分裂状態の「6代目山口組」と「神戸山口組」は、双方が相手組織の切り崩しと組員の奪い合いを続けている。本誌は、その一端を示す「移籍者リスト」を独自に入手した。
入手したリストには、100人超の組員の氏名がずらりと並ぶ。もともと所属していた組の名称、役職、年齢、移籍後の組の名称なども記されている。
リストを提供した人物はこう話した。
「分裂後、神戸山口組から6代目山口組に復帰した組員のリストだ。6代目山口組の本部から、親交のある団体に送られたもので、このリスト作成後も、組員の移籍は続いている」
そう、リストは神戸山口組のどこの組から、6代目山口組のどこの組へ移籍したかがわかるようになっているのだ。
暴力団に詳しいジャーナリストの溝口敦氏にも解説を願った。
「6代目山口組が、『神戸山口組の中心的組織である山健組などからこれだけ人をぶんどったよ』ということを示す名簿ですね。これの元となる資料があって、組関係者や警察が整理し直した可能性もある」
リストだけを見れば、6代目山口組の切り崩し作戦が成功しているように見える。が、溝口氏は言う。
「どちらが優勢なのかは、まだわからない。ただ、これからは神戸山口組の方が人気が出そうだ」
山口組が分裂した要因の一つに、直系組長が本部に毎月納める会費が高額すぎるとの不満があった。
「暴力団も不景気ですから、会費は小さな問題ではない。6代目の司忍(本名=篠田建市)組長になってから、直系組長の納める金額は値上げされ、毎月115万円を課せられた。盆、暮れ、誕生祝いにも金を要求され、年間約3千万円を上納させられていた」
一方、神戸山口組の会費は10分の1以下だという。
「ヒラの直系組長なら会費は月10万円。盆、暮れ、誕生祝いもない。経費が安いうえ、『神戸山口組の看板でもメシが食えそうだ』との感触もあり、結構人気を集めていると聞く」
分裂前の山口組に所属し、何らかの事情で6代目に絶縁された組員たちが、神戸山口組に復帰する動きも出ているという。無論、神戸山口組も組員獲得に躍起だ。関係者によると、神戸山口組から「年末年始が来る前にこちらに移籍しないと、いいポジションがもらえないぞ」と、電話で勧誘された組長もいるという。
これから抗争はどう展開するのか。山口組系暴力団の元組長で作家の石原伸司氏(77)はこう話す。
「『ヒットマンによる殺し合いはいつ始まるのか』なんて聞かれるが、それはない。そんなことをしたら、組長が使用者責任を問われて逮捕され、長い刑務所暮らしをするはめになる。金があり、いい暮らしをしている組長はそんなまねはしない。二つの山口組は、話し合いの末に協議離婚したようなもの。これからも均衡を保ち、人集めで争っていくだけだろう」
暴力団対策法で指定された暴力団は21団体。そのうち松葉会、稲川会など11団体が山口組と交際があるとされる。溝口氏が言う。
「分裂以前の山口組は徳川幕府のような存在で、司組長や高山清司若頭が後見人を務める他団体の“大名”もいる。大名が盆や暮れに推定1千万円以上を持参して山口組に挨拶に行く慣習もあったが、それをやめそうな団体もある」
そうした事情が絡み、山口組の分裂は、他団体の分裂をも誘発しかねないという。“群雄割拠”の時代が来るのだろうか。
「とはいえ、いま勢いのあるのは若い人が入る半グレ集団で、暴力団組員はどんどん高齢化し、分解が進んでいます」(溝口氏)
そう遠からず、暴力団の勢力図は一変するのかもしれない。
※週刊朝日 2015年11月6日号
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