「ドラマなんて所詮作り物」「いい大人がドラマを見るなんて時間の無駄遣い」と思っている中高年の男性ビジネスマンを巻き込んで大ヒットになっているのが、NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」だ。
6月末で北三陸を舞台にする「故郷編」が終わり「東京編」になることで人気失速が心配されたが、ふたを開ければ平均視聴率は20%を超え、むしろ伸びているほど。再放送や録画視聴を合わせると30%を超えるのではという噂まで出ている。なぜここまでの人気をつかんだのかを、56歳の私がおじさんの視点から解説しよう。
テレビドラマのヒットの3要素は1に配役、2に脚本、3に演出といわれる。「あまちゃん」でいえば、能年玲奈の新鮮な魅力に、それを支える小泉今日子や松田龍平などの豪華な脇役陣。脚本は東京育ちで引っ込み思案の女の子が母に連れられて田舎に行くと、これまでにない生活に触れて新しい自分を見つけて…という成長物語。それを笑わせ泣かせ元気づけてくれる演出。この3つで人々の心をつかんだといえる。
だが、3要素がどんなに優れていてもおじさんがドラマを見ることはまずない。おじさんは経験を積み、知識を増やし、フィクションのハードルをべらぼうに高くしているからだ。では、そんなおじさんがなぜ「あまちゃん」を見てしまうのか。
(1) おじさんは根っから80年代が好きだ
「あまちゃん」の舞台設定は2008年からだが、中身は1980年代を思い出させるものがたくさんある。80年代は日本が元気で希望に満ちていた時代、おじさんも元気だった。出演者には当時のアイドル、小泉今日子や薬師丸ひろ子らが出演し、松田聖子から杏里、YMO、ヴァン・ヘイレンなどのヒット曲が使われる。当時の風俗を写した写真も映像も実物が出てくる。若き日を思い出させるものがたくさん詰まっているのだ。
(2) おじさんはなぜか業界モノに憧れている
80年代には「業界モノ」が大流行した。講談社の雑誌「ホットドッグ・プレス」の「業界くん物語」が人気連載になり、渡辺和博の「金魂巻」のような書籍がヒットした。フジテレビの月9枠は「業界ドラマシリーズ」で始まり、「アナウンサーぷっつん物語」「ギョーカイ君が行く!」などが話題になった。「あまちゃん」はタレントの発掘、育成の物語でもある。おじさんは舞台の裏側や業界の仕組みを知ることがうれしい。趣味をビジネスの仕組みで語ることが偉かったからだ。
(3) おじさんは大きな声で言えないけれどアイドル産業を育てたんだ
現在に至るアイドルブームを作ったのは実はおじさんたちだ。自由民主党幹事長石破茂(56)はキャンディーズファンで、皇太子殿下(53)は柏原よしえのファンだった。おじさんは麻丘めぐみ、石野真子、松田聖子をスターにし、おニャン子クラブを世に送り出した。AKB48は顔と名前が一致しないけど、今の若い者には負けないアイドル好きだったのだ。
連続テレビ小説、あまちゃん、能年玲奈、薬師丸ひろ子、松田龍平、小泉今日子、宮藤官九郎、古田新太、木野花、吹越満
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