新国立:理事長名なく契約…JSC、内規に反し25億円分
毎日新聞 2015年11月06日 21時37分(最終更新 11月06日 23時23分)
◇検査院指摘
白紙撤回された新国立競技場の実施設計業務(契約金額約25億7000万円)を巡り、事業主体の独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)が、契約書に理事長名の記名押印をしないまま業務契約を締結する不適正な会計処理をしていたことが、会計検査院の調べで分かった。これを含め、JSCの不適正処理は2012〜14年で47件(同約49億4000万円)に上っており、検査院は適正な手続きで契約するよう改善を求めた。
JSCの会計規則では、原則として契約の目的や金額などを記載した契約書を作成したうえで、理事長が記名押印するよう定められている。しかし、12年4月〜今年1月に締結された契約について検査院が調べたところ、イベント企画や施設改修工事など47件で、締結日の1〜9カ月後に記名押印されていた。
新国立競技場実施設計業務では、JSCと設計業者4社でつくる共同体との契約締結日は14年8月20日になっていたが、実際に契約書に記名押印されたのは36日後の同9月25日だった。契約金額の一部が支払われたのは記名押印後だったが、国立霞ケ丘競技場のテニスコート改修工事など契約4件は、記名押印された正式な契約書がないまま業者に支払いをしていた。
JSCの担当者は「業務遂行を優先するということが頭にあり、記名押印が後回しになってしまった。チェック体制にも不備があり、厳正な会計処理を行う意識が欠けていた」と釈明した。
検査院が6日に安倍晋三首相に提出した14年度の決算検査報告によると、税金の無駄遣いや不適正な経理などは570件、約1568億円に上った。法令違反など「不当事項」は450件(約164億円)、無駄遣いの改善や制度見直しを求める「改善要求」「意見表示」は計49件(約721億円)。東日本大震災関連では、3県10市4町が事業費を二重計上するなどして震災復興特別交付税を約28億5000万円分多く受け取っていた。【武内亮、一條優太】