番組未公開トーク!芥川賞作家・羽田圭介とオードリー若林のおすすめ本
30歳になったばかりの芥川賞作家・羽田圭介さんと、
筋金入りの読書家・文学青年として知られるオードリー若林さん。
番組では泣く泣くカットしてしまったのですが、
収録時、お二人には「イチ押し本」を持ってきてください、とお願いしてありました。
若林さんが取り出したのは、なんと岩波文庫の「ラ・ロシュフコー箴言集」。
さまざまな戦いや権力闘争を経験した17世紀フランスの貴族ロシュフコー公爵が、
辛辣な人間観察に基づいて生み出した格言・箴言集です。
「人はふつう誉められるためにしか誉めない」とか、
「恋はその作用の大部分から判断すると、友情よりも憎悪に似ている」とか、
ドキリとするようなフレーズが満載。
コンビ結成まもないころは、「3分間1点を見つめているだけ」とか「アメフトの格好でぶつかりあっているだけ」といった
「アバンギャルド」な漫才を披露して、
「売れなくてもいい、俺たちはロックな人間なんだ!」といきがっていた、という若林さん。
家で一人、お酒を飲みながらこの箴言集をめくり、
「断じて媚(こび)は売らないと標榜するのも一種の媚である」といった言葉に出会っては、
「それ言っちゃう~?」と悶絶したりしているのだとか。
文庫本には折り目がいっぱい。
「凡人は概して自分の能力を超えることを全て断罪する」という言葉に赤丸がついていたりします。
今から350年も前に書かれた言葉でありながら、
「褒める非難があり、くさす賛辞があるところが新しい」と、繰り返し手に取っているそうです。
いっぽう、羽田さんが取り出したのは村上龍の「イン・ザ・ミソスープ」。
歓楽街で風俗ガイドをする青年ケンジが、フランクというアメリカ人の客と出会い、事件に巻き込まれていくストーリー。
数年前に初めて読み、「酒鬼薔薇事件など、その後に起きた現実の事件を予見しているかのようだ」と震撼したのだとか。
「小説がときに現実を超える力を持つ」ことを実感した作品だといいます。
若林さんも大学の卒論で論じたほどの村上龍ファン。
ラジオ番組でのトークで「イン・ザ・ミソスープかっつーの!」というツッコミをしていたことを羽田さんに指摘され、
「ふつう分からないよね、そのツッコミ」と爆笑していました。
続いて羽田さんが恨めしそうに取り出したのは藤沢周の「オレンジ・アンド・タール」。
同級生の飛び降り自殺を目の当たりにし、情緒不安定になった高校生が、
江ノ島の弁天橋下でダンボール生活を送る伝説のスケートボーダーを精神的に頼りはじめるが、
そこでも事件の目撃者となってしまう・・・というストーリー。
羽田さんが「男の自意識や行動原理って、くだらない牽制や意地の張り合いがほとんど。その空回り感が見事に描かれているところが好き」といいます。
実はこの小説の文庫版の解説を書いているのは若林さん。
羽田さんはそれを知った時、「キィーッ!僕が書きたかったのに!なんで若林さんが!」と本当に悔しかったのだとか。
そんなこんなで、好きな作家や作品もよく似ていた二人。
一度だけ作家が大勢集まる飲み会で顔を合わせたことがあったものの、
1対1でまともに話すのは初めて、といいながら、
互いの率直な本音がさく裂する見応え十分のトークとなりました!
投稿者:スタッフ | 投稿時間:17:41