チンパンジーが障害児ケア 京大、野生家族で初確認
重度の先天性障害がある野生チンパンジーの赤ん坊が、生後約2年間、母親や姉に保護されて育った事例を、京都大野生動物研究センターの中村美知夫准教授と理学研究科大学院生の松本卓也さんが発見した。障害者をケアする人類社会の成立を考える上で重要な成果という。10日、日本の霊長類学誌で発表する。
中村准教授らはアフリカのタンザニアで野生チンパンジーを研究。2011年1月から生後間もない赤ん坊のメスを観察し始めた。その後、腹部にこぶなどがあり、知的障害もみられると分かった。
赤ん坊は成長しても座れず、母親にしっかりとしがみつけなかった。母親は赤ん坊を抱えて移動し、食事で木に登っても手を離せず、不自由していたという。赤ん坊の姉も世話するなど、血縁同士で助け合って育てる様子もうかがわれた。
12年12月に赤ん坊はいなくなり、死亡したとみられる。原因は不明という。中村准教授は「長く生きるのは難しかっただろうが、母親が苦労して世話を続けた様子を観察できた。他の事例がないか研究し、弱い立場の仲間を助けるような社会が成立する背景を探りたい」と話している。
【 2015年11月09日 21時00分 】