どうしてこんなことになっているんだろう。

縛り上げられた両手が痛む。

束ねた繊維は密度が増すほど強度も硬度も上がっていく。

ぎっちり結ばれたマフラーは、本来なら首元を温かく包んでくれるはずのものなのに、今は朋也の動きを制限する拘束具でしかない。

その、喉の辺りで鈴がちりんと音を立てていた。

意図も目的もまるでわからない首輪はクマの用意したクリスマスプレゼントだ。

クリスマスっぽいでしょ、と言われたけれど、何がどうクリスマスっぽいのか判らない、トナカイの鈴とでも掛けてみたのだろうか。

(それにしたって、チョイスが微妙過ぎる)

シャツの胸元を開かれ、ズボンを膝まで下ろされて、絨毯の上に仰向けに寝転がっている姿を、陽介と、完二と、クマが見下ろしている。

赤らんだ顔、充血した瞳、荒い呼吸。

(まともじゃない)

朋也は、恐らくこれから自分の身に降りかかるであろう災難を具体的に考えないようにしながら、唇を噛み締めて三人を見上げていた。

 

*****

そんなわけで、おッ待たせしました〜♪

御依頼品の4P!P4の4P!(語呂がいいってつもりじゃないけど)

ガッツリ行きますよぉ…あいあいさー!

*****

 

 そもそもが、男だらけのクリスマスパーティー、なんて、不毛もいい所のイベント、発案、企画の地点で間違っていると思う。

言い出したのは恐らくクマだろう。

こういう空気の読めない、ただ楽しければいーじゃん、みたいな提案は大概が奴だ、間違いない。

本来花村家で行われるはずだったそのイベントは、同宅に大量の『G』が発生した所為で会場変更を余儀なくされた。

次いで選出を受けたのが、現在家主不在の堂島家というわけだ。

(まあ、巽屋じゃ完二が何が何でも納得しなかっただろうからな)

不本意極まりないところだが、年頃の若者だけでバカ騒ぎをするにはあまりにうってつけのシチュエーション。

何と言っても静止する役目を担う筈の『大人』がいない。

そうなればまさにやりたい放題の無法地帯だ、跡形もなく片付けてしまえばどんな事実も揉み消せる。

―――もっとも、元より三人にそのつもりがあったと、朋也は思っていない。

彼らは気の置けない仲間だ、戦友だ、例え何があったとしても、自分だけは彼らの愛情を信じぬくつもりでいる。

パーティーが始まったばかりの頃は、本当に他愛も無いふざけあいをしていただけだった。

クマと陽介がボケて、完二が突っ込み役、朋也は仲介係。

いつもどおり馴染みの風景―――そこに酒が入るまでは。

「今夜は無礼講ー!」

祝いの席で飲まないなんてと、完二が用意していたのは少し値の張るワイン。

クマの中にこっそり詰め込んで、陽介もスパークリングワインやカクテルの類を大量に持ち込んでいた。

(こいつら、酒が入ると大概とんでもないからなあ)

嫌な予感がまずそこでした。

けれど断って一人飲まないなんて空気の読めない朋也ではない、気遣いのレベルは自画自賛で悪いが神レヴェルだ。

やむを得ず、付き合って乾杯した後、朋也が1階の台所につまみを作りに行っている間にトリオ共は景気よくガバガバ呑みまくっていたらしい。

戻ってきたところで掴まった。

「王様ゲーム!」

赤ら顔の野郎共と過ごす、むさ苦しく暑苦しくも楽しい、そして仄かな侘しさ漂うひと時。

「来年こそ彼女と」と陽介が言いかけて、朋也を見て口を噤んだ。

つまみを突付きながら酒を飲み、適当にくじを引いてはくだらないバツゲームを差し向けあう。

先に出来上がっていた三人は、何かと理由をこじつけては朋也に絡みまくってきた。

「またお前が王様かよ!」

悪いな、と、先端の赤く塗られた割り箸を振って見せながら、一番が王様にお茶を入れる、と指示を出す。

ヘラヘラしながらクマがグラスにカクテルを注いだ。

「クマ、お茶なんて淹れたこと無いから判らんもんね〜」

不承不承にグラスに口をつける朋也の傍らに、陽介がベッタリと張り付いている。

「ちっくしょ、じゃ、次々!次!」

おうさまだーれだ!

「また、俺」

「ずるいッ」

最初のうちこそ若干陽介の引きが弱いものの、公平に巡っていた王様ポジションは、いまや朋也の独壇場だった。

(当然)

気付かれないようにペルソナチェンジを行い、高レベルティターニアの運をフル活用させていただいている。

―――今、他の誰かに王様のポジションを奪われるのは非常にまずい。

(何とかしてこのゲームをひと段落つけさせないと)

朋也の焦る気持ちを察してなのか、それともただの意地なのか、いつまでもおいしい役が回ってこない不本意な状況にもかかわらず、三人は一向に埒を明けようとしない。

(理由は、判らないけれど)

朋也の第六感が告げていた。

今、彼らの誰か一人にでも何らかの決定権を与えてしまうのは非常にまずい、と。

(次も王様になれたら、今度こそたとえ少し強引でも終わらせてしまおう)

陽介の手が朋也の背中をさっきからスリスリと擦り続けている。

気付けば反対側には完二が来ていた。

顔が近い、耳朶に熱っぽい息が吹きかかっている。

クマもテーブルから乗り出して、朋也の様子をじっと見ていた。

(これって何の状況だ?)

俺は、確か、男のはずなんだが―――

そう思って引き当てた手元の割り箸には―――4、と、書き込まれていた。

どういうわけか、朋也の血の気がすう、と、引いていった―――

 

 

 

※一応断っておきますけど、和姦です、そう見えなくてもきっとそうです、心の目で頑張ってみてください…心配ならこの辺りでお暇下さいな。たいしたものじゃないけどさ。

 

ギャグに走りそうな勢いだけど、頑張る!(何を)