イスタンブルだけでも全ヨーロッパより多い難民がいる

国際救済委員会のデーヴィッド・ミリバンド委員長は、シリア人を筆頭とした難民の60%が大都市で生活しており、イスタンブルの難民だけでもヨーロッパへ到来した全難民の数を超えていると伝えた。

 

 

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イギリスを拠点とするNPO国際救済委員会のデータによればイスタンブルで暮らす難民数は33万6000人である。この数はヨーロッパへ到来した全難民の数より多い。

 

一方、トルコの全難民数は250万人近くである。

 

 

彼らはもう一度シリアへ帰還することは考えていない。

 

国際救済委員会はトルコで進めている調査の中でイズミルとその近郊で暮らす800世帯と面談した。同調査から3つの結果が明確となっている:

 

–トルコへ来た難民うちの80%がシリア人かイラク人である。

–そのほぼ全員が難民である。彼らは経済的な意図で移住せず、戦火から逃げている。

–その大部分の意図はトルコへの定住ではなく、ヨーロッパ諸国へ向かうことである。

 

AP通信に語ったミリバンド委員長は、面談した難民の大部分には再度シリアへ帰国するといった意思がないこと、また彼らが密入国業者に必要な金を支払えるように自宅や自国にある全財産を売り払ったことも伝えた。

 

同委員長は密入国を防ぐことのできない最も重要な理由としてヨーロッパ入国用の合法ルートがシリア人に対しほぼ完全に閉ざされていることを強調し、「トルコに難民申請センターが開設されることは必須である。こうして彼らは向かおうとしている国への難民申請がトルコで可能となり、その国へいつ入国可能かに関する具体的な回答が得られる」と述べた。

 

 

「グローバルシステムが破綻した」

 

国際救済委員会のデーヴィッド・ミリバンド委員長は、難民危機はグローバルシステムが脆弱かつ分断化した構造と化していることに端を発していると考える。

 

同委員長は、お定まりの「難民キャンプで待機する難民」という光景がもはや一般的なものではなくなっており、戦火から逃れた難民数が数百万に達したことで設置される難民キャンプが不足していると伝えた。

 

ミリバンド委員長は、「難民たちはキャンプに追いやられることも望んでいません。かなり長期間自国から離れて暮らすことを余儀なくされていることで新たな人生を築き、就職し働くことを選択しているのです」と語った。

 

世界が直面している難民問題を「前途多難」と形容するミリバンド委員長は、「更に悪い事に起きている事は継続している情勢のほんの一部でしかない。我々が実施している調査では世界には2億人を超える人々がより良い生活条件を求めて自国を離れることを選択していることが分かっている」と言い足した。

 

イギリス外務相も務めたデーヴィッド・ミリバンド委員長は、勃発した難民危機をグローバルシステムの破綻と形容し、以下の様に続けた:

 

「世界には少なくとも30-40ヵ国の市民が基本的要求を満たすことさえ出来ないでいます。これらの国々では社会内部の民族的、宗教的、あるいは政治的な分裂も存在しています。国際政治システムは冷戦終結時以来、初めてこれほどまでに脆弱かつ分断化した様相を呈しています」

 

国連のフランソワ・クレポー難民危機報告官は、金曜日講演を行い、ヨーロッパ諸国がこれから5年間以内に毎年中東から平均40万人の難民を受け入れざるを得なくなるだろうと予見している。

 

Hurriyet紙(2015年10月27日付)/ 翻訳:藤井庸平

 

■本記事は「日本語で読む世界のメディア」からの転載です。

 

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