編集委員・大久保真紀
2015年11月6日15時42分
北極圏内にあるロシア・ノリリスク市に、戦後70年の今年、日本人慰霊碑が建立された。3歳のときに別れた父親がこの地に抑留され、死亡した東京都八王子市の渡辺祥子(さちこ)さん(73)が11年がかりで実現させた。その陰には、東京外大で学ぶモスクワ出身のロシア人留学生マリヤ・レブロワさん(25)の尽力があった。
「生存の権利」と書かれた慰霊碑は幅90センチ、高さ1・8メートル。コンクリートの上部に日本語とロシア語で碑文が刻まれた黒い花崗岩(かこうがん)の板がはめ込まれている。板は、この地で果てた抑留者が思い続けた祖国・日本がある東南の方角を向く。
10月2日、現地で除幕式が行われた。零下10度。渡辺さんはレブロワさんとともに参加し、持参した折り鶴を慰霊碑にかけた。
折り鶴よ 羽ばたけ故郷(くに)へ 魂(たま)乗せて
肉体は祖国に帰ることができなくても、魂が鶴に乗って帰ってほしい、との思いを込めて短歌も詠んだ。
「戦争ほど恐ろしいものはない。全世界の人々は等しく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を持っていることを改めて確認し、二度と忌まわしい出来事が起こらぬよう、貧困や抑留に苦しまぬよう、全力をあげて共に努力していきましょう」。集まった地元の市民約30人に、渡辺さんはそうあいさつした。
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朝日新聞社会部
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