太平洋戦争で被爆した広島市の平和記念公園にある「原爆の子の像」には、毎年約1千万羽以上(総重量は約10トン以上)の折り鶴が届けられている。平和を願う世界中の人々の思いを普段から“身に着けて”もらおうと、大阪市内の繊維メーカーが紙でできた折り鶴を繊維にしてTシャツやタオルなどの素材に再利用し、平和の輪を広げる取り組みを進めている。
折り鶴から作ったレーヨンで製造したTシャツやタオル、ペンケースなど。平和への願いが込められている |
折り鶴を再利用した商品を手掛けているのはオーミケンシ(同市中央区)。古紙再生業の日誠産業(徳島県阿南市)と共同で古紙をレーヨン用パルプに改質する技術を開発した。折り鶴に込められた思いを「昇華させるための方策」を、広島市が検討していることを知り、独自技術を生かした折り鶴の再利用に乗り出した。
広島市が設置した方策検討委員会が、折り鶴の寄贈者を対象に実施したアンケートによると、折り鶴を一時保管した上で昇華させることに賛成する人が約98%。市民からアイデアを募集したところ、再生紙という意見が約47%を占めたという。
折り鶴は日誠産業がパルプにした後、オーミケンシがレーヨンにする。一連の工程で製造されたレーヨンを「折り鶴レーヨン」として、Tシャツやタオルなどに商品化した。オーミケンシ戦略素材開発室の浅見孝志室長は「折り鶴をもっと身近なものとして再利用してもらいたい、という思いでやっている」と語る。
商品はTシャツやタオルのほか、ペンケース、エコバッグなど多岐にわたる。同社によると、Tシャツ1枚当たり10〜20羽の折り鶴が使われる計算だという。販売は来年から行う予定で、売り上げの一部は原爆ドーム保存事業基金に寄付することにしている。
同社はイタリア・ミラノで開催された「ミラノ国際博覧会」の日本館に協賛。折り鶴レーヨンがキッズイベント用のスタンプラリーカードリボンに使われ、唯一の被爆国である日本から世界に向けて平和を発信する足跡も残した。
折り鶴レーヨンについて、浅見室長は「あらためて平和について考えるきっかけにしてほしい。思いが込められた折り鶴からできた商品が一人でも多くの人に使ってもらえたらうれしい」と話している。
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