全国の公立小中学校の先生の定数について、今の69万4千人から、今後9年間で3万7千人減らすよう、財務省が文部科学省に求めている。

 国の財政は厳しい。人件費をめぐる議論も避けて通れない。

 だが、財務省の案は機械的な削減と言わざるを得ない。現場の実態を踏まえなければ、混乱を招きかねない。

 先生の数は、学級数などに応じた「基礎定数」と、いじめや不登校への対応など現場の課題に応じて配分する「加配定数」との足し算で決まる。

 学級あたりの定数の合計を現状のままに保ったとしても、少子化が進むため、「基礎定数」を3万3千人、「加配定数」を4千人減らせる。そう財務省は言う。

 ここで考えたいのは、今を前提にしてよいかだ。

 国際調査だと、日本の先生は参加国のなかで最も忙しい。文科省の2006年の調査では、小中の先生の残業時間は月42時間。支給されるのは8時間分で34時間はいわばただ働きだ。この実態は改善していない。

 このままだと、優れた学生が先生を目指さなくなるだろう。

 財務省は文科省に、もっと先生が必要なら確かな証拠を示せと求めている。

 客観的なデータを示す努力はもちろん大切だ。だが、教育の実情を数値化するのは難しい。新たな取り組みを始めても、即成果が出るわけではない。

 財務省は、15年間で加配定数を3万人積み上げたのに、校内暴力やいじめが増えたではないか、と指摘している。

 数字には様々な要因が絡み合う。暴力もいじめも家庭や地域の厳しさが影響している。

 そもそも子どもの抱える課題は少子化に比例して減るとは限らない。障害のある子や日本語指導の必要な子も増えている。学校の困難は増している。

 文科省にも注文がある。文科省は少子化につれて先生が減る幅を補うように、問題に対応する「加配」枠を増やしてきた。

 現場の実態を丁寧に説明しなければ、説得力を持たない。

 先生の忙しさを減らすのに手を尽くしているかも問いたい。

 先生の意識調査によると、最も多くが負担に感じるのは、行政による学校への調査だ。その量を自治体と見直すべきだ。情報共有や成績処理などを電子化する工夫も広げてほしい。

 後の世代が負う借金は減らすべきだが、今の子どもたちに力をつけなければ、社会は先細りするだけだ。将来をしっかり見通した議論が求められる。