東山正宜 須藤大輔、川田俊男
2015年11月5日08時24分
原子力規制委員会は4日、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)を安全に運転する能力が日本原子力研究開発機構にはないとして、新たな運営主体を明示するよう馳浩文部科学相に勧告すると決めた。文科省は運転再開を目指す姿勢を変えていないが、機構に代わる主体を見つけられなければ、もんじゅのあり方を抜本的に見直すことを迫られる。核燃料サイクル政策の是非論が高まる可能性もある。
「停止中でさえ安全管理する能力が欠如している。もんじゅの運転を任せるべきではない」。規制委はこの日の定例会で、原子力機構を「不適格」とする見解で一致した。勧告の内容を来週正式決定し、半年をめどに結論を報告するよう求める考えだ。
規制委が発足以来初となる異例の勧告に踏み切ったのは、2012年に約1万点の機器の点検漏れが判明した後、「未点検を解消した」などと報告しながらも、新たな点検不備を繰り返しているからだ。指摘された保安規定違反は8回を数え、今年8月には点検計画の前提となる機器の重要度分類自体の誤りが判明。「なぜ誤ったのか、聴いても答えられない状況だった」(原子力規制庁幹部)
13年に運転再開準備を禁止する命令を出したにもかかわらず、事態は一向に改善されない。規制委は、1995年のナトリウム漏れ事故から20年間、組織改編や改革を重ねたにもかかわらずトラブルを繰り返してきた歴史的、構造的な問題に切り込む必要があるとの見方を強めていった。
もんじゅは研究開発目的の炉だが、出力28万キロワットと小型の原発並みの規模を持ち、水と激しく燃焼反応するナトリウムを冷却材として大量に使っている。技術的にも安全を確保するのが難しく、撤退した国も多い。「運営や管理は世界最高水準でなければいけないのに、現時点は平均値以下だ」との指摘が規制委員から出たこともある。
原子力機構を所管する文科省への視線も厳しい。10月の規制委会合で「不備は続いているが、内容は改善している」とかばった田中正朗研究開発局長に対し、田中俊一委員長は「当事者になり切っている。監督官庁として冷静に判断して欲しい」と突き放した。4日も「今回の違反だけでなく、長年の経緯で判断する。解決のゴールが見えないことの本質的な問題を文科省は認識するべきだ」と語った。(東山正宜)
■存廃議論再燃の可能性
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