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恋のカタマリ

恋のカタマリ-122

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いや、行くことはもう決定していたし、早めると聞いていたのだ。

「寝る場所はあっちの客用の部屋を使って。出発まで大した時間も無いし、それまでは拓篤の部屋にすればいい」
「いえ、そこまで世話になる気はありません」
「いい?当分は外出禁止。そんな顔でまた騒ぎになったらどうするの?出発まで、ココに居なさい。君は危なっかしい」

そう言われてしまえば、今日の今日で何も言えなくなる。

心が引きつるのは、ただ一つ。
堂本のことだけ……。

「今の感情より、まずは自分の未来を優先させること」

あっさりと言って、水埜がおやすみ……と自室に入って行った。

取り残された拓篤も仕方なく、そのまま紙を持って言われた部屋のドアを開けた。

拓篤はベッドに座り、あちこち痛む体を横たわらせる。

堂本さん……。

会いたい。
でも、傷だらけだもんな。

この傷が少し癒える頃。
俺は、日本から居なくなるのだ。

出張くらいだと思っていたが、日程は年間になっていた。
長い間、帰って来られないのかな。

今の感情より、まずは自分の未来を優先……か。


その先に、堂本は居てくれるのだろうか。

*

三日目になって腫れは引いてきたが、痛みがまだある。
顔の痣はどす黒くなっていた。

「……不細工だね」

朝一番に毎日、水埜に平然とした顔で言われる。

日本のスクールへの代理講師への引き継ぎで、水埜は出発までまた奔走だ。
店の方は水埜の母が居るが、仕入に関してのプログラムだけは拓篤が作った。
留守の間に、息子の水埜や拓篤のカラーが介入して、新規の客層が広がった分も。

期間は一年~二年。

現地には日本人の専用エージェントが居るから、衣食住には困らないしビザの延長の場合も心配無い。

水埜から拓篤への条件は、滞在中は無給。
それは至極当然のことで、拓篤に異論のあるはずもない。
教えてもらえて、勉強させてもらって、衣食住から滞在費まで面倒を見て貰える。

自分で使うお金は信託での毎月の配当金がある。
仕事の合間にスクールに通う費用は、日本での家賃などの生活費の分を丸々充てることが出来た。

金銭的には、そう心配無い。
そう思えば……自分の過去が、未来への架け橋になっているのだとも思えた。

***

自宅マンションは来月いっぱいで切れるようになっていたが、交渉の末、今月いっぱいにしてもらえた。
マンションの持ち主が、多治見の知り合いだったから融通が効くのだ。

一人放りだされたような拓篤を気の毒に思い、まだ成人していない学生の身分でマンションを貸してくれた。
あの騒動の時も、大丈夫かと電話をくれた。

祖父の代まで懇意にしていた人で、電話口で『御労しい』と嘆かれて、ちょっと困った。

水埜のマンションで過ごした数日間。
今も眠れない日が続く。

あのヤスシと喧嘩をした日だけは、眠れたのに。
体が限界を超えて、疲れ切っていたのだろう。

掲示板の方も、もう完全に下火になっているのに、今も夜中に目が覚める。
習慣になってしまっているのか。

目が覚めては、夜中にネットの掲示板を見て、小夜子や堂本が出ていないかと確認してしまう。

堂本は、相変わらず多忙だ。
メールや電話も何とか毎日来るけど。

逢引しようか……なんて言っていたくせに。

渡仏への日まで、そう時間はない。

向こうへ行く前に、会いに行こう。

帰って来るまで、俺を待っていてくれと……告げに。

*

堂本がアパートの裏手の排水路に長靴を履いて入り、泥水をさらう。

班ごと、新たな事件の方に移動だ。

「最悪……」
隣で今組んでいる芦田がブツブツと文句を言ってるが、手は休めていない。

「有りますかね」
「分からん」

同居相手を刺し、逃げた男。
一命はとりとめたが、危篤状態だ。
命を落とせば、殺人未遂から殺人へと移行する。

まだ、逃げた男が犯人と断定した訳ではない。
重要参考人として手配をかけてはいるが、逮捕状を取るにはまだ弱い。
凶器が部屋に無かったことから、逃亡の際に捨てたという可能性を見て、辺り一帯をくまなく探している途中だ。

「うわ!!堂本さん!!」

泣き声を上げる芦田に、何事かと思って顔を上げたら……ネズミの死骸だった。

「泣くな」
「泣いてませんよ……でも気持ち悪いし、臭い」
「証拠を探せ!!」
「はい」

周りではあっちこっちで捜査員が証拠探しをしている。
辺り一帯は通行止めだ。

早く見つけないと。
明るい内に……。

何処かで携帯が鳴った。

その度に、見つかったかと一斉に皆が顔を上げる。

「見つかったぞ!!向こうの草むらだ!!」

その声で、口々に声が出る。

「やった……」
芦田もホッとした顔をして、排水路から出た。

「今からだぞ」
「ですね……。まだ凶器とは断定できませんし」
「凶器としても、指紋が残ってりゃいいが」


堂本がブルーシートの上で、長靴を脱いでいると班長から電話が入る。

「はい、堂本」
『マルヒの実家が分かった。埼玉県警に連絡をつけておく。そのまま行ってくれ」
「了解です」

*

水埜のマンションで一人で食事を取り、堂本の電話を待つ。

仕事が終わったら連絡をくれとメールだけした。

新たな事件で、ヤマをまた登山し始めたようだ。
それも時間はマチマチで、一体いつ寝てるのだと言うような時間にメールが入ってる。

その前に……。
妹にも連絡をしておこう。

母の病状も気になるし。

拓篤は携帯から妹の番号を表示させ、ボタンを押すのを躊躇う。
泣いてやしないかと、戸惑う。

拓篤は息を吸いこみ、ボタンを押した。

『……もしもし』

いつもの同じ、トーンの低い警戒した声。

「俺だけど。フランス行き、決まったから」
『そうなの』

冷めた声。

「母様の具合は?」
『あまり良くないわ。兄様と暴力団の件が、尾を引いてるの』

いつもより硬い声と責めるような声音に、拓篤はどうしたのかと思う。

「……あれは」
『いいえ。火のない処に煙は立たない』

ピシャリと遮られた。

『母様は自分を責めてる。今日、初めてそう言ったのよ。きっと……ずっと思ってたのね』

あぁ……。
拓篤は胸を押さえる。

思えば、俺だけが被害を受けたように書かれていた。
息子を放り出し、実家に逃げた勝手な母親。
週刊誌にそういう風に書かれ、世の中の母親たちの誹謗中傷がネットに載っていた。

親として恥を知れと……。
平成の世に、いつまでお姫様気分なのだと。

「母様が雑誌やネットを見たのか?」
『親切な親戚の方が、同情して……電話で』

……余計なことを。


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~ Comment ~

余計なこと…

kiri様。

余計なことですね。本当にじじいとばばあは血が濃いほどめんどくせぇ。
拓篤の気持ち…ほんとによくわかります。

人の不幸は蜜の味…何て言いますからね。

人間は心が荒むと顔つきや体型まで荒んでしまうと言われたことがあって…ゲタゲタ笑って過ごせる毎日を目指している潤です。

不細工な拓篤をうー様…見せてくれないかなぁ?なんて思ってたら!そうだ!そうだ!沼田も一時期、信ちゃんにヤられて…。そうだ!そうだ!その前に隼も秋也と喧嘩して黒かった…あっ!信ちゃんもエロい事を時から秋也に仕掛けてあおたん…ふふっ。あおたん率高いっすね。

もう一回…沼田くんのチュー事件の下り読もう…な潤でした。



Re: 余計なこと…

潤様

ホント、余計なことですよねぇ…。
でも、絶対に居るんですよ…こういうお節介さん(笑

母様は、多分ずっと拓篤のこと気にしてたと思うんで。
そりゃ、いくらお嬢様だと言ったって母ですからね…。
多治見の名を棄てる気がない息子の気持ちも分かってるだろうし。
最後に着物や宝石売って、お金を渡すしか出来なかった自分の不甲斐なさを突かれた形…。

ブサイクな拓篤(笑)本人、全然気にしてないようですけどw
え…また過去作(/ω\)

うん、うちは青たん率…高いなぁ…^^; 

有難う御座いました☆

すれちがいーの

出発前に堂本に会いたい拓篤
だが次から次へと事件が起こり、堂本は仕事に追われる日々
すれ違いまくりーの。((└(:3」┌)┘))キャー

この際、母様には自力で強くなっていただくとして←ww
拓篤は自分の未来に向かっていくしかないのだ!(背景・荒磯に波でざっぱーん)
大丈夫、堂本は待つよ!飛んでった拓篤をじっと待ってるよ!
…と、舞い降りた天使ぽく囁いてあげたい(天使願望無いけど

はぁ…、うっとりため息が。
二人の分岐点なんですね。
『とある』の着替えを持ってくシーンはまだ先なんですね。
魔王様ほったらかしでとあるを読んでました~/(^^)\アッー!


>潤 様
惜しかった!
つーか正解なんてないんだけど(笑
お付き合いthanx♪ 3人いるとつい妄想しちゃって…(・・。)ゞ テヘ
ところで、潤さんもこういうご苦労を?
http://www.moae.jp/comic/pentanokoto/367/1

>はるかぜ様
うわ、正解まであともうちょい!(どこがww
ランディ君の、やっぱ字幕ナシですかー。まぁそうよねえ。
ゲイルの『Kiss Me, Kill Me』、アレもきっと字幕ナシでしょうね~。
ピンヒール軍団のタッチミー、そういうタッチミーか…(//▽//)

>ますみ様 &皆様
ω←コレのまとめがあった~♪ モフってくださいww
http://matome.naver.jp/odai/2139037564766048301


~本日の『流涎の館』会報

●『約翰』と書いて『ヨハネ』と読むんだそうです(音注意)
http://nubladus.tumblr.com/post/108298439571
↑右側のプレイリストにも聞きやすい曲が揃ってます。

●いぇーい、君を好きでよかった~♪
http://shawnchris4.tumblr.com/post/112973220585
…この歌が浮かぶんだもん。

●彼氏にプレゼント>http://urx.nu/ilO1
毎年、毎月、毎日、毎時、忙しくさせるっていうw

昨日の意味不明、水圧で遊んでたんだと、今日やっと気づきました。
そうか、水圧か……

絵師さんの作品、楽しみにしております!
では、明日~┏○))ペコ

Re: すれちがいーの

トーヤ様

堂本、忙しいねぇ…。
拓篤はお家で、外出禁止令でちょこん。。。
喧嘩したこと、あまり懲りてない感が(笑

大人になるのだよ…拓篤。ここで一気に!

そうそう、母がお嬢様なのはもうどうしようもないので…。
今更急に、強く逞しくならなくても。拓篤がちゃんと仕事して立派に自立すれば!!
それが母様への一番なこと。

>二人の分岐点なんですね。←そうです。
堂本は、最初から覚悟しておりましたので…。

あの着替え持って来るシーンですね?あれは、堂本が自分の署に戻ってからです…。
もうちょい!今のこの展開が落ち着いた頃に…。

>ω←コレのまとめがあった~♪←笑
ほんと絵文字の通り。何か可愛いね…。猫によって違うんだろうな…多分?
実家帰った時、見てみよう←

彼氏にプレゼントww年代別なのか!!50から、年ごとになってる(爆)いくら何でも‥w

有難う御座いました☆

全くもー。

かまわないで! そっとしておいて! ってお母様も小夜子ちゃんも、堂本さんまで思ってるのに。

でも、居るんですよね。本当に同情や親切・・、ならしかたないけど、おためごかし、親切ごかしにわざわざ言いに来る方々が。

せっかく小夜子ちゃんの気持ちがちょっぴり雪解けしたようだったのに。。
お母様までまた傷ついてしまったものだから、拓篤お兄さまに八つ当たり(?)。
そして誤解も解けないまま離ればなれ。


これも切ないけど、堂本ったんに会えないのがもっと堪えるんじゃないでしょうか?
けど、拓篤は仕事してる恋人・堂本が好きなんだから・・・。
誰も素性を知らない土地で一から頑張るためにも、後朝の別れ(一晩一緒で、夜明けのコーヒー)、もしくはハグの思い出づくりぐらいはしたいよね~~~。

間にあうといいナ。

Re: 全くもー。

ますみ様

拓篤は喧嘩して、少しは膿を吐き出せたかもしれないけど。
小夜子ちゃんは、何処にも吐けません。
女の子だし、お兄ちゃんみたいに殴り合ってなんて出来ないしね←

そんな時に、母様が自分を責めていることを知った。
……そりゃ、もうねぇ。憤りを何処に向けたら?
お兄ちゃんも、年上なんだけど2歳しか違わないからね。
堂本みたいに、ドンと来い!ってとこまで、まだ行けてない。

>拓篤は仕事してる恋人・堂本が好きなんだから←ココ重要です。
刑事として出合って、その後スキになったからとても大きい。
仕事放り出して来たら、嬉しいかもしれないけど…幻滅する部分もあるかな…。
堂本の中では、まずありえないことですが(-.-)

有難う御座いました☆
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