昔むかし漁師の息子で浦島太郎という若者がおりました。
よく海に出ては魚を獲っていました。
えいほれほれほれ。
ほれほれほれ。
(浦島太郎)かわいそうに亀よ。
えっ?これでその亀を譲ってくれんか?わ〜い銭じゃ銭じゃ。
お前またここに来れば子供たちにいじめられるぞ。
二度と来るな。
ある日浦島は魚を釣りに海へ出ました。
なんじゃこの前の亀か。
これはこれは浦島さん。
この前は助けていただいてどうもありがとうございました。
こりゃあ驚いた!いや〜なんの恩返しもできませんがわしの背中に乗ってくだせえ。
そんな小さい背中にどうやって乗る?ご心配いりません。
あっうわ〜!わしは水の中では息が続かんぞ。
ご心配いりません竜宮城へお連れしますから。
おっおいうわ〜。
おっ。
あれが竜宮城でございます。
よくおいでくださいました。
は?ここはいったい。
亀は光り輝き姿を変えました。
そしてそれは美しい乙姫様になりました。
ああなたは。
私はこの城の乙姫です。
乙姫様。
はい。
ではごちそうを用意してございますあちらへ。
浦島は毎日おいしいものを食べて楽しく暮らしました。
ここは珍しいところです。
いろいろご案内してさしあげます。
春の間です。
おぉなんと見事な桜じゃ。
乙姫が案内したのはひと間開けるごとに四季が変わる不思議な部屋でした。
ご覧ください田植えが始まりました。
美しい田んぼだ。
「ハァドンゴラドンゴラコレコレ」それでは次の間を開けてみましょう。
(セミの鳴き声)夏の間です。
「ハラヤーハトナァー」賑やかですね。
本当に。
「ソレソレソレホッホ〜イ」ホホホホ。
秋の間です。
うわ〜すっかり稲が刈り取られていますね。
山もすっかり赤くなってきれいだ。
空も山も川も四季折々美しい姿を見せてくれます。
では4つ目の門を開けてみましょう。
冬の間です。
私の父母や兄弟はどうしているんでしょう。
もうわしは帰らにゃいけん。
ここに来てからずいぶん月日が経ちます。
どうか帰らずにここにずっといてください。
そういうわけには…。
私が帰らないのでとても心配しているはずです。
わかりました。
寂しいことですがしかたがありません。
ではこの玉手箱を持っていってください。
これを持っていればまたここに戻ってくることができます。
しかし決してフタを開けてはなりません。
わかりました約束します。
浦島は玉手箱を持ってふるさとへと帰っていきました。
《おかしいなこんなお屋敷なかったのに。
あっあの道は見覚えがあるぞ》家がない…。
おとっつぁんおっかさんは?じいさん。
お?何だね?この先の草地に浦島という者が住んでいたはずなんだが。
知らんな昔からあのとおりの草地じゃ。
待てよそういえば浦島の名を刻んだ墓が丘の上にあったな。
えっ!?浦島は竜宮城で1年間過ごしましたがふるさとでは100年以上も時が過ぎていたのです。
うぅっ…おとっつぁんおっかさん。
申し訳ございませんでした。
浦島のいた村はまったく様変わりしていました。
親兄弟や知っている人もとうの昔にいなくなり浦島に残っているのは深い孤独だけでした。
そうだ。
この玉手箱の中には何が入っているんだろう?これを持っていればここに戻ってくることができます。
しかし決してフタを開けてはなりません開けるなだと。
何が入っているのか見てやる。
うわ〜。
浦島は約束を破って玉手箱を開けると白い煙を浴びて老人になってしまいました。
そして浦島の魂は鶴となって空高く飛んでいきました。
乙姫様は浦島を追うように亀になって一緒に飛んでいきました。
行く先は不老不死の国。
そこで鶴と亀は永遠に暮らしたということです。
これは長崎の松浦に伝えられたお話です。
10月も過ぎた頃渡り鳥の鶴がこの辺りを渡ってきた。
(太郎べえ)今年もやってきたな。
そんな村に太郎べえ夫婦は住んでいた。
うむ怪しい雲じゃ。
今夜は荒れるぞ。
太郎べえが言ったとおりその日の夜はたいへんな嵐となった。
太郎べえ夫婦は寄り添って嵐の過ぎるのを待った。
今日の嵐で明日はたくさんたきぎが拾える。
木の実もどっさり落ちとる。
そうじゃのう。
(2人)アハハハ。
やがて夜が明けると雨もやみまぶしい太陽が顔を出した。
早速山に入った太郎べえ。
思ったとおりたくさんの木の枝と木の実が落ちていた。
太郎べえは大忙し。
いっぱい拾った太郎べえは山を下りることにした。
お〜い。
太郎べえを呼ぶ声がしたので振り向くとそこに大きな鶴がいた。
わしを呼んだか?ああ呼んだ。
お前話せるのか?ああ話せるとも。
わしはな昨日の嵐で地上に落ちて羽と足を痛めて動くことができなくなったんじゃ。
しばらくお前の家に置いてくれんか?そりゃあ難儀なこったいいとも。
太郎べえは鶴をおんぶして帰ることになった。
家に着くとおばあさんはビックリ。
その鶴どうしただ!太郎べえは山での出来事を話した。
それはいいことをしたな。
厄介になるよおばあさん。
あれま話をしたわ!それからというもの太郎べえ夫婦は大忙し。
なにしろこの鶴食べるわ食べるわ。
次は何が食べたいこれが食べたいと注文が多い。
それでも太郎べえ夫婦はやんちゃな子供ができたような嬉しさだった。
毎日鶴を見るのが楽しみだった。
かわいいのう。
ほんとにかわいい。
そんな日々が続いたある日。
寝ていると朝方早く。
おじいさんおばあさんおじいさんおばあさん。
おかげですっかり元気になったのでみんなのところへ帰りますどうもありがとうございました。
助けていただいたお礼にここに私のフンを残しました。
このフンを顔に塗ってください。
きっといいことがあります。
そう言い残すと鶴は飛び立っていった。
太郎べえは困った。
この鶴のフンどうしたものかと…。
これを顔に塗るのか。
大丈夫かしら。
お前先に塗ってみな。
嫌だよあんたが先に。
いやお前から。
じゃあ一緒に塗るか。
そうしましょう。
どうじゃ?まあフンまみれじゃ。
(2人)アハハハハハハ。
お前若返っとる。
あんたもじゃ。
こりゃおったまげた。
昔のまんまじゃ。
いつまでも手鏡をのぞく2人だった。
そうだ次郎べえさんのところにも持っていくべ。
次郎べえも太郎べえと同じ老夫婦だった。
(太郎べえ)まだ半分残っとる。
(戸を叩く音)次郎べえさん次郎べえさん。
(次郎べえ)誰じゃろう?こんな朝早くに。
あれ?どなたでしたかのう?わしじゃ太郎べえじゃ。
えっ!確かに若い頃の太郎べえじゃ。
太郎べえは今までのことを話した。
でもこれ鶴のフンだろ。
これを顔に塗るのか?お前塗れるか?私塗ります。
昔の私に戻れるなら。
そうかお前が塗るのならわしも塗る。
2人は残ったフンを顔に塗った。
ちょっと臭いな。
そうですね。
おやおやお前若くなったぞ。
あんたも。
(2人)若くなった若くなった昔のように若くなった。
(次郎べえ)わしはカネも田畑も持っとる。
だが年をとって老いぼれた。
それが若さを取り戻すことができたんじゃ。
お前のおかげだ。
お礼にわしの財産を半分やろう。
よかったなぁ。
嬉しいわ。
鶴のフンで若返ったという噂は村中に広まってニワトリのフンはどうかと試す者ハトスズメツバメのフンを集める者も出たがどれも効き目はなかった。
(太郎べえ)もうすぐ正月じゃ。
鶴のおかげで今年は本当にいい年だった。
来年もいい年になるよう正月飾りを作りましょう。
鶴の恩を忘れないようにつるしばを使って鶴の羽らしくうらじろを付けて鶴のシッポにしいの木の葉を付けて。
はい出来上がり。
正月には今年も縁起のよい年になりますようにと鶴の正月飾りを作るようになったという。
あれはめったに出ない若返りのフン。
鶴のフン返しですよオホホホホ…。
昔むかしあるところに五助という若者がおりました。
家が貧しかったので小さい頃から町の小間物屋へ奉公に出ていました。
店では五助どんと呼ばれ朝から晩まで掃除使い走り大工仕事何から何まで1人でやらされていました。
ある日店の主人がみんなを呼び出し…。
わしも年じゃ。
そろそろ隠居しようと思う。
そこで今日からみんなに商売をしてもらうことにした。
店の品物をそれぞれに割り当てる。
半年の間に全部売り切った者を娘の婿にして店の財産を全部やろう。
(みんな)おぉ〜!娘は町一番の器量よし。
財産も数え切れないほどあります。
我先にと割り当てられた品物を運び出すと次々と行商の旅へ出ていきました。
最後に残った五助どんにはタワシと綱が割り当てられました。
商売などしたことがなくどうしてよいかわからないので知恵を借りるため村へ帰ることにしました。
戻ってみると母親が日ごろの無理がたたり寝込んでおりました。
忙しいとき悪いねぇ。
(五助)いいんだよ。
これを1人で売るのか。
大変じゃなぁ。
半年あるからゆっくり考えるよ。
それよりおっかあ湯に入ってさっぱりしよう。
体が楽になるよ。
それが…。
ん?あっ!ハハハハハこりゃ無理だ。
明日庄屋さんのところで借りてくるよ。
次の日庄屋さんに事情を話すと快く貸してくれました。
汚れがひどかったので井戸端を借りきれいにしてから持って帰ることにしました。
なんで入らんのじゃ?ハハハハハ。
ん?竹が曲がっているのでうまく入っていかんのじゃ。
五助どんは商売はできませんが毎日雑用をこなしていましたので修理はお手のもの。
桶を借りるお礼に持ってきた綱であっという間に直してしまいました。
おぉ!すごい。
おっ直ったのか。
立派な綱じゃな。
どっから持ってきた?うちの店で売っているものです。
親類の者たちにも教えてやろう。
とりあえず5束ほどもらおうか。
え?あ…ありがとうございます。
このタワシは?お店の品物です。
これで磨いたのか?はい。
それではこれも10個もらおう。
俺は2個。
俺は1個。
俺も。
あっありがとうございます。
この他にタワシはないのかい?え?タワシはこれだけですが。
俺は馬や牛の世話をしとるんじゃがワラで体をふいてやるととても喜ぶんじゃ。
でも毎度まいど使い捨てているので不便でな。
前からやわらかいタワシがあれば欲しいと思っとったんじゃ。
《タワシは硬いものと決まっとる。
やわらかいタワシと言われてもなぁ》
(五助)湯冷めするから早く寝るといい。
あぁ。
もったいないからおっとうも入ったらどうだ。
あぁこれが終わったらな。
その袋は?野菜とかちょっとしたものを入れる袋じゃ。
庄屋さんに何かお礼をと思ってな。
今日はたくさん買っていただいたからな。
お店の綱を使えば丈夫なものができるが売り物に手をつけるわけにはいかんからな。
《そうか今あるものでも工夫すれば新しいものが出来るかも》お店にはいろいろと便利なものが揃っていましたが使い勝手の悪いものも多く不便を感じておりました。
お店の綱を使えば丈夫な網や袋が出来ます。
ワラを編んで作れば安くてやわらかいタワシが出来ます。
使う人が不便と思うところを直せばきっと喜んでもらえる。
売り出してみると使い勝手のよさがたいへんな評判。
村人総出でタワシや袋を作ることになりました。
一方お店では評判を聞いた人たちが押し寄せます。
皆さんもうしばらく…。
ちょうだい!ちょうだい!五助どんは新しく作ったタワシと袋を荷車いっぱいに積んで戻ってきました。
主人との約束を果たせたのは五助どんただ一人。
おまけに新しいタワシと袋は町でも飛ぶように売れ次から次へと注文が入り村は豊かになりました。
忘れておった。
人を助け人に喜ばれる。
それこそが商売の心であったな。
婿殿のおかげじゃ。
あとは頼んだぞ。
2人は力を合わせて店をもり立てました。
今では「困ったときには五助どんの店へ行け」と言われるまでになったそうです。
2015/11/08(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字]
「浦島太郎」
「つるのおみやげ」
「五助どんの商売」
の3本です。お楽しみに!!
詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
柄本明
松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
歌:中川翔子
コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ
http://ani.tv/mukashibanashi
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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