」と呼ばれる当時最新の仏教の教えを唐に広めました。
密教には人々の願いをかなえる強い力があるとされ日本には最澄や空海が平安時代にもたらしました。
しかし近年の研究でこの袈裟から空海たちの密教伝来より半世紀も前に聖武天皇が密教に触れていた可能性が分かってきました。
更にこの袈裟にはもう一つの大きな謎がある事が知られています。
布を拡大すると糸が複雑に絡まりレースのようなひし形模様になっている事が分かります。
「羅」と呼ばれる織り方です。
基本的な織物では縦糸と横糸は直角に交わるように織られてゆきます。
ところが羅では離れた位置にある2本の縦糸がより合わされています。
長い間どのように織るのか分からなかった幻の技法です。
羅はどのように織られたのか。
謎に挑んだのが京都西陣の職人たちでした。
昭和の初めこの工場では20年をかけ羅の再現に成功。
今ではその技術を生かし和服の帯を生産しています。
成功の鍵は「フルエ」と呼ばれる縦糸を操作する部品を取り入れた事にありました。
フルエの白い糸は縦糸の間に模様の規則に従って仕込んであります。
ペダルの操作によってフルエの糸で縦糸が引っ張られ絡み合います。
正倉院の羅には更に驚きが隠されていました。
工場で技術顧問を務める徳倉修さんは10年前正倉院の羅の復元に取り組みました。
その時羅の絹糸が予想以上に細い事に気付きました。
(徳倉)非常に切れやすくそして糸そのものがけばだちやすい非常に弱い糸でありますのでそれが織物に対していろいろと悪さをする原因にもなるわけなんで…。
そういうふうなものが一切見られんときれいな羅が出来てるという。
その技術のすばらしさといいますか…。
織物職人たちは聖武天皇の袈裟が当時の技術の粋を集めて作られた最高級品である事を明らかにしたのです。
最新の仏教を伝える高僧から授けられた袈裟。
どこまでも仏教の可能性に懸けた聖武天皇の知られざる姿が浮かび上がってきます。
「国家珍宝帳」のいわばリストの一番最初に載っている「羅」という織り方の袈裟ですけれどもこれはやはり本物を見ないとなかなかそのすごさがより直接的には分からないような気もしますが実際どんなものなんですか?内藤さん。
これどうやって作られていたかといいますと先ほどもございましたが薄いレース状のきれなんですね。
それを重ねてゆきまして重なった部分を帯のように見せているんです。
ですので濃く見える帯の部分ここはですね別のきれを擁してるんじゃなくて重ねているだけなんですね。
それを見て頂くだけでもどのくらい薄い素材を使っているのかという事がお分かり頂けると思います。
そもそもその「国家珍宝帳」とは一体どういうものなんでしょうか?「国家珍宝帳」は聖武天皇の宝物のリストなんですね。
まず最初に願文が出てきましてそしてそれに続けて聖武天皇がお持ちになっていた6百数十件の宝物が並べられているんです。
その中で今回出陳されております袈裟がですね宝物の一番最初に出てくるんですね。
ですから聖武天皇にとってこの袈裟というものは非常に重要なものであったという事が分かります。
そしてとにかく最高級品であるという事は分かったんですけどその袈裟をまとう事の意味意味合いというのはどういうところにありますか?まず本来袈裟というものは人々から施しを受けた布を集めまして一旦それをみんなほぐしてから刺し子にして作るというパッチワークみたいなものなんですね。
ところがこちらはそれとは全く違う最高級品でございまして。
これは例えば中国の唐におきまして皇帝からですね優れたお坊さんに対してこの羅の袈裟ですとか絹の袈裟を賜るというそういう事がございました。
こちらが果たしてどういう来歴かというのはなかなか分からないんですけどもこれだけの品物になりますとかなり高い技術を持っている人が作りそれをまず最初に金剛智三蔵に着て頂いたと。
そういうものではないかと思いますね。
聖武天皇は晩年に鑑真和上につきまして戒律を授かっているんですね。
そして出家までされているんです。
ですから聖武天皇にとって袈裟というのは非常に大事なものであり自分も仏教徒の一人である仏弟子であるという事を示すための意識するための宝物ではなかったかと思いますね。
あのほんとにこう改めて今年特別展示されている宝物から伝わる事内藤さんは個人的にはどういうふうなものが伝わるといいなというふうに思ってらっしゃいますか?正倉院宝物といいますものはたまたま残ってきたものではなくて多くの人の努力によって守られてきたものなんですね。
それは東大寺のお坊さんの努力もありあるいは明治以降にですね宝物に携わってきた人々の努力そういうものがこの宝物を守ってきたわけなんです。
そこからさまざまな現代に…例えば工芸技法を復活しよう。
あるいはさまざまな古代の営みをもう一度知ろうという時にこの正倉院宝物がもたらしてくれる情報は極めて大きいわけなんです。
こういうものを「正倉院展」でもまた皆さんに感じ取って頂きたいと思っています。
今年も貴重なお話をどうもありがとうございました。
2015/11/08(日) 20:00〜20:45
NHKEテレ1大阪
日曜美術館「至宝にこめた天平の祈り 第67回正倉院展」[字][再]

10月24日から奈良国立博物館で開かれている第67回正倉院展。聖武天皇遺愛の品々など、正倉院が長きにわたって守り伝えてきた、63点の天平の至宝が展示される。

詳細情報
番組内容
希少な木片や象牙を用い、精緻な模様をあしらった琵琶。ウミガメの一種タイマイの背甲を用いた仏具。第67回正倉院展に出展される63点の至宝は、唐と日本が盛んに交易した時代を知る、貴重な手がかりとなっている。また、東大寺大仏にささげられた「七条褐色紬袈裟」など、当時の最高水準の技法で作られた宝物も数多い。国家鎮護のため仏に祈りをささげた、聖武天皇の遺愛の品々。華麗な法具にこめられた思いに迫る。
出演者
【ゲスト】奈良国立博物館学芸部長…内藤栄,【出演】ジョリー・ジョンソン,【司会】井浦新,伊東敏恵

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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