表紙の帯をはずせば、平安貴族の旅装束から女性の口元が覗く。
この写真は葵祭、祇園祭とともに知られる京都三大祭りのひとつ「時代祭」のシーンである。時代祭とは京都御所から出発し、山国隊の奏する笛、太鼓の音色を先頭に約2,000名・約2キロにわたる行列なし平安神宮を目指す伝統行事だ。常盤御前、巴御前、出雲の阿国など麗しい姿もあり、京都の歴史をしのばせる。
本書は、京都の魅力を外国人ならではの斬新な目線で紹介する日本語英語併記のバイリンガルブックだ。奥深い京都を訪れる外国人や観光客に向けて、伝統的な祭りや年中行事、食文化が英語/日本語で紹介されている。
Discover Kyoto編集部が立ち上げたFacebookページ、「Kyoto Fan」のページは320万いいね!まで押された。(ちなみに2015年11月時点では380万人)Facebook上での都市のファンページは2位のパリ、3位のドバイを抜いて京都は堂々の1位を獲得している。
書店に多く見られる日本文化紹介本と一線を画すのは、京都在住の外国人から見た視点だ。紅葉を含めた京都の美しい四季、神社/寺の歴史と物語を情熱的に伝えようとする文章、京都のスイーツなど文章と写真からは、何よりも京都に惚れ込んでいる熱意が伝わってくる。もしかすると日本に住み慣れ親しんでいる人よりも純粋に、真摯な姿勢で京都文化を視ているのかもしれない。
パラパラめくると源義経が天狗から武芸を学んだ伝説もある鞍馬寺、京都を守護する四神のうち青龍を祀る行事、清水寺の青龍会などが紹介される。もちろん解説はネイティブの英文が掲載されている。日本語から英文に変換する文章と違い、魅力がダイレクトに伝わってくる表現だ。仕事で英語を使用している人や、これから英語を学ぶ人にとっては文化の差異を理解するにも最適なテキストになりそう。もちろん外国人にプレゼントすれば喜ばれるだろう。
掲載されている写真はどれも上手くて魅力的だ。ページを開くと実に京都の世界はカラフル。芸妓や舞子の白い肌と黒髪の対比、牡丹や菖蒲などの着物の文様、伏見稲荷大社の千本鳥居の赤…色とりどりの写真は眺めているだけでも充分に楽しい。驚くのは本書が全編フルカラーということ。
さらに読んでいくと、京都市伏見区の藤森神社では、勇壮な馬の曲乗りを披露する伝統の「駈馬神事(かけうましんじ)」を見つけた。この行事は乗り子が高速で馬を走らせ、そのまま落馬と見せかけ体を反らせたまま疾走する「藤下り」や、疾走する馬上で文字を書く「一字書き」などの妙技を披露する。技が決まるたびに観客席はどよめき、歓声と拍手が送られるらしいが、こんな命がけのパフォーマンス行事を知ったなら、これだけで京都に行く予定を立てたくなる。
本書はソフトカバー単行本サイズなので、電車や車で移動する際も手軽に読める。巻末には抑えておくべき神社やショップ、モンブラン~かき氷まで堪能できる食事処のガイドマップも付いている。驚くべきはこの内容とフルカラーで1,000円。こんなコストパフォーマンスの高い本は久しぶりだ。これから京都にまた訪れようかという人、旅行好きの人には強くオススメの一冊だ。
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