直材直材!九州各地から一級品が集まる木材市場。
仲買人たちのお目当ては全国有数のブランド材。
66番で…ありがとうございました!ヒノキの平均価格は1m^3当たり2万円。
その倍の値段で競り落とされました。
同心円状に広がる美しい年輪。
切り出された木材の表面には一つの節もありません。
多良岳材がふんだんに使われた住宅。
鮮やかな木目の化粧柱がその存在感を放っています。
この木を育てているのが太良町森林組合です。
彼らは今林業の常識を覆すある挑戦を始めています。
多良岳200年の森。
樹齢50年で出荷するのが今の林業の常識。
それを200年まで育てようという壮大なプロジェクトです。
人の一生をはるかに超える歳月をかけ森を育てる。
そんな生き方を選んだ男たちの物語です。
佐賀県南部にある太良町。
町の面積の半分以上を森林が占めています。
一面に広がるのはスギやヒノキの人工林です。
おはようございま〜す。
太良町森林組合は職員数32人。
およそ600万本の木を管理しています。
天気が続いてですね毎日ちょっと間伐と何と仕事量が増えて…。
低迷を続ける林業の世界で60年以上黒字経営を続ける珍しい組合です。
(木がきしむ音)71歳の今もほぼ毎日山に入り現場で指揮を執っています。
太良町森林組合の特徴は手間をかけ丁寧に木を育てる事。
この色の違う部分は節。
枝が生えていた部分の痕跡です。
ここで枝を打ったととここで枝を打ったとすれば今市場では1万円違います。
1立米単価のですね。
これは枝打ちの作業。
節のない木材にするために欠かせません。
太良町では木の成長が止まる冬場に3年ごとに行っています。
こまめに枝を打つ事で節の出ないきれいな木材を作り上げているのです。
山での仕事に人生の多くを費やしてきた村井さん。
おいしいんですよ。
いつごろどこにどんな花や実がなるのか草木の名前もほとんど分かるといいます。
村井さんが森林組合に入ったのは高度経済成長のただ中。
切れば高値で売れる時代でした。
休みの日も山に入っては木の成長を確かめるほど仕事に没頭していました。
しかし木材の輸入が増加するにつれ国産材の価格は下落。
かつて7万円を超えていた平均価格はこの30年余りで1/3以下の2万円にまで落ち込みました。
多くの森林組合では人件費を削減するため大型の機械を導入。
ハーベスタというこの機械1台で伐採し切りそろえ積み込むまで僅か数分で一気に行う事ができます。
そのかわり大型の機械を入れるのに広い作業道を造る必要があります。
こうした林業が主流になる中それでも村井さんは受け継いできた林業のスタイルを変えませんでした。
木を運び出すのに使うのはワイヤーです。
ワイヤーを使えば広い作業道を造らずに済みます。
大変な手間ですがより多くの木を残す事ができます。
道を大きく切り開きその周辺の木を切っていく林業。
山全体をバランスよく伐採していく太良町の林業。
道を最小限に抑える事で山に与える影響を少なくする事ができるのです。
木々の隙間から適度に日光が降り注ぐ太良の森。
根元を覆う草やコケが山の保水力を高めています。
こんな驚きの数字も。
佐賀県のほかの地域では1時間80ミリの雨で大雨・洪水警報が出されるところ太良町では120ミリ以上の雨が降らなければ警報は出ません。
多良岳材をふんだんに使った村井さん自慢の家があります。
町内に住む長女夕子さんの家です。
おりました?
(夕子)「おったよ」って。
保育園は?帰ってきた?
(宇一郎)帰ってきた。
保育園帰ってきたね。
天井の梁から床のフローリングまで全て村井さんが育てた木です。
出来て2年がたちますが今でもヒノキの優しい香りに包まれています。
孫の元樹君と宇一郎君。
2人もこの家が大のお気に入りです。
自分の育てた木が家族を守り育てる。
村井さんにとって何より幸せな時間です。
今村井さんはある前代未聞の計画に挑もうとしています。
舞台は多良岳の中腹にある一角。
多良岳200年の森です。
通常樹齢50年で出荷する木を200年まで育てようという全国でも例のない試みです。
現在この森には樹齢50年の木が4万本以上生えています。
定期的に間伐しながら樹齢200年の大きな木をおよそ5,000本育てる計画です。
息の長い計画ですがより高値がつく高樹齢の木材を生産し林業を守っていくのがねらいです。
東宏次朗さん。
はい。
本田圭汰さん。
はい。
この春太良町森林組合は2人の新入社員を迎えました。
「太良町森林組合組合長村井樹昭」。
よろしくお願いします。
お願いします。
町内の高校を卒業したばかりの18歳です。
それから半年。
東さんはチェーンソーの指導を受けていました。
(ホイッスル)木がどちらに傾いているのか。
東さんは重要な安全確認を忘れてしまいました。
一つ一つの作業を覚える事で精いっぱいの東さん。
けれど村井さんは少しずつ成長していく姿を頼もしく感じていました。
9月下旬。
いよいよ200年の森計画が動き出しました。
樹齢200年まで育てる木をどれにするのかその候補を選びます。
この一帯は村井さんが50年前に植えた森です。
木が大きく育っていく姿を想像しまっすぐな木を選んでいきます。
先の方で曲がっている木もあるため慎重に見極めます。
村井さんが何より伝えたかったのは目の前の作業が遠い未来につながっているという事。
200年かけて木を育てる。
それは自分の代ではなしえない仕事です。
いつもの現場から離れた場所。
長い間伐採されてこなかった茂みがあります。
ここに村井さんが見せたいものが…。
(村井)どがん思う?太かですね。
ハハハ…。
樹齢200年を超えるというスギの大木。
人の一生よりはるかに長い時間風や雨に耐え生き続けてきました。
(村井)東君どがん思うですか?何も言えねえ。
何も言えねえ…。
これだけちょっと余る。
(村井)そっちはついとっと?
(2人)届いとる。
(村井)東君の手は長かけんやっぱりあがんとな。
おいどんの手は短いけんないどん。
届いた。
ギリギリ届いとる。
大木を前に世代を超えて森を守る事の意味を語りかける村井さん。
その思いを2人は受け止めていました。
世代を超えて森をつくる。
村井さんから2人へバトンが託されました。
北陸金沢にやって来ました。
2015/11/08(日) 08:00〜08:25
NHK総合1・神戸
目撃!日本列島「200年の森に夢を託して」[字]
樹齢200年の木を育てる挑戦を始めた佐賀県の太良町森林組合。200年もの間、どうやって知識や技術を伝承していくのか。小さな森林組合の壮大な挑戦を追います。
詳細情報
番組内容
林業の不振が続く中、60年以上黒字経営を続ける佐賀県の太良町森林組合。手間を惜しまない丁寧な林業で育てられた木材は「多良岳材」という全国有数のブランド材で、一般的なヒノキの倍の値段で取り引きされています。いま、太良町の森では、樹齢200年まで木を育てるという前代未聞の取り組みが始まっています。人の一生よりはるかに長い時間、どうやって知識や技術を伝承していくのか。小さな森林組合の壮大な挑戦を追います
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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