原発発がん訴訟:原告「福島、高線量下で作業」 札幌地裁
毎日新聞 2015年11月06日 07時54分(最終更新 11月06日 08時00分)
◇東電側は争う姿勢
東京電力福島第1原発事故の収束作業中に被ばくし、がんになったとして、札幌市の元作業員の男性(57)が東電などに計約6472万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が5日、札幌地裁(湯川浩昭裁判長)であり、東電など被告側は争う姿勢を示した。
原告弁護団によると、同原発事故の収束作業での被ばくと発がんの因果関係を争う裁判は全国で初めてという。
訴状などによると、男性は2011年7〜10月、がれきを撤去する作業に従事。この間の記録上の累積被ばく線量は56.41ミリシーベルトで、通常時の原発作業員の年間法定限度の50ミリシーベルトを超えた。線量計を外して作業を行ったこともあり、実際の被ばく線量はさらに高くなるとみられるという。
この日、意見陳述した男性は「津波や爆発によるがれきが散乱しており、通路を確保する仕事にあたった。トラックの荷台に鉛で覆った部屋を設け、モニターの画面を見ながら重機を遠隔操作したが、重機ではどうしても片付けられないときは手作業で高線量のがれきを片付けた」と語り、「被告は被ばく対策を怠った責任を認めてほしい」と訴えた。
男性は12年6月にぼうこうがん、13年に胃がん、S状結腸がんをそれぞれ発症し、被ばくが原因と主張。東電には原子力損害賠償法に基づき約5472万円を、元請けの大成建設(東京都)と下請けの山崎建設(同)は安全配慮義務違反に当たるとして計1000万円をそれぞれ請求した。
東電は「事故とがん発症との間に因果関係は認められない」と主張するなど、被告3社はいずれも請求棄却を求めた。【日下部元美】