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育児を聖域にしない改革 資生堂
トライ&エラー 女性活躍先駆企業

2015/2/21付
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 2000年代初頭から子育て支援を拡充してきた資生堂。出産後も仕事を続けられる環境は整った。次のゴールは子育てしながら会社にいかに貢献するか。職場改革は終わらない。

化粧品売り場のチーフを務める畠山陽子さん(横浜市)
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化粧品売り場のチーフを務める畠山陽子さん(横浜市)

 「お久しぶりです。お元気でしたか?」。資生堂のビューティーコンサルタント(BC)、畠山陽子さん(38)は横浜市内にある化粧品売り場で、顔見知りの顧客に笑顔で声を掛ける。化粧の好みや肌の状況など個人プロフィルも頭の中に入っているので接客もスムーズ。畠山さん目当てで通ってくる顧客も多い。

 3人の子どもを持つワーキングマザー。短時間勤務を利用しているが、2012年4月に売り場を束ねるチーフに昇格した。その後売り上げは前年比2桁増が続く。近隣に大型コンサートホールがあり、公演日には店舗前の人通りが急増する。予定を調べ、アイドルのコンサート開催日は若い女性向けの商品やサービスを前面に出すなど工夫した。畠山さんは「勤務時間が短くてもどうすれば成果を上げられるかを常に考えている」と強調する。

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 事業所内保育施設や法定を上回る育児介護休業・短時間勤務制度など、資生堂の子育て支援策の充実ぶりは目を見張る。「女性に優しい会社」という評価が定着した。だが資生堂は今、その定評からの脱却を試みている。子育てや介護をしながらも会社にいかに貢献してもらうか。「働きがいのある会社」を新たなゴールに設定した。

 国際事業企画部の国岡奈央子さん(38)は6歳と3歳の子どもを育てながら働く。3歳になるまで取得可能な育児休業を活用して、5年間子育てに専念し、13年11月に復帰した。「ママ社員向けの軽い仕事を振られるのでは」。そんな予想に反して担当業務は出産前と変わらず米国の子会社の経営管理。海外出張もこなす。現在も短時間勤務を続ける。限られた時間で成果を出すのは大変。「でもつらさよりも仕事のやりがいが勝っている」と話す。

同僚と打ち合わせをする資生堂の国岡奈央子さん(中)(東京都港区)
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同僚と打ち合わせをする資生堂の国岡奈央子さん(中)(東京都港区)

 会社もサポートを怠らない。仕事上、米国との連絡は欠かせない。時差の関係で朝7時半に定例のテレビ会議があるが、その参加は免除した。上司の白井修さん(44)は「まずは一人前の仕事を振る。無理ならそのとき遠慮なく言ってもらい、軽減策を考える。『子育て中だから』と配慮しすぎると女性のやる気をむしろそぐ」と説明する。

 資生堂も1990年代までは結婚・出産退社が目立ち女性管理職比率も低かった。2001年にジェンダーフリー委員会を立ち上げ、女性活躍推進に乗り出した。女性の声に耳を傾けて子育て支援策を次々と拡充。出産退社を減らす当初の目的を果たす一方で新たな課題が浮上した。

 短時間勤務制度などをフル活用すれば約10年フルタイム勤務をしなくて済む。ここまで極端ではないにしろ、職場への十分な配慮を欠く制度利用が見られるようになった。そこで会社は子育て支援の目的を改めて検討。「基本は自助努力。制度は自力で解決できないときに頼るもの」と確認した。意思統一を図るために10年度に全女性社員ら1万人(管理職を除く)を対象にキャリアサポートフォーラムを全国で開き、当時副社長だった岩田喜美枝さんが直接説明して回った。

仕事を終え、事業所内保育施設に子どもを迎えに来た資生堂の佐藤由香さん(東京都港区)
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仕事を終え、事業所内保育施設に子どもを迎えに来た資生堂の佐藤由香さん(東京都港区)

 育児を聖域にしない改革は現在も続く。昨年4月には短時間勤務中のBCの働き方にメスを入れた。

 制度利用者は1千人を超え、ここ10年で約3倍に。そのほとんどが夕方に早く帰れる早番シフトに入っていた。独身者など一部の社員に多忙な遅番が集中し、不満の声があがった。現場の上司が短時間勤務中の全BCと個別面談を実施。支障のない範囲で遅番に入るように要請した。

 会社に頼りすぎない姿勢は徐々に浸透している。コスメティクスマーケティング部の佐藤由香さん(34)は事業所内保育施設「カンガルーム汐留」に1歳の息子を預けて働く。育休から昨年10月に復帰。だが地元の認可保育園は定員がいっぱいで入園できなかった。「カンガルームがなかったら、復帰できなかった」

 短時間勤務制度も使いつつ、夫と子育てを分担して週1日は遅くまで働く。佐藤さんは「外部との打ち合わせや、たまった仕事の処理に費やす。会社に助けてもらっている分、成果もしっかり残したい」と話す。

 「会社への貢献を意識づける段階へはまだ完全に移行できていない」(人事部ダイバーシティ推進グループ)。取り組みから14年を経ても改革は続く。(編集委員 石塚由紀夫)

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