主治医に恋をしてしまったら!実際にあったケースから検証を始めます

「先生と生徒の恋」はよく聞きますが、「主治医と患者の恋」もそれに次ぐくらいよく聞きますよね。実際のお悩みを例に考えてみました。

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お悩み拝見!

「私と主治医は、お互いにどこか惹かれ合うものがあるのです。
今のところ単なるおふざけであり、そのことについて2人とも何かアクションを起こしてはいません」

「2人とも既婚者ですが、私は夫と時々上手くいかない時もあります。先週、子供の学校の参観で彼とばったり出くわしました。参観が終わった後少し飲みました。彼は私を車で家に送ると言って聞きませんでした」

「私が車から降りようとした瞬間…彼にキスされました。その時から胸騒ぎが止まらず、他のことが考えられません。
私に電話してくれるよう病院に伝言を残しましたが、まだ返事はありません。私は夫ではなく彼を愛していることに気づいてしまいました。彼も同じ気持ちでしょうか?知りたいです」

…。まあよくある恋愛相談ではありますよね。ちなみにこれは新聞の人生相談に寄せられた相談なんですが、結局、この相談へのコメントは0件だった模様。でも、実際よく聞く話ではありますよね、主治医への恋愛感情。

医師⇨患者は問題多し

実際、主治医と患者の恋愛というのは、公にしてもよいものでしょうか?

「恋愛」という性格上、明確な判断基準があるわけではないですが、どこの病院でも患者のプライバシー尊重にもとづく個人情報保護には、細心の注意が払われています。圧倒的に情報を握られている患者側が 不利な立場にあるからです。

憲法13条「個人の尊重と公共の福祉」に規定されているほか、違反した場合は刑法で罰せられることもあります。
つまり、医者が、業務上知り得た情報を利用して、一方的に患者に告白したり関係を迫ったりするのはアウトであると言えます。

倫理的に不適切だというだけでなく、場合によっては解雇などの処罰が下される場合もあるでしょう。
というわけで、冒頭の相談者が意中の医師から電話を貰えなかったのは、非常にわかりやすい理由によるものです。


…じゃあ、両想いなら?

もちろん、医師が患者への好意を伝えた上で、患者の個人情報を利用して連絡を取るのであれば、通常のお付き合いと同じことですので、これは当然セーフです。

実際に付き合って結婚した人もいっぱいいますからね(どちらから告白したかは定かではありませんが)
それから、患者から医師へアプローチする場合も、通常の恋の告白と同じことですので、受け入れられるかどうかは別として…法的にはなんら問題はありません。

実際、どう思っている医師が多いの?

医師2887人に聞いた「患者と恋に落ちるのってアリ?」という非常に興味深いデータがあります。

それによりますと、上記のような医師⇨患者は問題多しという意見を裏付けるように、実に65.1%の医師が、患者と恋仲になるのは避けるべきであると回答しています。

恋愛,主治医,患者,境界性パーソナリティ障害,陽性転移中には、禁忌に近い(40歳代男性/精神科)プロ失格(50歳代男性/精神科)といった厳しい意見が目立ちます。
しかしその反面、出会いは突然だから(30歳代男性/耳鼻咽喉科)といった、出たとこ勝負な肯定意見もあり、なんだか心が和みます。

患者が医師に恋するのは、病気ではないです

カウンセリング・心理療法の過程で、患者が、医師などの治療者に、信頼・尊敬・感謝・情愛・親密感などの感情を向けることを”陽性転移”と言います(逆に、敵意・不信感・攻撃性などを向けることは”陰性転移”と言います)

人なら誰でも、自分が辛いときに優しくしてもらったり、親身になってくれた相手に好意を抱くのは自然なことなので、このこと自体は病的なことでは決してありません。
これは医師に対する依存心として現れる場合もありますが、これも”早く治りたい”という快方への強い思いの現れであり、健全なことなのです。


ただし、注意したほうが良い場合もあります

注意すべきは、”境界性パーソナリティ障害”という精神疾患を有する患者です。
境界性パーソナリティ障害の患者は、幼少時における親との分離不安が原因となって大人になっても親のように依存できる関係や人を求める傾向にあるとされています。
ゆえに、話を親身になって聞いてくれる医師に、特別な感情を抱きやすいわけです。

境界性パーソナリティ障害の患者は、対人関係が激しく、短期的なものになりやすい傾向にあるため、陽性転移がうまく受け入れられなかった場合。
医院をころころ変える「ドクターショッピング*」の傾向もあり、完治が大幅に遅れたりするなどの大きな問題を抱えることがあります。

完治するまでは、静観を

そもそも”陽性転移”とは、スイスの精神科医ユングの唱えたカウンセリングにおけるキーワードの一つです。

そして、彼の定義によると”逆転移”という現象があります。
何だと思われますか。そう、治療する側が、相談者に対して抱く感情のことです。

これには恋愛感情も含まれます。
したがって、「陽性転移・逆転移」と「恋心」に明確な違いはないのかもしれません…

しかし、だからと言って、こういった感情に囚われて、只でさえ辛い症状をより重くし、病院を心重くなる場所にしてしまっては元も子もありません。
いったん自分の気持ちは置いておいて、治療に専念し、快方に向かってから気持ちに向き合うのが ベストな選択と言えるでしょう。

(参照)

・I’m in love with my doctor-dailymail.co.uk
・Is your doctor in love with you?-indiatimes.com
・精神科医に恋をした場合の後悔しない対処法

・患者が主治医を好きになる「恋愛転移」は、境界性人格障害の治療でも注意が必要

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