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高齢者:「荷物預かり仕事」…実は詐欺加担の「受け子」に

毎日新聞 2015年11月07日 15時00分(最終更新 11月07日 16時07分)

高齢者が「現金受け取り役」にさせられる詐欺事件の構図
高齢者が「現金受け取り役」にさせられる詐欺事件の構図

 ◇新手口 偽「シルバー人材センター関係者」に誘われて

 シルバー人材センター関係者をかたる人物から「荷物を預かる仕事を紹介する」などと誘われた高齢者が、気づかないうちに現金受け取り役の「受け子」として詐欺に加担させられるケースがあることが、警察庁などへの取材で分かった。うその電話をかけて被害者をだまし、高齢者宅に送らせた現金入りの荷物をバイク便などを装って回収する手口。9月だけで首都圏で少なくとも3件が確認された。捜査関係者は「従来の手法に対する取り締まりが強化され、新たな手口が出てきた」と警戒している。【黒川晋史、宮崎隆、長谷川豊】

 捜査関係者によると、首都圏に住む80代の女性は9月上旬、シルバー人材センターの職員を名乗る人物から「荷物が届くので受け取ってもらいたい。バイク便で取りに行く」と電話で「仕事」を持ちかけられた。女性はセンターに登録しておらず、不審に思ったが、その日のうちに東北地方の送り主から日本郵便の宅配サービス「ゆうパック」の荷物が二つ自宅へ届いた。しばらくすると、バイク便を名乗る若い男が自宅を訪ねてきて荷物を引き取っていった。

 警察が捜査したところ、送り主は「オレオレ詐欺」など特殊詐欺の被害者で、荷物の中には現金が入っていた。女性は事情聴取に対し「中身は見ておらず、現金とは知らなかった」と話したという。

 これまで確認された3件では、いずれも同様の手口で高齢者が現金の受け取り役にさせられていた。荷物の品目欄には「タオルセット」「食べ物」などと書かれ、中身が現金だと分からないようになっていた。「仕事」の報酬を払うと持ち掛けたケースもあった。

 警察庁によると、全国の警察が把握している2014年の特殊詐欺の被害額は約565億円に上る。うち約216億円分は詐取金を宅配便やレターパックで送らせる「現金送付型」だった。

 従来は、私設私書箱や空き家が送付先となることが多く、警察は取り締まりを強化していた。同庁幹部は「何も知らない高齢者を巻き込むことで捜査を困難にする新たな手口」とし、都道府県警に警戒を呼びかけている。

 社団法人・全国シルバー人材センター事業協会の担当者は「警察庁からの情報提供で同様のケースを把握しており、会員に注意を呼びかけている。仕事を紹介する時は契約の中身をきちんと説明する。単に『荷物を受け取って』と依頼することはあり得ない。そもそも会員でない人にいきなり仕事を紹介することはない」と話している。

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