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 国内最多のゾウを飼育する千葉県市原市の動物園「市原ぞうの国」で、大技を披露する人気のゾウがいる。雌のランディだ。技を教えたゾウ使いの青年は、1992年11月10日に交通事故で亡くなった。23回目の命日を迎える今も、ランディは青年とのゆかりの場所で、足を止める。

 10月下旬、園の人気イベント「ぞうさんショー」で10頭のゾウが広場に勢ぞろいした。子どもたちを鼻で抱え上げたり、音楽に合わせてフラフープを鼻でまわしたり。ランディは椅子に腰掛け、前脚と鼻を上げた。その頭の上では、ゾウ使いが立ち上がって手を振った。「すごい。ランディ!」。観客席からは声援と拍手がわき上がった。

 この技を教え込んだのは、坂本哲夢(てつむ)さん(享年20)。観客が喜ぶ様子を眺めていた園長で母親でもある小百合さん(65)は懐かしむように言った。「この技を見ると、あの子の笑顔を思い出します」