西尾邦明、斎藤徳彦=北京、岡林佐和
2015年11月8日23時30分
上海市の中心部に近く、交通量も多い住宅街。ビール工場の正門の横の壁に、薄い水色の「SUNTORY」の切り文字看板が掲げられている。この正門から10月28日午後5時すぎ、従業員が続々と出てきた。
ここで30年以上も働く白髪の男性(59)は「いま、ストライキ中だ。『青島ビールになったら、閉鎖されるのでは』とみんな心配している」と話してくれた。
サントリーホールディングスが合弁先の青島ビールに、譲渡を決めた工場の一つ。約200人が働くが、この1年は生産が著しく落ち込んでいるという。醸造担当の男性は「10月は生産計画すらない状況だ。私たちの運命はどうなるのか」と声を落とした。
1984年に外資として初めて、中国に進出したサントリー。いまも上海のビール市場でのシェアは約3割あり、首位を走る。中国メーカーと正面から価格競争を繰り広げ、「三得利(サントーリー)」のブランドは完全に地元で定着した。
工場近くのスーパーでは、主要ブランド「超純」の580ミリリットル入り1瓶が2・9元(約60円)で売られている。今後も青島を通じて販売は続けるが、こうした「薄利多売」戦略は、曲がり角にぶつかった。安い国産ビールの大瓶をダース単位で並べ、杯を重ねるスタイルは、若者にとってもはや過去のものとなりつつある。
酒店では、瓶入りのカクテルドリンクがよく売れる。ドイツやベルギーのビールの味や店の雰囲気を取り入れたクラフトビールの店も、北京や上海には次々とオープンしている。北京市内の大型クラフトビール店に行けば、1杯40元(約800円)前後でも、週末の夜には空席を待つ列ができる。
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朝日新聞国際報道部
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