もんじゅ:「運営主体の交代」勧告へ 廃炉も視野に
毎日新聞 2015年11月04日 12時01分(最終更新 11月04日 12時28分)
◇規制委 日本原子力研究開発機構 安全管理上のミス相次ぎ
原子力規制委員会は4日の定例会合で、安全管理上のミスが相次いでいる高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)について、現在運営主体となっている日本原子力研究開発機構の交代を求める勧告を、監督する馳浩文部科学相に提出することを決めた。規制委は、今後半年以内に原子力機構に代わる新たな実施主体を示すよう求めているが、それができない場合は廃炉も視野にもんじゅのあり方を抜本的に見直すことを求めている。
規制委の田中俊一委員長は「もんじゅは同じようなミスを20年間繰り返してきた。今後も原子力機構に運転を任せるのは不適当だ」と、原子力機構の「退場」を明言。他の委員も「適切な組織を考える必要がある」などと述べ、文科省に対して来週にも勧告することで一致した。
規制委は法律に基づき、原子力施設の安全対策で不備が改善されない場合には、他省庁に対して勧告できる。こうした勧告権の行使は2012年9月の規制委発足後初めてで、文科省は原子力機構に代わる新組織の検討を迫られた格好だ。
もんじゅでは12年11月に、機器全体の2割に当たる約1万件で点検漏れが発覚。規制委は13年5月、原子炉等規制法に基づく運転禁止命令を出し、原子力機構に管理体制の再構築を求めた。
しかしその後も、新たな点検漏れや機器の安全重要度分類のミスなどの不備が次々と発覚。原子力機構ではこの間、2人の理事長が交代し、昨年10月には組織体制を見直したが、改善されなかった。
文科省の高谷浩樹研究開発戦略官は4日、もんじゅの勧告が出される見通しとなったことについて「重く受け止めている。民間や海外との連携も含めてすべて白紙で検討する」と述べた。【酒造唯、斎藤広子】
◇もんじゅ
日本原子力研究開発機構(JAEA)が運営する高速増殖炉の原型炉の名称。知恵を象徴する文殊菩薩(もんじゅぼさつ)にあやかって命名された。使った以上の燃料を生み出すため「夢の原子炉」とも言われた。水を使う一般の商用原発と異なり、核分裂で発生した熱を液体ナトリウムで取り出す。ナトリウムは空気や水に触れると爆発することがあり、高度な技術が求められる。1994年に初臨界に達したが、翌95年にナトリウム漏れ事故(国際事故評価尺度レベル1)を起こし、稼働実績はほとんどない。