John Scofield / Past Present

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John Scofield (g)
Joe Lovano (ts)
Larry Grenadier (b)
Bill Stewart (ds)

Recorded: March 16-17, 2015
Engineer: Jay Newland (Impulse 0602547485106)

全盛期のジョンスコがよみがえる理屈抜きの楽しさ

 ジョンスコがいちばん熱かった頃のメンバーが集まった。出てくる音も90年代前半の全盛期そのまま。熱くエネルギッシュなイケイケ路線が爆発している。今でも彼の90年代の盤は毎日聴いているが、久しぶりになつかしい旧友に会ったような気分だ。理屈抜きでリラックスして楽しめた。

 メンバーはジョー・ロヴァーノ(ts)とジョンスコの双頭で、リズム隊はラリー・グレナディア(b)とビル・スチュワート(ds)だ。この黄金のメンツを見ただけで即買い決定だろう。

 全9曲すべてジョンスコのオリジナル。曲調はジョンスコの過去作「Mean to Be」(1991)、「What We Do」(1993)、「Hand Jive」(1994)あたりの絶頂期そのまま。ロヴァーノやビルとカルテットを組み、ブルーノートに吹き込んでいた頃の雰囲気がイキイキとよみがえっている。

 もっともジョンスコのギタープレイ自体は全盛期とくらべ60点のデキだ。特にワイルドな奔放さやエネルギー感がめっきり落ちている。ただしリズムがルーズで独特のラフな味わいがある点は昔と同じ。なによりアルバム・トータルの価値としては80点をつけてもいいだろう。楽曲がいいし、アルバム全編に明るく楽しいムードがあふれているのがすばらしい。

 ジョンスコは今まで本格4ビートやフュージョン、ファンク、ジャムバンド路線とあれこれ目先を変えながらやってきた。だが年齢を考えれば、もうそろそろ本盤のようなシンプルでストレートに楽しめる王道路線に絞ってぐいぐい前を向いて進んでほしい。「やっぱ、ジョンスコはこれだよねぇ!」という感じだ。

 なお録音に関しては解像感のあるハッキリした音で音場も広く満足だが、一点、ベースの音には不満が残った。

 グレナディアは音の野太さがトレードマークだが、本作では他の楽器に比べベースとバスドラの音圧が低く、ややもすると低音がスカスカに聴こえるのがいただけない。単純にミキシングの問題だと思うが、こういう楽器のバランスにはもっと気を使ってほしいものだ。

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テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

Danny Grissett / The In-Between

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Danny Grissett (p)
Walter Smith lll (ts)
Vicente Archer (b)
Bill Stewart (ds)

Recorded: April 29, 2015, at Systems Two Recording Studios, NY
Engineer: Michael Marciano (Criss Cross 1382)

コンテンポラリー・ジャズへ舵を切った最高傑作

 クリスクロスから5作目になるダニー・グリセットの新譜がお目見えした。アルバム10曲中、5
曲を占めるオリジナル曲では過去のピアノトリオ作と異なり完全にコンテンポラリー・ジャズへと路線変更しており、渋めだが自身最高傑作といっていいデキだ。元気に弾けまくるビル・スチュワート(ds)との白熱のバトルも熱い、熱い。

 本作はウォルター・スミス3世(ts)をフィーチャーしたワンホーン・カルテットである。リズム隊にはグリセットの過去すべての作品でベースを弾いているヴィセンテ・アーチャーと、90年代終わりから2000年代にかけ一斉を風靡したビル・スチュワートが参加している。特に今作でのビルは圧倒的といっていいほどエネルギッシュに叩きまくっており、相変わらずパターン豊富な「ワザのデパート」ぶりを披露している。

 本作での彼のドラミングは、過去に参加したジョン・スコフィールド(g)のライブ盤「EnRoute」(2004年)やシェイマス・ブレイク(ts)の名盤「Bellwether」(2009年)で披露していた彼のベストプレイをも凌ぐか? という快演ぶりだ。この軽快なドラミングを聴いてるだけで楽しくなってしまう。

 さて本題のアルバムだが、前半を目玉のオリジナル曲で固め、後半にはキラ星のごとく輝くスタンダードとジャズメン・オリジナルの名曲を配した構成になっている。クリスクロス盤ではよく見かけるバランスを考えた構成の仕方だ。前半のオリジナル群がやや重苦しい曲調のため、後半に来て明るいスタンダードでホッとひと息、という趣向である。

 特に3曲めにもってきた、いかにもジョー・ヘンダーソンらしい明るく弾ける「The Kicker」(1967年)がよく効いている。またオリジナル曲がすべて終わった直後の7曲めに収録してあるヘンリー・マンシーニの名バラード「Dreamsville」が、これまた息が止まりそうになるほど美しい。こんなふうにオリジナルと既成曲をうまく組み合わせたプロデュースが実にうまい。

 肝心のオリジナル曲は過去作とくらべ飛び切りコンテンポラリー度がアップしており、好きな人は好きだがダメな人は……という曲調。かくゆう私も最初はとっつきにくかったが、1ヶ月かけてじっくり聴き込んだらじんわり良さが滲み出てきた。パッと聴きで捨ててしまわず、カラダに馴染むまで聴き続けるのがコツだ。典型的な「噛めば噛むほど」のスルメ度満点なラインナップである。

 グリセットのプレイはオリジナル曲ではキレよくスピード感にあふれ行きまくりだが、個人的には7曲めや10曲めみたいに波間を漂うような弱音を生かしたバラード・プレイももっと聴きたかった。彼のバラード・プレイは本当に最高なのだ。まあ、そのへんは次回のお楽しみにしておこうか。

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2度めの「モテ期」を謳歌するビル・スチュワート

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*ダニー・グリセット(p)の新譜「The In-Between」

ビルの参加作が立て続けに雨あられのリリース

 このところ、ビル・スチュワート(ds)が参加したニューアルバムを聴く機会が多い。

 レヴューはまだ書いてないが、最近ではダニー・グリセット(p)の新譜とジョン・スコフィールド(g)の新譜を立て続けに聴いた。

 どちらもいい作品だが、特にグリセットのアルバムでは、ビルがまさに水を得た魚のような状態でエネルギッシュに叩きまくっている。ちょうどあのジョンスコのライブ盤「EnRoute」(2004年)や、シェイマス・ブレイク(ts)の名盤「Bellwether」(2009年)で聴かせていた彼のベストプレイといえる客演と同レベルの快演ぶりである。

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*ジョン・スコフィールド(g)の新譜「Past Present」

90年代から2000年代にかけ一時代を築いた名ドラマー

 ビル・スチュワートといえば、90年代後半から2000年代にかけて一時代を築いた名ドラマーだ。誰かの新譜が出れば、その作品ではたいていビルが叩いているーー。そんな乱れ咲きのような引っ張りだこの有様だった。

 だがその後エリック・ハーランド(ds)が台頭するにつれ、今度は出る新譜、出る新譜、みんなハーランドが参加している「第二のビル」状態になり、相対的にビル・スチュワートの出番が減って行った。いやハーランドのドラミングは確かにすごいが、ノリのよさを前面に出した楽しいプレイではビルもぜんぜん負けていないし、なのにまるで火が消えるかのようにビルの参加作を見かけなくなって行くのが正直さみしかった。

 別にドラミングのスタイルが古くなったとかいうわけでも何でもなく、単にマスコミが人工的に作り出すアイドル・タレントのブームみたいに火がついたり消えたりするのがなんだかとても腹立たしかった。

 だが、ここへ来て冒頭に挙げた2作品での立て続けの爆発である。思わず快哉を叫んだのは言うまでもない。

 そんな感慨に耽りながらこれら2作品を聴くと、本当にビルのワザのパターンのすごい豊富さに改めて驚かされる。ぜひこのペースでガンガン演ってほしいし、ハーランドといい意味で「殴り合いのケンカ」をしながら互いに高みを究めてほしい。

 がんばれ、ビル。

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商売に勤しむブラッド・メルドー

 あー、ついに始まっちゃったねー、メルドーの「キング・クリムゾン商法」が。

 やっぱりメルドーは終わったんだなぁ。ファンは殺到して買うんだろうけど。

http://www.hmv.co.jp/artist_Brad-Mehldau_000000000061624/item_10-Years-Solo-Live-4CD_6690394

http://www.hmv.co.jp/artist_Brad-Mehldau_000000000061624/item_10-Years-Solo-Live-8LP-Box_6551095

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Devid Berkman / Old Friends and New Old Friends

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David Berkman (p)
Dayna Stephens (ss, ts)
Billy Drewes (as, ss)
Adam Kolker (ss, as, ts, cl, bcl)
Linda Oh (b)
Brian Blade (ds)

Recorded: March 16-17, 2014, at Maggie’s Farm, PA
Engineer: Matt Balitsaris (Palmetto Records PM2177)

超豪華メンバーで放つバークマンの最新作

 ピアニストのデヴィッド・バークマンが超豪華メンバーを揃えて世に問う、リリースされたばかりの最新作である。彼にとっては古巣Palmettoレーベルからの10年ぶりのリリースになる。オリジナル満載で佳曲ぞろいの秀作だ。

 メンバーはフロントにデイナ・スティーブンスとビリー・ドリューズ、アダム・コルカーを配し、リンダ・オーとブライアン・ブレイドの豪華リズム隊が低域を引き締める。アルバムタイトルの「Old Friends and New Old Friends」は、「旧友」であるブレイドとドリューズ、コルカーに加え、新しくリンダとデイナを迎えた陣容を意味している。

 それにしてもリンダ・オーの売れ方には感心させられる。ここ数年、重要なレコーディングがあれば必ずリンダの姿がある。単に人気があるだけでなく、類まれなる実力も兼ね備えている。私はジャズの歴史にそれほど詳しくないが、女性ベーシストでこれほど活躍した例は長いジャズ史上、初めてではないだろうか。大したものだ。

 さて全9曲すべてバークマンのオリジナル。静粛でミステリアスな魅力いっぱいのM-1、明るくメロディアスなM-2、1曲めに続き清楚で美しいM-3、軽やかな4ビートのM-4など、力の入った内容で手応えがある。

 私がバークマンの作品を初めて聴いたのはアルバム「Leaving Home」(2002)だった。まだ2000年代初頭の録音にあって時代を先取りした先進的、かつチャレンジャブルな作風に感心し、以来、注目し続けている存在だ。

 そんな彼が放った渾身の最新作。今回も期待にたがわぬ「バークマン・マジック」を楽しめた。おすすめである。

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Harris Eisenstadt / Canada Day IV

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Nate Wooley (tp)
Matt Bauder (ts)
Chris Dingman (vib)
Pascal Niggenkemper (b)
Harris Eisenstadt (ds)

Recorded: January 25, 2015, at Water Music, NJ
Engineer: Sean Kelly (Songlines Recordings SGL1614-2)

ちょっとフリーをまぶしたラルフ・アレッシ風、音の玉手箱

 カナダ・トロント出身の若手ドラマー、Harris Eisenstadtがリリースしたばかりの最新アルバムだ。作品のテイストはどこかミステリアスであのラルフ・アレッシを思わせる。トランペット奏者ネイト・ウーリーやサックス奏者マット・バウダーなどフリー人脈を迎え、ちょっとフリーのエッセンスをまぶしたうつむき系のコンテンポラリー・ジャズである。

 全7曲すべてハリスのオリジナル。このテのちょっと妖しい作品には欠かせない曲者ヴィブラフォン奏者、クリス・ディングマンが効いている。ワァ〜ンと余韻をたなびかせるヴィブラフォンの響きがなんとも面妖だ。

 とはいえラルフ・アレッシ作品と同様、ただ妖しいだけじゃない。おどけたようなアレンジやきっちりノリのいい部分も作りながら、アルバム全体を通して飽きがこないよう工夫している。昨今の若手ミュージシャンの例にもれず、演奏だけでなくコンポジションまですべて含めたトータルで作品として押し出してくる熱量がある。

 そういえば日本の歌謡曲もざっくり70〜80年代までは「歌手」と「作曲家の先生」がハッキリ別だったが、その後「シンガー・ソング・ライター」なる言葉がもはや死語になるほど一般化し、両者の区分けがどんどんなくなっていったなぁ、などと本題とまったく関係ない感慨に耽ってしまった。

 てなわけで秋の夜長に物思いに耽るにはオススメの思索系ジャズ。お好みの人はぜひどうぞ。

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Joachim Govin / Elements

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Joachim Govin (b)
Ben Van Gelder (as)
Tony Tixier (p)
Gautier Garrigue (d)

Recorded: October 20-21, 2014, at Studio des Egreffins, France
Engineer: Nicolas Charlier (FSNT 4769)

ベン・ヴァン・ゲルダー参加、フランス発だが今どきのニューヨークが香る一作

 リズムセクションを有能な若手フランス人で固めたヨーロッパ発の作品だが、音はいかにも今どきのニューヨーク風だ。脱力し、波間を漂うようにメロディを奏でるゲルダーのアルトがアルバムカラーを決定づけている。若手フランス人ベーシスト、ヨアヒム・ゴヴァンがリリースしたばかりの初リーダー作である。

 ヨアヒムは1984年生まれ。名サックス奏者、ピエール・オリヴィエ・ゴカンを父に持ち、幼いころからジャズに囲まれて育った。American School of Modern Music of Parisとパリ国立高等音楽院(CNSM)でクリスチャン・ジェンテやベン・ストリートらに師事し、エンリコ・ピエラヌンツィやアルド・ロマーノ、トーマス・エンコなどのサポートで才能を認められた。

 メンバーは、知る人ぞ知るツワモノ揃いだ。アルトのベン・ヴァン・ゲルダーは説明不要だが、まずドラマーのGautier Garrigueは本ブログいち押しの若手フランス人である。

 彼は、2007年ギブソン・コンペ優勝のギタリスト、フェデリコ・カサグランデのアルバム「The Ancient Battle of The Invisible」(2012年、レヴュー記事はこちら)や、若手フランス人ベーシスト、フローレント・ニッセの初リーダー作「Aux Mages」(2014年、レヴュー記事はこちら)などの秀作に参加しているフランス・ジャズ界のホープである。

 実は彼の参加作がほしくて以前から検索しまくっているのだが、残念ながら日本では手に入らない。アマゾンのマーケット・プレイスにもないし、ディスク・ユニオンも扱ってない。八方、手をつくしたがお手上げだ。(ユニオンさん、これ読んでますかぁ?)。私がこれほど執着しているのだから、どれほどいいドラマーかわかるだろう。

 一方、ピアノのトニー・ティキシェも1986年生まれのフランス人で、最新リーダー作は4作目の「Dream Pursuit」(2012年)。かたや本盤ではキラキラと輝く華麗なピアニズムを聴かせている。

 ヨアヒムのオリジナル3曲に加え参加メンバーのゲルダーが1曲、ティキシェが2曲を持ち寄ったほか、ローガン・リチャードソン曲、コルトレーン曲など計11曲。全体にゆったりくつろげる秀曲揃いだが、「くつろげる」といってもスタンダード的な古いテイストではなく、いかにもいまどきの若手がやりそうなどこかに「尖り」のある味わいだ。

 ちょっとゲルダーの作風に似ているが、あそこまで無機的な感じではない。全曲、どこかにもっとメロディックな要素がある。わかりやすい派手さのようなものはなく、どちらかといえば噛めば噛むほど味が出るタイプである。いろんなミュージシャンの作品が集められているが、まるで全曲本人のオリジナルのように聴こえる統一感があるのは、独特の個性が光るゲルダーがずっとアルトを吹いているからだろう。

 ちょっと早いが秋の夜長に一家に1枚。前面に出ているゲルダーのファンにもおすすめできる。品質は絶対保証の優秀作である。

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Pawel Wszolek / Choice

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Pawel Wszolek (b)
Lukasz Kokoszko (g)
Sebastian Zawadzki (p)
Szymon Madej (ds)

Recorded: 2015, at Preisner Studio, Poland (FSNT 478)

ステキなさり気なさにあふれた傑作・欧州ジャズ

 哀感を帯びたメロディと叙情的な調べ。派手さはないが、ステキなさり気なさにあふれている。ヨーロッパっぽい端正な味わいがツボにくる。1991年生まれのポーランド人ベーシスト、パウェル・ヴゾレクの傑作最新リーダー作である。

 だれかが飛び抜けた超絶技巧を見せつけるわけじゃない。全員の技量が程よいレベルでまとまっている。そのためまったりと落ち着いてくつろげる。「熱くソロを回す」とか「白熱のインタープレイが」とかじゃなく、しっかり「バンド」としてまとまっている。

 主役のパウェルはけっこうベースソロも弾いているが、アメリカ人みたいな脂っこさはない。いい意味で淡白な淡麗辛口だ。彼のソロは技巧を見せつけるのでなく、耳に残るフレーズによって楽曲の完成度を高めるためにひと役買っている。単なる個人プレイでなく、あくまで楽曲を生かすためのソロだ。

 その楽曲はこれまたどれも非常にレベルが高く、リラックスというキーワードで見事に統一されている。この叙情的な音がピアノトリオならばヨーロッパ系の現代ジャズにありそうなパターンだが、そこにギターが加わっているところが新鮮だ。

 このギターがピアノと同じく過度にテクニカルなところがまったくなく、実にさりげない好プレイを繰り広げている。何気なさがすばらしい。血気にはやり音数多くドカドカやるんじゃなく、酸いも甘いも噛み分けてグッと抑えた「大人の音」を醸し出している。

 年のせいだろうか。脂っこくうるさい音がすっかり苦痛になってきた。そんな私にはちょうどいいあんばいの好アルバム。かなり完成度が高く、今年の新譜ベストテンをうかがうデキといっていい。おすすめである。

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ジャンル : 音楽

Avishai Cohen / The Trumpet Player

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Avishai Cohen (tp)
John Sullivan (b)
Jeff Ballard (d)

Special Guest: Joel Frahm (ts) on M-4, 5, 7
Recorded: November 25, 2001, at PureMix, NY (FSNT161)

 もし無人島へ行くとしたら関連で必ず上がりそうな1枚だ。イスラエル人トランペッターのアヴィシャイ・コーエンが、初リーダー作にしていきなりモノにした自身最高傑作である。

 痺れるような緊張感と高いテンション。ワイルドに暴れまくる3人の野獣たち。野に放たれたコードレスの自由な地平を1本のラッパが切り裂く。ド迫力のカッ飛びジャズだ。

 メンバーはジョン・サリヴァン(b)、ジェフ・バラード(d)とのトリオに、サックス奏者のジョエル・フラームが3曲でゲスト参加している。

 アヴィシャイのオリジナルが5曲にコルトレーンの「Dear Lord」、オーネット・コールマンの「Giggin」を加えた計7曲。オープニングでさっそくぶっ放してくれるM-1や胸が熱くなるバラードのM-3、粘っこいノリのM-6など、どの曲も生き馬の目を抜く自由奔放ぶりだ。

 またジョエル・フラームがゲスト参加したM-5では、本作の粗野な魅力を象徴したようなアヴィシャイとのモーレツな掛け合いが聴ける。2人は非常にバランスがよく、たがいに激しく罵り合いながら楽曲が二転三転していく。本盤きっての聴き物である。

 トリオの命運を握っているのはベーシストのサリヴァンだ。彼は自由奔放なトランペットと手数が多く遊びまくるドラムスとを仲立ちし、ユニットのバランスを取っている。彼のおかげでトリオは爆発はするが暴発はしない。さながら2匹のドーベルマンと1人の猛獣使いだ。よく弾むが、ノリまかせではないクレバーなベーシストである。

 本作を聴いていると、あるパラドックスに気づく。ある種のルールや作法に則って演じられる後年のアヴィシャイ作品「Introducing Triveni」(2010)、「Triveni II」(2012)、「Dark Nights」(2014)のTriveni三部作より、このデビュー作のほうがはるかに革新的なのだ。

 本来なら順番は逆のはずだ。まず何編かの習作でいったんジャズのイディオムを極め、次にそうした既存の規制を取っ払った末に生まれてくるのが本作の世界であるように思える。

 そう、おもしろいことにアヴィシャイの作品群は、鮭が遡上するかのように逆行している。まるで胎内回帰願望を音にしたかのように。その意味ではこのデビュー作とTriveni三部作をすべて聴いた上でなければ、アヴィシャイの懐の深さは正確にはジャッジできない。

 なお同三部作はすべて物足りず、どれもデビュー作には及ばない、という評をよく目にするが、個人的には必ずしもそうは思わない。

「理屈抜きで暴れるジャズがいい」なら前述の評価になるのはよくわかる。だが奥行きという意味では三部作も賞賛されてしかるべきだろう。というか4枚ともぜひ聴いてもらいたい現代ジャズの金字塔である。

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Jason Palmer / Wondaland

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Jason Palmer (tp)
Godwin Louis (as)
Greg Duncan (g)
Luke Marantz (el-p)
Dan Carpel (b)
Lee Fish (ds)

Recorded: December, 2014
Engineer: Chris Sulit (SteepleChase SCCD31800)

今度の新作は人気R&Bシンガー、ジャネール・モネイのカバー集だ

 軽快でダンサブルな独特のリズムがトレードマークの個性派トランペッター、ジェイソン・パーマー。彼がリリースしたばかりの今度の新作は、1985年生まれの人気R&Bシンガー、ジャネール・モネイの楽曲をカバーしたゴキゲンなアルバムである。


 題材になったジャネールは、これまでグラミー賞に6回ノミネートされている売れっ子だ。2010年にデビュー・アルバム「The ArchAndroid」をリリース。第53回グラミー賞で最優秀コンテンポラリーR&Bアルバム賞にノミネートされた。また2013年にリリースした2ndアルバム「The Electric Lady」は、ビルボードチャートで全米最高5位をマークしている。


 さてメンバーを見ると、2013年モンク・コンペ3位のゴッドウィン・ルイス(as)、2009年Gibson Montreux Guitar Competitionファイナリストのグレッグ・ダンカン(g)やリー・フィッシュ(ds)など、過去パーマー作品に参加していた旧友たちが帰ってきた。で、内容は「こうでなくっちゃ」のパーマー節である。


 それにしてもここまで徹底して同じリズムパターンだと、逆に感心してしまう。きっと「オレはこれだ!」みたいな確信があるのだろう。この躍り上がるようなノリを聴いていると、つい知らず知らずのうちにカラダでリズムを取ってしまう。「スタイリッシュ」などという言葉とはまるで真逆の、いい意味で洗練されてないネイティヴな舌触りがいつも通りだ。

 それにパーマーの奏法もまったく変わりない。ストレートで重くエネルギッシュなトランペッターが多いなか、ひょうひょうとした軽いノリで上澄みをすくうような独特のプレイをする。またパット・メセニー的で叙情性が漂うダンカンのギターも相変わらずだ。

 だがワンパターン一辺倒だけじゃない。カバー集だけに原曲のもつ味わいが生かされ、いつものパーマー作品とくらべ哀愁を帯びたメロディーがそこかしこに散見される。特にM-5のリピートされる秀麗なフレーズと、キリリと大吟醸なギターソロには痺れる。

 ただ前作のミニー・リパートン集「Take a Little Trip」(2012年、レヴュー記事はこちら)に引き続きカバー集が相次いだので、次回あたりはオリジナル楽曲でバッチリ決めてほしい。期待してます。


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Author:松岡美樹
予定調和じゃない最近のJAZZが好物です。

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