名古屋大学の研究チームが、昨年ノーベル物理学賞を受賞した同大の天野浩教授の研究室と共同で、強力な出力の電子線発生装置を開発した。チームは7月、自らベンチャー企業を設立。装置を搭載した電子顕微鏡や金属3Dプリンターの製作に乗り出す。実現すれば、電子顕微鏡での撮影時間を6万分の1に短縮でき動画撮影も可能になる。

 開発したのは同大シンクロトロン光研究センターの特任講師、西谷智博さん(40)ら。立ち上げたベンチャー「Photo electron Soul」に出資し、技術開発担当の取締役を務める。

 西谷さんらが開発したのは、青色LEDの素材に使われる半導体、窒化ガリウムに光を当てて電子を発生させる「フォトカソード」と呼ばれる技術を使った装置。金属を熱して電子を発生させる現行の装置と比べて、電子線を集中させることができるため、出力が少なくとも10倍大きく、電子線の幅や強さもコントロールしやすい。

 窒化ガリウムは構造が弱く、寿命が十数時間しかないのが難点だった。西谷さんらは天野研究室と共同で、表面に特殊加工をして耐久性を約20倍に強化。さらに電極の表面を修復しやすいように装置を改良した。真空状態を保つために100平方メートルほどの大型だった装置も、高さ80センチまで小型化した。電子顕微鏡メーカーから共同開発の話が舞い込み、ベンチャー設立を決めた。